揺れる、黒
タートルネックが好き。
タートルネックを初めてお洒落アイテムとして認識したのは、中二か中三くらいの頃だったと思う。当時、整髪料の広告に出ていた小山田圭吾がホワイトジーンズ姿に黒いタートルネックを着ていて、それは僕がヨーロピアンファッション(主にパリ)に興味を持つきっかけになったような気がする。
って、歳がバレんぞ…。
(別に隠してないけど)
タートル好きの僕は今日もタートルネックを着ています。
鶴田です。
今日はイギリス製の赤いタートルネックにユルモコのジャケット。胸元にはBLESSのピンズをごちゃごちゃ付けて。
おじさんの割にはかわいいと思うんですけど、どうでしょう…。
かわいくはないか…。
ともかく、10代の頃はタートルネックを着れば大人になれると思っていた。
(ので、学ランの下に黒いタートルネックを着て通学していた)
店内にひっそりとある、黒いタートルネック。ULTERIORがMANHOLEのために作ってくれたこれは、インラインの白いモックネックを見た河上が、「黒いタートルネックが欲しい」と適当に別注したもの。皮膚が薄く毛穴が多い羊からごく少量のみ採れる「メリノオプティモ」と呼ばれる、カシミアのような肌触りの素材感はそのままに、モックネックよりもサイズバランスを少しコンパクトにしてインナーにも着やすくなっている。河上にしては、至極まっとうな注文だなあ…。文句ないじゃん。
店内にあった古着のライダース。逆三角形のボディ、カラッカラのカチッカチに乾いたレザー、デザインも80’sな感じでなかなかにイナタイ…。ちょっと黄味がかったグレー色も絶妙におじさんっぽくて危険な香りがする。
おじさんの身体とおじさんライダースの間にメリノオプティモを挟むと、素材に滑らかさが出た。あー、よかった、危機一髪。カサカサだらけになるところだった。
一枚で着てもバランス取れてます。MANHOLEの店内に、こんな気の利いたアイテムがあるとついつい見落としてしまいがちだけど…。地味にいい仕事をしてくれる。でかしたぞ、河上。
グレーのおじさんライダースやRIOSのウエスタンブーツが放つ、曲者特有の妖しい光は、すべてこの黒いタートルネックが吸い込んでくれるような抜群の包容力。
なんでも受け止めてくれる懐の深さに対して、袖と裾に配された二段リブはガンジーセーター由来のものなのか?ちょっと男っぽい印象で、シンプル&ハイクオリティの中にチャーミングな顔をちらちらと覗かせてくる。
「大人の〇〇」みたいな謳い文句で普通に毛が生えたようなアイテムをひたすらにプロモーションする流れが横行するようになって、早ウン10年。何をもって大人とするかなんて人それぞれだし、といつも思ってしまう。そもそも自分が「大人」になれているのだかどうかも未だに判らない。でも、黒いタートルを着れば大人になれるような気がしたのは僕にとっての事実。もしかしたら黒いタートルネックは、実年齢に関係なく、大人と子供のはざまで揺れる人が惹かれるアイテムなのかもしれない。河上も33歳だし。そういえば、「大人は判ってくれない」のアントワーヌ・ドワネル君がブタ箱に放り込まれたときに着ていたのも、黒いタートルネックだったな。
ということで、「俺は大人だ」と威張っている人や「大人になんて絶対になりたくない」と一生ピーターパンで通すつもりの人だけでなく、「俺って何者なんだろう」と揺れている人のご来店こそ、心からお待ちしています。
FIN
なんて。
鶴田 啓
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