穴の空いたジャケット
こんにちは。
MANHOLEの河上です。
楽しみにしていたジャケットが届きました。
全員が全員良いと思うものでは絶対に無いですが、僕にとってはまるで自分の為に誂えたんじゃないか、と思うほど気の利いたジャケットのように思えるのです。
背を抜いているとは言え、じっくり見なくても要所で手仕事がしっかりと入る雰囲気のあるジャケット。
生地はキッドモヘア/ウールのマットウース。
清涼感のある表情と、シャリシャリとしたドライな質感が涼しげです。
50’sのフレンチの礼服がベース。
その為パッと見は礼服のそれ。
かといってガチガチにお堅い雰囲気も無いのは生地のせいかなあ、なんて袖を通して見ると変な違和感を覚えると思います。
違和感の正体はこれです。
エレガントさとは程遠い仕様。
軍モノのライナーのようにベンチレーションが付いてます。
吊るしのジャケットの中でも非常に手が込んだ作りをしているから耐えられる、破壊的ディテール。
さっきからチラチラと映り込む謎の糸は、苧(からむし)の繊維。
糸にする前の状態。
からむし織りはデザイナーさんの故郷である福島県:奥会津の伝統的工芸品の一つ。
「夏場でも暑さに負けずにジャケットが着たい、暑いからこそ涼しげな顔で洋服を着たい。」
というのは、極端に暑がりで汗っかきの僕の密かな願望であり、長く抱える課題でもあります。
機能素材などを用いたスポーティすぎるものを着るのは工夫がない。
イージージャケットのようなインスタントで1シーズン着て飽きるものを買うのももう疲れちゃいました。
冒頭に”まるで自分の為に誂えたような”と書きましたが、僕の頭の中からは「礼服の脇をくり抜く」なんてアイデアは出てきません。
そんな破壊的なアイデアを思いついて、実際にちゃんと物として「かっこいいなあ。」と思えるところまで形に出来る事が素直にすごいなあ、と感じます。
SADEの今期のテーマは「酔月窯」。
酔月窯とは、会津本郷焼の窯元の一つ。
デザイナーが幼い頃から何気なく使用してきた陶器。
近隣の飲食店などでも当たり前のように使われている、頑丈で質素な佇まいの実用性の高い物。
商業性が無く、あくまで身の回りの生活の為にその地に根付いた物。
その酔月窯の姿勢を元に洋服に落とし込んだそうです。
全員が全員良いと思える物ではおそらく無いけれど、僕のように何かが引っかかる方にはたまらない洋服だと思います。
オーダー分がようやく揃ったので明日以降も引き続きSADEを紹介していきます。
河上 尚哉