ただのグレーのパンツ
さて、SADEのPT10。
影山さんが「いくつか生地、用意しました。」と、持ってきてくれた端切れの中から今回僕らが選んだのは2種類のグレンプレイド。
僕は昔からこの柄が好きだ。
「若いのに、おじさんくさい物が好きなんだね〜。」と、言われていたけどおじさんくさい意味がわからない。いや、意味はわかるけど、別にいいじゃん。
以前はこの柄がなんで好きなのかわからなかったし、考えようともしなかったけれど。
ある時その理由を自分の中で整理したことがある。
「黒い洋服」に、馴染むからである。
それまで頭を使って色を合わせたことの無かった僕にとって、ある種論理的/何故か誰かに道筋が定められている色合わせという世界観は洋服屋を始めたばかり、ましてやクラシックのクの字も知らずにクラシックな物が並ぶ売り場に立つことになった当時の僕にとっては少し、キツかった。(ちなみに、僕は未だにクラシックのクの字も知らない。)
簡単にいうとおじさん達の言う「黒い靴を履く、黒いパンツを穿く、黒いジャケットを着たら、モード。」という感覚が全くわからなかったのである。
どうやら黒い靴、黒いパンツ、黒いジャケットを着るのは普通なことでは無かったらしく、確かに当時のクラシックな売り場に並ぶカジュアルなテーラードに黒は、無い。
と、なると黒い洋服を着たくなるのは当たり前である。
だって、当時立っていたクラシックな売り場に黒い洋服着てる人がほぼいなかった。目立てるかもしれない。
が、売り場にある黒い洋服はフォーマルな物しか無い。
たまにカジュアルな物もあるけどなんか、イメージと違うんだよなあ。
と言うわけで、クラシックな売り場に立ちながら黒いテーラードや黒いパンツや黒い靴を身につける先輩方の様子を暫く窺うことにした。
が、全く参考にならない。
これは当たり前で、新旧クラシック、新旧デザイナーズ、そしてオーセンティックな物を絡めて膨大な量の洋服を見てきた諸先輩方のクローゼットの内容に追いつくことなど、当時の僕には不可能だったのである。
そうこう悶々していたある日。
超絶クラシックな方が黒白のはっきりとしたグレンプレイドの3ピース(確かDALCUOREのビスポーク)に衿の堅い白のワイドスプレッドシャツに黒のニットタイ、黒の内羽根シューズで出勤しているのを見た。
「めちゃくちゃかっこいいな。」と、思ったのと同時にある種の正解を見た。
白黒のグレンプレイドのテーラードに、黒いタートル、黒のコーデュロイパンツにチェルシーブーツ。かっこいい。
白黒のグレンプレイドのトラウザーズに、黒いタートル、黒いデザイナーズブランドのジャケットに黒のタッセルローファー。かっこいい。
と、言うわけで僕はグレンプレイドの洋服が好き。
きっとこの柄を好きな本当の理由は「黒い洋服と馴染むから」ではないと思うけど、考えるの面倒だからそれでいいや。好きな理由なんて結局最後までわからない。
だけど、たまに理由を考えてみると楽しいかもしれない。
この写真で着ているのは7,8年前のFRANK LEDERのセットアップ。
二つ釦、袖は筒、スラッシュポケット、ノーベント。
組下のパンツはジュートのドローコードの付いたイージー仕様。
何故か一部のお店で「きこり御用達ブランド」のような紹介をされているのを見かけるけど、やっぱりFRANK LEDERはデザイナーズブランドだし、ちゃんとイカれてるしイカしている。
今の僕にとって、この「白黒のグレンプレイド」という柄は「ただのグレー」に見える。
と、いうわけで色を入れるのにもなんの抵抗もない。なんも考えない。たまに考えると結構楽しい。
柄の大きささえ違えば、異なるグレンプレイド同士を合わせてもかっこいいなあ。
体が大きくなったせいか、着るとぱつぱつになるFRANK LEDERのジャケット(XSサイズ)ですが、なんだか今回のPT10のワイドな裾幅と合わせると悪くないですね。
さて、そんなグレンプレイドのトラウザーズ。
中台に「これ、着て写真撮るよ〜。」と、言ったらこんな格好で合わせてました。
軍物、カモ柄、ナイロン、グレンプレイド。
何故か「おじさんくさい」「クラシックな」「派手な」印象があるようだけど、ただのスポーティなグレーのパンツです。
おまけにグレーのパンツらしく、汚れても全く気付かない、本当に。
※” SADE ” – PT10 -は12月18日(土)から販売致します。
オンラインストアへの掲載は同日正午を予定しています。
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河上 尚哉
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