どうせやるなら。過去の本物に、いつの日か、なりたい。

今秋企画中のRENOMA:MULTI POCKET BLOUSON。
サンプルが上がってきた。
この企画に関してはいつか唐突にリリースするつもりだったんだけど、なんだかこのタイミングであらかじめ紹介する必要を最近、感じていた。
製品は10月頃発売予定。
CLASSデザイナー:堀切さん率いるジャパンライセンスのRENOMAでは過去3度リリースされてきた型。
情報が少なすぎて定かではないが、本国RENOMAでは定期的に作られていたようだ。
サンドベージュの印象が強いけど、レザーのモデルや袖が取れる仕様のモデルなども存在する。
アンディー・ウォーホルが北京を訪れた際の写真が象徴的。
だけどこのブルゾンは決して、当たり前のようにそれだけでは無いはずだ。


さて、近年3度リリースされたRENOMAのMULTI POKET BLOUSON。
僕は洋服屋さん以外で着ている人を、一人しか見たことが無い。
僕は「洋服屋さんしか着ていない洋服」にあまり良い印象を覚えない。拡がりが無い。
社販で完売する商品を仕入れることに一体なんの意味があるのだろうか。
これは散々そういうことをやってきた僕ら自身への戒めでもあるのだけれど、僕ら販売員は目の前のお客さんにご飯を食べさせてもらっている。
納品時に生まれる「欲しい。」という気持ちを「欲しい。」というお客さんを探す情熱に、僕らは変えたい。



と、いうわけでMANHOLEではお客さんに紹介するために作ってもらった。
「どうせ作るんだったら、(デザイナーさんが)やりたいことをやりましょう。」と、いうわけで当初の試算より予算はオーバーした。まあ値段はお客さんが決めるから別にいい。
その分、お互い納得いく内容に近付いたと思っている。
ジャパンライセンスといえど「RENOMA」というブランドネームを掲げて誰かに渡す以上、その歴史を未来に紡いでいく物を世に出す必要がある。
モーリス・レノマ達が築き上げたRENOMA。
各時代の人達が愛し、支えてきたRENOMA。
デザイナーはそういった過去を背負い、単なる生地替えやリプロで終わらない物作りをしているはずだ。
どうせやるなら、過去の本物を超えることの出来る今の地点を目指した方が面白いだろう。


かっこいい正解、知らない何かは常に過去にある。
僕らはまだまだその引き出しが少ない。知らないことは自分の想像以上に、多い。
それを出来る限り知っておく必要はある。ただ、知っているからと言って必ずしもそれにならう必要は無い。
過去の本物を追い求める作業は、時に楽しく、時に虚しい。
僕らは今作られているもの/今あるものを使って、誰かと一緒に今を楽しみたい。
どうせやるなら。過去の本物に、いつの日か、なりたい。

ブランドの過去を理解し、本物を見てきた、創業者本人から認められたデザイナーが「今」作るRENOMAのMULTI POCKET BLOUSON。
ただ単に「RENOMA」の名を冠するだけではなく、この洋服からは過去の本物を、今の感覚を、確かに感じることが出来るだろう。
こうして「RENOMAブランドとしてのMULTI POCKET BLOUSON」を実際に今作ることの出来る状況で。
似寄りの洋服をRENOMA以外で今、作る必要は本当にあるのだろうか。
洋服を作る上/仕入れる上/扱う上で、必要な要素である「ある何か」は、そこに本当に存在するのだろうか。
その答えは、僕らにはわからない。
何が本物で何が本物じゃないかは受け取る人が決めることだ。
だからこそ、どうせやるなら。
過去の本物を、圧倒的に、超えていて欲しい。
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河上 尚哉
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