曇天と晴天の服
BLESSの転写プリントベスト:Lining Vest。
妙なキルティング、妙なスリーブ、どこが打ち合わせなのかわからない妙な形、使い道のわからない妙に長い裾の紐、そして木の転写プリント。
ここまでだと「BLESSだなあ。」と、ちょっと戸惑う。
だけど、このモデルの裏地はチェックのモヘア。可愛い。裏でも着ることが出来る。
諦めきれず「自分でも着ることの出来る可能性があるのではないだろうか。」と、思わせてくる点もBLESSなんです。
その点は古着と似ている気がする。
諦めたいんだけど諦めさせてくれない、最後の方に良さが見えてしまう。
僕が適当に選んでくるBLESSを、中台が毎回気に入ってくれる理由がなんとなく、わかる。
値段は妙に高いけど。そこは(タイミングによっては)何故か諦めがつく不思議な洋服。
これはきっと、BLESSの洋服を好きな気持ちがそうさせるわけではなく、BLESSのデザインチームが作り出してくれる現実以外の何かを見たい気持ちが、そうさせているのだと思う。
暗いブラックウォッチのウールモヘアに、どこかの風景。
BLESSのコレクションに転写プリントが多いのは。
いつもの光景の中に、いつかの景色を見たいからなのではないだろうか。
曇天のウールモヘアに晴天の転写プリント。
冬の短い昼間を乗り越える為の、曇り空の中に見える、光。
この洋服はまさに「着て楽しい洋服」なのだと、思う。
そして、その楽しいベクトルは自分だけに向けられているわけではなく、他人にも向けられている。
何故か内向的になっている場面を良く見かける、洋服という物。
本来は自分だけでなく、隣にいる誰かや道ゆく誰かを楽しい気持ちにさせる期待が込められた物でもある。
少なくとも、BLESSの作る物は「自分が気持ち良くなる為」だけに作られたわけでないことは、この妙な洋服を見ればわかる気がする。
内に向けられた部分だけを優先するとただのオタク。
外に向けられた部分だけを優先するとただチャラいだけだ。
内に向けられた部分と外に向けられた部分、その両方を受け取ることの出来る物や場所や人こそに。
僕らは今、「ファッション」という言葉を感じる。
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河上 尚哉
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