着る人、選ぶ人
いつもだったら僕から改めて紹介することの無い流れですが、いつも通りもつまらないのでちゃんと紹介します。
TENDER Co.のBASTE POCKET JACKET。
TENDER Co.自体、あまり細かい情報を頭の中に入れずに仕入れることを決めたブランド。
「いいな。」と思えるタイミングでちょうど目の前にあったので、MANHOLEに並んでいます。
が、何回かコレクションを見ることで、自分の中で良さを説明出来るくらいにはなった気がする。
洋服の作り方、ビジネスの仕方も話を聞く限りスローなペース。
先シーズンはオーダーしたのを忘れたくらいのタイミングで入荷したので、今回の納品も遅いのかな〜と思っていたら意外と早く届きました。
このジャケットの特徴は生地/色/ポケットの形状。
” Cotton Chain Cord “という、今回のコレクションのために織られた生地。
生地を織る際、経糸が布の後ろから前に引っ張られることにより捻れた隆起を形成、生地の表面に垂直の紐状リブが出てきます。
” Baste Pocket Jacket “のポケットは、前見頃の生地を長くとり、折り返してポケットになるように作られています。
ビスポークのラフフィッティングで使われる工程を参考にしたディテールだそう。
寸法を最大限変更できるように生地を残して折り畳み、” Baste “と呼ばれるしつけ糸で縫い付ける。
そこから、このジャケットはBaste Pocket Jacketと名付けられました。
RINSED(オフホワイト)は洗いのみがかけられています。
INDIAN BLACK DYEDは焼いた象牙とイカから得られた黒い染料で染められているそうです。
と、オリジナルの生地/オリジナルのアイデア/自然由来のアナログな染色方法で作られたTENDER Co.のBASTE POCKET JACKETですが、大事なのはそこじゃない。
聞かれたら説明出来る要素は多いけど、そういうのを知らなくても「いいなあ。」と思って買うことが出来る洋服なんです。
生地に用いられたテクニック、着る上で使うディテール、布が褪色していく美しさ。
そういうのは気に入って着ている内に自然とついてくる、美味しいおまけのようなもの。
洋服の形自体はシャツジャケットに分類されるような物だと思うので、提案としてはいつも通り。
みなさん、好きなように着てください。
説明だけ聞くと、作り手の拘りが強そうなイギリス物。雰囲気も十分すぎるくらいちゃんとある。
その為、物としてのキャラクターが強いように見えますが、実際は選ぶ人自身のキャラクター/好きなもの/持っている洋服に印象が左右される洋服だと思う。柔軟。
僕はこの細さが気に入ってます。なんか生地が奇妙にストレッチするのも笑える。
「着る人を選ぶ洋服」という表現をたまに見かけますが、MANHOLEを始めてからそんな物はこの世に無いのかもしれない、と思うようになりました。
大体の洋服は、選ぶ人が着るだけです。
で、あるならば、僕らはお客さんと一緒に「着る人」ではなく「選ぶ人」になっていきたい。
例えば、TENDER Co.のような。
理屈もあるけど理屈じゃない良さを感じる洋服からは、その「選ぶ人」になるためのヒントを感じます。
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河上 尚哉
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