CLASS:fukinsei
さて、明日から発売するCLASS:fukinsei。
このスウェットに関しては「一度、受け入れてみてほしい。」ということを、まず最初に伝えたい。
「自分には似合わない。」
「着るのに勇気がいる。」
「着方がわからない。」
このスウェットに限らず。
自分の引き出しにない物に対して、その便利な呪文を唱えながら避けるのは物凄く簡単で、どうやら僕らはその言葉を放ちながら、何かを見て見ないふりをしながら通り過ぎるのに少しだけ飽きてしまったようだ。
通り過ぎた結果手にするのは、きっとまた同じようなもの。
そんなことを繰り返しているうちに、どんどんと増え続ける同じようなもの。
その内、同じようなものの輪の中で飽きた結果、気持ちだけが萎んでいくのだろう。
そうして日々、消費されていく「同じようなもの」。
それは本当に「消費されて」いっているんだろうか、自分の中の気持ちを「消費して」いるのは自分自身なのではないだろうか。
クローゼットに溢れかえる同じようなもの。
お店にたくさん並んでいる同じようなもの。
インスタグラムを開けば目に飛び込んでくる同じようなもの。
今日も作り続けられる同じようなもの。
今、インターネット上に見る洋服の商品説明のほとんどが「その同じようなものとはどう違うのか。」を解説するためだけの言い訳にしか見えない。
生地が良かろうが縫製に凝ってようが、シルエットを現代的にアップデートしようが、ほとんど同じものが同じようなものに変わっただけではないだろうか。
かといって、そう見えるものに対して唾を吐いてもしょうがない。
場合によっては、僕らも同じようなものを並べ続けているように見えるかもしれない。
いや、きっと同じようなものを並べ続けている。
僕も同じような物が好きだ。自分が好きなものが好きだ。好きなんだからしょうがない。
好きなものは良くも悪くもそう簡単に、変えることが出来ない。
でも、それを小手先のテクニックや打ち出し方で違うように見せるのは限界がある。
「自分が好きだから良い。」なんて前向きさで自分を、誰かを誤魔化すのにも限界がある。
「自分のスタイルはこうだから。」なんて、ひたむきさを自分の中に感じたこともない。
何故なら僕らは僕らで今の自分に満足しているわけではない。
「別注で差別化する。」なんて安易な考えで物を作り続けるのも限界がある。
本当に何かを作ることで差別化出来ているんだろうか。
「差別化すること」が目的になってはいないだろうか。
その差別化するために作ったものを着て、お客さんは楽しんでくれるのだろうか。
ここでまた、疑問が一つ二つ三つ、増える。
と、そんないつ答えが出るかわからない疑問を延々と考えながら時間を潰すのも限界が来る。
仮に答えが見つかったとしても、きっとまたすぐ堂々巡りする。
たまにはその堂々巡りの輪っかが生み出す輪郭から、能動的に少しだけはみ出してみたい。
ここで、振り返ってみる。
その堂々巡りの輪っかからはみ出す為に出来る行動で一番簡単なのは「まず、自分の中にないバランスを受け入れてみること」だ。
同じようなものの中に紛れる新しいバランス。
その違和感は、きっと思った以上に自分の中に変化をもたらしてくれる。
僕らは「常に新しいものを探し続けたい。」なんて向上心も、残念ながら持ち合わせていない。
ありがたいことに新しいものなんてそう簡単に出会わないし、今のところ、新しいものは偶然出会うくらいが感動的で良い。
だから、僕らに必要なのは「自分が好きなもの」と「自分が無意識に避けていたもの」だ。
今はそれで十分で、何かを受け入れられる余裕が自分の中にあれば、変わりたい時にいつでも変わることが出来る。
自分が無意識に避けていたものを受け入れた結果増える新しい選択肢。
自分が無意識に避けていたものを受け入れた結果見える、同じようなものの新しい顔。
自分が無意識に避けていた物を受け入れた結果広がる、新しい世界。
それを感じた時、まだまだ目の前にあるもので遊び続けられるような気がしてとても嬉しい。
幸い、世の中はたくさんの物で溢れている。
さて、CLASS:fukinsei。
用いる特殊裏毛/ショルダーシーム、サイドシームが無く生地を背中で接ぎ合わせた作り/直線的なアームホール/接ぎの無い筒状リブなど。
特徴的なデザインが詰め込められているはずなのに、初見であまりその部分に目がいかない理由は、やはり天幅35cmというオフショルダーネックラインが生み出す大きな違和感によるものだろう。
ただ、この洋服もやはりいつも通り「ただ、着るだけ」。
大雑把に言うと首元が大きく空いた、ただのスウェットだ。
ただのスウェットに人間が負けるわけがない。
「自分には似合わない。」
「着るのに勇気がいる。」
「着方がわからない。」
安心して欲しい、僕も一年前まではそう思っていた。
僕よりも許容範囲の広い中台ですら、そう思っていた。
悠人は「僕、これ買えますかね!?」と、最初からワクワクしている。可愛い。
CLASSが数年前作っていたスウェット:fukinseiを復刻した。
以前は受け入れられなかったバランス。
だけど、僕らの目には今、ちゃんと。
このスウェットが「かっこいいもの」として映っている。
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河上 尚哉
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