マチガエル
MANHOLE 2020AW Preview – なにもしらない –
” cantate ” – COWE TRACK PANTS –
鮮烈的コート
こんにちは。
MANHOLEの河上です。
昨日寝る前に自分が書いたBlogを読み返してみたら、なんかもやもやとした不穏な雰囲気を感じる。
しばらく考えて気付く。
「あ、Tommy NutterがTOMY NUTTERになってる…しかも全部。」
許せる間違い方、正しい間違い方、笑える間違い方。
間違い方にも色々あるけど、これは完全に間違ってる(嘲笑える)間違い方。
僕が色々と足りないせい。
たかがBlogだけど、楽しみにしてくれている人もいるし、何故だか信じてくれてる若い子さえいる。
だからこそ、僕らはもっと正しく伝えていかなくてはならない。
そう、間違い方にも色々とある。
許せる間違い方、正しい間違い方、笑える間違い方、嘲笑える間違い方。
大抵のことは時間が経てば笑えるし、一度笑えたらなんとなく許せる。
ただ、たまに嘲笑えないし笑えない、むしろ「これが正しいんじゃないか。」なんて感じさせてくれる物もある。
今日紹介するジャケットはまさしくそんな洋服。
自分の感覚には存在しないバランス、違和感、ズレ。
それら全てをそのまま受け入れることが出来て、その上で魅力を感じられる物。
自分でお店を始めることで、「数字を残さないと、在庫を消化しないと誰かに迷惑がかかる。」なんてプレッシャーから少しだけ解放された僕。
もちろん今でも数字を残さないと中台に迷惑がかかるんだけど、それは完全に自分の責任の範疇で収まる。むしろしくじったら僕の方がやばいけど、それはいい。多分中台も気にしないはず。
誰かのせいにしあえる環境から強制的に離れる事。
それは頭の悪い僕にとって、とても単純明快で清々しかった。
お店を開けて半年の時点で、ある程度ちゃんと回ってる事に安心した僕は、会社員時代の頃は中々オーダーがしづらかった「CLASSのテーラード」を常にお店に置いておきたい、と思うようになった。
「かっこいいのあるといいな〜。」なんて意気揚々とCLASSの展示会に向かう僕。
ざっと見渡したところ、2020AWシーズンはテーラードジャケットをラインナップしていない事に気付いた。
そういう部分でも僕のペラペラした期待を簡単に裏切ってくれるブランド:CLASS。
やはり一筋縄ではいかない。癖になる。これもタイミングなのか。
「あの〜、テーラード作ってくれませんか?」
“タイミング”なんて理由で諦めきれなかった僕は、その場で素直にお願いする事にした。
「何度か着てるのをお見かけした、ラペルが太いベージュのジャケット。生地は事務所に眠っているもので相性が良いのがあればそれで良いです。」
タイミングよく、この形はちょうど作りたい気分だったそうなのでお願いすることが出来た。
多分工場に頭を下げてもらう事になるくらい少ない数だと思うけど、10着だけ。
申し訳ない気持ちになったけど、僕らの力はまだその程度のもの。
今は甘えるしかない。
2019AWシーズンにラインナップされていたジャケット:SOCKS。
正直言って、去年は全く目に入らなかった。
「このジャケットって、いつのシーズンのものなんですかね。」なんてとんちんかんな質問をしてしまったくらい記憶に残っていない。
なんでだろう、今はこんなに良いと思えるのに。
フロントダーツ、胸ポケット、袖ボタンと全て排除したミニマムな毛芯仕立てのシングルジャケット。
70年代のワイドラペルの雰囲気を残しながらゴージ位置を上げ、常識ではありえない変形のフィッシュマウスラペルが特徴。
素材には、尾州にてションヘル織機で織りあげた特殊加工を施したライトトップフラノを使用しています。
ポケットの位置も変、フラップの大きさも変わってる。
様々なディテールのほとんどが大胆にズレてる。
フラップをしまうと縦長に見える、フラップを出すと横に広く見える。不思議。
ただ、全体の印象はキレイに収まっている。
「〜がこうだから、こうなる。」なんてセオリーでは説明がつかない、感覚的なジャケット。
かっこいい。
ここ一年くらい、お店用に自分が企画したテーラードを作りたくて踠いてました。
一から自分で企画したテーラードジャケット。
僕がお店を開けてからジャケット、ジャケットって言っていたのはそのせい。
僕がジャケット、ジャケットって言っていたせいか、中台も半年前から「俺もジャケットとか着たいんだよな〜。」なんて呟くようになりました。
そういえば昨日バイトの悠人くんからも深夜に「河上さん、あのクラスのジャケットって買えるんですか・・・?」なんて連絡が来ました。
うん、確かにめちゃくちゃかっこいい。
欲しくなるよね。
それはさておき、いざテーラードを作ろうと思って色々考えてみても全く思いつかない。
理由は明確でした。
「自分が作りたいジャケットの、なんとなくのイメージすら出来ていないから。」
ここは絶対に譲れない。というポイントが見つけられてない。
出来ればこう、出来ればこう。なんていう事すら伝えることが出来ない。
「自分は自分の既に好きなものしか着てこなかったんだなあ。」なんて、今更ながら気付いてしまいました。
僕たちはもっとたくさんの洋服を着て、もっとたくさんの経験をして、もっとたくさんの人に出会う必要がある。
幸い、世の中にはたくさん物が溢れている。
協力してくれる人もたくさんいる。
今は積極的に外に出ることが出来ないけど、それもその内改善に向かうはず。
自分の中の漠然とした不安に負けている場合でも、外的要因に挫けている場合でもない。
僕らはまだまだこれからなのです。
このジャケットは、「ズレてることはそんなに怖いことじゃない。」
そんな事を伝えてくれる洋服のような気がしてます。
ズレているからこそ、かっこいい。
違和感を覚えるからこそ、面白い。
自分の感覚を信じるからこそ、形に出来る洋服。
何が間違っていて、何が正しいのかわからない今を生きているからこそ。
僕らは今日も間違え続けて笑うことが出来るのではないでしょうか。
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