「よむたびに、きるたびに」
「よむたびに、きるたびに」
本を読むこと、服を着ることは他人の感覚を共有し、習慣を変えることでもある。
別の言葉づかいに引っ越し、失敗を含んだ着こなしを肯定すること。
色々な本と服の間を漂うことで、言語的に、イメージ的に、取りつかれている「自分」の重みを、少しばかり忘れられればいい。
散歩 / 場所 / 規則 / 過去 / 疑問の5つのキーワードで背景がつながる本を選びました。
1 , アウステルリッツ新装版 – W.G.ゼーバルト – 白水社
2 , ウォークス 歩くことの精神史 – レベッカ・ソルニット – 左右社
3 , この道、一方通行(始まりの本) – ヴァルター・ベンヤミン – みすず書房
4 , 自分ひとりの部屋 – ヴァージニア・ウルフ – 平凡社
5 , 日常的実践のポイエティーク – ミシェル・ド・セルトー – 筑摩書房
6 , 天才たちの日課(女性編)自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常 – メイソン・カリー – フィルムアート社
7 , 挟み撃ち デラックス解説版 – -後藤 明生 – つかだま書房
8 , 反解釈(ちくま学芸文庫) – スーザン・ソンタグ – 筑摩書房
9 , フライデーあるいは太平洋の冥界 – ミシェル・トゥルニエ – 河出書房新社
10 , フラジャイル 弱さからの出発(ちくま学芸文庫) – 松岡 正剛 – 筑摩書房
11 , 密室論 – 朝吹 亮二 – 七月堂
12 , ラインズ 線の文化史 – ティム・インゴルド – 左右社
こんにちは。
MANHOLEの河上です。
僕はぼーっとする時間が好きだ。
考え事をしているようで、実際は何も考えていない時間。
最終的にやらなければならないことを「最終的にやらなければならないし、どうせやらなければならないなら今すぐにやらないとなあ。」なんて考えながら、結局今すぐやらずに最終的にやらなければならないところまで持っていく時間も好きだ。
考えているふりをしても意味が無い、何かしら能動的に動かなければ一番最初に浮かんだ答えは結局最初の時点から大抵の場合は変わらない。
毎日指の隙間からホロホロと落ちていく時間、やらなければならなかったこと。
さて、そんなぼーっとする時間に何をするかというと、何もしてない。ぼーっとしている。
インターネットから得られる無責任な情報に身を委ねることが出来るほどのまっすぐさはとうの昔に失ってしまっているし、黙っていても自然と不自然に流れてくるようになった他人のストーリーに真剣に感動が出来るほどの感受性は生憎持ち合わせていない。
ぼーっしている時間にぼーっと目に、耳に、肌に入ってくる情報は心地よい。
大体が記憶には残らないけど、たまに高速道路から見える遠くの街灯のようにぼんやりと心に残る何かを得ることが出来る。
何かを決めなければならない時、何かを選ばなければならない時。
実際の決め手になるものは真剣に詰め込んだ/意識的に削り取られた情報よりも、ぼーっとしている時に得た薄明かりのような曖昧な/唐突さ故に鮮やかに脳裏に刻まれた情報の方が役に立つことの方が多い気がする。
さて、嬉しいことに悲しいことに一日の多くの時間をMANHOLEで過ごすことになった僕と中台。
さすがに営業中にスマートフォンで漫画を読むわけにもいかないし、ネットに流れる情報を流し見するのにも飽きてきた、中台との会話も特に無い。
「どうすればお客さんがお店に入ってきた時に怪訝な顔をされず、ちゃんと店番をしているように見えるのだろうか。」と、考えた結果、「本を読めばいい。」という正解なのか不正解なのかわからない、一つの答えに辿り着いた。
30代半ばに迫ってきた今、運よく「ぼーっと過ごすことの出来る時間」を手に入れた僕たちに必要なのはスマートフォンでもなくタブレット端末でもなく、小さい箒とクイックルワイパー、鏡を拭くための雑巾とメガネ拭き、コロコロと洋服ブラシと靴ブラシ、そして数冊の本なのでは無いだろうか。
さて、では「本を買おう。」と、動き出してみる。
でも書店まで行って膨大な数ある本の中から一つの本を選ぶのはしんどい。
(本を読むことで、その行為が楽しいものとして蘇ると嬉しい。)
このままではまた「考え事をしているようで実は何も考えていない時間」だけを過ごすことになってしまう。
と、いうわけで図書館の司書をしているお客さんに本を紹介してもらうことにした。
「MANHOLEで僕らが読めそうな本を教えてください。」という、無茶を投げかけてみる。
今思えば「なんでもいいじゃん。」と思うけど、そのお客さんは考えてきてくれた。
しかも楽しそうに。
冒頭に書き連ねたタイトルは「僕の感じたMANHOLEというお店、MANHOLEで過ごす時間を含めて考えてきました。」と言いながら、その方が選んでくれた12冊の本。
僕らが客観的にどういう風に見えてるのかわからないし知らないけど、こういう形で受け取ることが出来るのはなんだか照れ臭く、なんだか嬉しい。
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河上 尚哉
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