我慢のニット
こんにちは。
MANHOLEの河上です。
先日紹介したSACK同様「袋から出すと欲しくなりそうなので、僕たちはまだ袋に入った状態で眺め、心の平静を保っています。」なんてふざけた理由から、商品なのか商品ではないのかわからない状態で出来るだけ目立たない場所に並べていたCLASSのPASSAGE。
ようやく「袋から出すと欲しくなりそうだから、欲しくなったらすぐに買ってすぐに着られる」くらいの気温になってきた。
きっと僕は電車の中で汗だくになるだろうけど。それは僕の体質だからしょうがない。
ちなみに僕も中台もお客さんに試着してもらうというタイミング以外は、なるべくこのニットを見ないようにしている。
理由はもちろん「着ると欲しくなって、きっと買ってしまうから」だ。
お客さんが試着したあと、僕が釦を留め直している最中に中台と目があう。
「・・・いいよねえ。」なんて事をお互い思いながら無言で頷きあい、僕はそっと元にあった場所にこのニットを戻すのだ。
ウェールズのCORGI社製。
オーソドックスなCネックカーディガンの着丈を長くし、変化を加えたハンドインターシャニット。
素材は4本のモヘアと2本のジーロンラムを撚って編立た8PLYの重量感のある糸を使用。
どこかおじいちゃんを思い出すような色。
どこかおばあちゃんを思い出すような着丈。
どこかおじいちゃんを思い出すような質感。
どこかおばあちゃんを思い出すような貝釦。
全てが良い。ちゃんと褒めてる、つもり。
寒くなってきたらこのニットを着ている自分がいくらでも想像出来る。
汗をかくのが嫌いな僕が、真冬の電車や屋内で汗だくになりながらもこのニットを着ている自分がいくらでも想像出来る。
色々と工夫をしながらこのニットを着ている自分がいくらでも想像出来る。
最終的に工夫するのをやめて適当にこのニットを着ている自分がいくらでも想像出来る。
欲しいものは欲しい。とっても欲しい。
「俺は諦めるから、お前買っていいよ。」とどちらかが言えばどちらかが2秒で買うだろう。
ちなみにアルバイトの悠人は我慢できずに同じ型の色違いを既に買っている。
僕と中台が自分たちのお店の商品でカッコつけてお客さんから羨ましがられてもしょうがない。
アルバイトの悠人は同世代の若者たちから羨ましがられる必要があるから何を買っても良いと思う。
僕たちは「物」を通してお客さんに何かを伝えたい。
いや、物じゃなくてもなんでもいいんだけど、とにかくこういうお店をやる以上は物を通すのが一番伝わりやすい気がしている。
その物自体を、お客さんに紹介する機会自体を自分たちの手で自分たちから奪い取るのは少し違う気もしているから、二人とも我慢している。
二人とも我慢している分、外に出て何かを得ようとしている。
幸い、欲しいものは自分の精神状況次第でいくらでも見つけることが出来る。
と、そんな風に自分たちの気持ちを納得させていても欲しいものは欲しい。とっても欲しい。
いっそのこと早く誰かが買って目の前から無くなってくれればいい。
目の前から無くなった状態であれば僕らがこのニットを忘れられるのかどうかは、定かではない。
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河上 尚哉
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