「売れればいいってものじゃない」
MANHOLEのような規模感の小さい個人商店の短所でもあり、長所でもある部分は「商品数が少ない」ことだ。
先日先輩が働いている業界大手のお店に行って「〜を探しているんです。」と伝えたところ、同じカテゴリの仕様違いの洋服を数種類目の前に瞬時に並べ、それぞれの差を丁寧に説明してくれた。
おそらく僕の趣味嗜好を考慮して数種類に絞って並べてくれたはずだ。サイズも豊富に揃っている。セクションの枠などを外せばもっと用意することが出来たに違いない。
顔には出さなかったけど感動した。
仮に僕が大手企業に戻れる道があるのであれば、この人のような販売員を目指したいし、この人と一緒に働きたい。と感じたのと同時に、自分のお店との大きな差に気付く。
タイミングにもよるけど、MANHOLEでは大体の場合「〜が欲しいんです。」という声に応じて瞬時に数種類同じカテゴリの新品の洋服を目の前に並べて紹介することは、はっきり言って難しい。
それを補ってくれるのがMANHOLEに並ぶ古着の役割の一つでもある。
が、これもタイミング次第だ。
ある時もあるし、無い時もある。もちろんサイズは一つしか無い場合が多い。
かと言って僕らがお客さんのタイミングに合わせてタイミング良く古着を用意することはきっと無い。
「親切なお店」と「不親切なお店」
「便利なお店」と「不便なお店」
来るお客さん次第、対応する販売員次第、お店とお客さんのタイミング次第でその評価は分かれる。
が、MANHOLEは「〜が欲しい。」と曖昧かつ明確な目的を持って訪れるお客さんにとっては間違いなく、圧倒的に不親切で不便なお店である。
「圧倒的に不親切で不便なお店のMANHOLE」ではあるが、その代わりに一つの商品に対して時間と手間を惜しみなくかけることが出来る。
「シーズン性/マークダウン」という業界の致命的で効率的な間仕切りも、このお店には存在しない。
もちろん一つの商品に対して時間と手間をかければ売れる、なんてことは全然思っていない。
時間と手間をだらだらかければいいとも、思っていない。
僕らは一つの洋服に対して時間と手間をかけて、一つの洋服を自分たちの出来る限り楽しみたいのだ。
楽しんで買い付けた、楽しんでオーダーした、楽しんで企画した、楽しんで並べることが出来た洋服は、自分たちのお店の中で絶対に埋もれることがない。
仮に一時的に埋もれたとしても、いずれどこかのタイミングで再び日の目を見る瞬間がある。
楽しんでいる過程で見えることはとても多い。
それを僕たちは誰かに、伝えたい。
今回、CLASSに復刻してもらったBrooklynは、その最たるものの一つである。
楽しみながら過ごしたNYの旅で「復刻を依頼するとしたら、ここなのかもしれない。」と、自分の中のタイミングを見つけた。
企画を進め、色に悩み、製品が上がるのを待つ時間、どう紹介しようかと考える時間。
製品が届いて、誰に着せて/どこで/どのようにと考える時間、撮影をしている時間、写真が上がって来るのを待つ時間。
送られて来た画像データを見た瞬間、データを使ってレイアウトを考える時間、Instagramに投稿する瞬間、こうしてBlogを書いている最中も。
僕らはCLASS:Brooklynを楽しむことが出来ている。
そんな洋服が、かっこ悪いわけがない。
さて、そんな「売る側も楽しませてくれる洋服」であるCLASS:Brooklyn。
洋服が楽しいのは、「洋服を売るまでの時間」ではなく「欲しい洋服を買った瞬間」でもなく「買った洋服を着た後に過ごす時間」であるのは言うまでもない。
中台のような飽き性の人間でも、僕のような惰性で買い物をする人間でもこの洋服に対して「着て楽しい、気分が良い」と感じる瞬間は多いはずだ。
人の心の中に「気分」がある以上、ずっと着ることが出来る洋服なんて無い。
ずっと着ることが出来る洋服は無いけれど、ながく持ち続けることの出来る洋服はある。
ながく持ち続けるだけでは意味がない、たまに無性に着たくなる。
このウルトラスエードのスノーパーカが、誰かにとってそんな洋服の一つになることを願う。
CLASS:Brooklynは「かっこいいから買った。」という、洋服を買う上で一番純粋な地点をスタートに、あとはどうにでもなるピュアな洋服である。
お店を開いて一年とちょっとが過ぎた。
お店の数字に惑わされそうになるタイミングもある。
「売れればいいってものじゃない。」
このピュアな洋服は、僕たちの気持ちも一番最初の地点にまで戻してくれる。
※CLASS:Brooklynは11月13日(金)から販売致します。
発売日の週末にご来店下さるお客様から優先的にご案内致します。
オンラインストアへの掲載は週明けの11月16日(月)に在庫が残っている場合行います。
何卒ご了承ください。
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河上 尚哉
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