色物名品図鑑
こんにちは、鶴田です。
昨日、河上が紹介していたF.LLI Giacometti:FG166 。
いわゆる、グルカサンダル。
個人的には10年前からこのモデルを履いているので、履き心地のよさは誰よりも知っている(つもり)。その「名品」が、MANHOLEの店頭に届いた。
付け加えておくと、僕は「名品」という言葉があまり好きじゃない。名品とは「すぐれた品、いい品」を指す言葉で、FG166はそのクオリティや美しさ、オリジナリティの点で間違いなく「名品」なのだけれど、僕が嫌いなのは「名品だから買う」という行為そのもの。安心感はときに必要だけれど、無条件でそれに身を委ねてはいけない。
ということで、MANHOLEに並ぶFG166は「安心できないグルカサンダル」。
「POMPEI MARRON 」という名のグレーっぽいマロン色。フランス靴のローファーなんかでたまにありそうなニュアンスカラーだが、この色がFG166に乗ると既視感が消えて新しい見え方に変わる。
スムースな革質がM’s BRAQUEのザラっとしたセットアップにも、ぬめりながら馴染む。沈んだグレーのおかげで綺麗に仕上げられたコバの塗りも一層美しく見える。
蛍光イエローのソックスや花柄のシャツを合わせてもなんてことない。すべてを沼の底に引きずり込むようなFG166の深み。
中台が履いたのは「POLO ORANGE」と呼ばれる鮮やかなオレンジ。
ワイドなデニムにペタンコのグルカサンダルが気持ちいい。まるでスリッパのような見た目と履き心地。ブレイク製法で軽快に取り付けられたソールは初めから返りが良くて、快適そのもの。ベルト状の革を組み合わせて成型されたアッパーは歩行時の力が分散される為か、馴染む前から既に馴染んでいる。ノーストレス。
靴単体で見ると一瞬怯むような鮮やかさだけど、実際に履いてみればなんてことない。茶靴の延長だと思えば怖くない。
そしてふたたび鶴田、「BLU ATOLLO」。子供のころに使っていたクレパスを思い出すような、圧倒的水色。「ATOLLO」はイタリア語で「環礁」の意。つまり、青い珊瑚礁。
デニムに水色。別にデニムじゃなくても、スウェットパンツに、ジャージに、グレーのウールパンツに…合わせるものは、なんだっていい。
こちらの革は、目が細かいスコッチグレイン。たまたま、ほとんど同じ色のソックスを履いていたので足全体が珊瑚礁になった。別に、それでもかまわない。
今シーズンMANHOLEが用意したFG166は、ごらんのとおり。名品という言葉が連想させる安定感よりも、むしろ冒険心を掻き立てるようなバリエーション。
オレンジ、水色、鼠色、白スエード。
「こんな変な色の靴、履いたことねーよ?」
履いたことない。だからこそ、いいんだと思う。
安心感はときに必要だけれど、無条件でそれに身を委ねてはいけない。
いくつになっても初めてのことに心を躍らせながら生きていきたい。
いつもの名品が、姿を変える瞬間。
それは、品が変わる瞬間ではなく、自分自身の目の色が変わる瞬間。
鶴田 啓
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