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この世界の片隅で



こんにちは、鶴田です。


昨日、河上が紹介していたCLASSの細いパンツ。 ノープリーツ、ざらっとした手触りのナチュラルストレッチウール100%。


” CLASS ”
– CCCS06UNI A –
Color : C.Grey
Size : 1/2/3
Price : ¥52,800-(tax included)





ウールのテーラードパンツが劇的に細くなったのは1990年代半ばにPRADAのメンズコレクションがスタートした辺りだったと記憶している。その細さは「ノープリーツ・裾幅19㎝」みたいな数値的記号となってクラシコイタリアへ飛び火することで、モードのみならずクラシックウェアの世界へ浸食し、最終的にはスリムなスーツへ姿を変えて世界制覇を果たした。

イタリアのパンツファクトリー・INCOTEXには「N30」というモデルがある。20年前くらいに僕も穿いていたが、あのモデルはノープリーツ・細身のテーラードパンツをイタリア人が完成させた瞬間だったように思う。直線的なシルエットの中に立体的なつくりを内包させつつ、玉縁やベルトループも細く巻いてあり、パンツ専業メーカーがイタリア人らしい美意識を詰め込んだ品番だった。


一方で、CLASS。





実際に穿いてみたら、予想通りに細い。というか予想よりも、更にちょっとだけ細い。 ちなみに、斜め方向に伸縮するナチュラルストレッチなので、穿き心地は実際に快適そのもの。



膝下も普通に細い。フレアやワイドに慣れていた人こそ新鮮な見え方を発見できるはず。それにしても、どこかがおかしい。しっかりと細いんだけど、手ごたえがないというか。たとえばINCOTEX 「N30」など、一般的な細いドレスパンツから感じられるような、統制された緊張感が、ない。



「細いけど、シリアスじゃない」というのが、このパンツを初めて穿いた瞬間に僕が感じた率直な感想だった。「シリアスじゃない」ので、ジャストレングスに裾上げして直線的なスリムシルエットを出そうと躍起になるよりも、むしろ少し長めの丈に裾上げして生地を多少たわませる方が気持ちいい。



例えば、トップスはシャツ+コート+ジャケットのレイヤード。



ガタガタのレイヤードに、2クッション入れて穿く細いパンツ。気分がいい。


イタリア人がパンツに求めたシルエットの完成美を、意図的に、そして絶妙に回避しながら作られたかのようなこのアイテムは「シャープですっきりしていなくてはならない」というスリムなウールパンツの呪縛から、僕らを綺麗さっぱり解放してくれる。



アウトサイドシームに見える部分、実はダーツ処理になっている。インサイドにしかシームはなく、外側は丸い作りということ。細いけど、くにゃっとして見えるシルエットの印象はここからきている(と思う)。きっちりとセンタープレスして穿かなくてもいいと思える柔軟さ、気楽さ、懐の深さ。そして、答えの無さ。



スリムなノープリーツパンツにはあまり見かけない両玉縁のポケットは見た目にちょっとした違和感を与えている。



ほら、手ェ大して入んないじゃん。タイトだから。でもそんなこと気にならない。そして、タイトに穿いた結果、ポケットが笑った(開く、という意味)としてもそれも気にならない。


そう、このパンツはまるで「不完全な美」を追い求めているようなパンツだ。イタリア人が考える「完成美」はそれに当てはまる体型の人だけを受容する。しかし、このパンツはシルエットが多少くにゃくにゃしようが、ポケットが笑おうが、河上みたいにお尻がプリプリしようが、そのすべてを受容する。


「こうでなくてはならない」という既成の概念をごく静かに覆しながら、 CLASSのパンツはMANHOLEの店内でひっそりと待っている。他人に与えられた「完成美」をしなやかに拒否し続ける人を。







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鶴田 啓

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