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黒い光、黒い靴



ここしばらく、パンツの話題が続いていたので少し目線を変えて、今日はシューズの素材について書いてみようと思います。
こんにちは、鶴田です。

店内の一角に、黒い光を発見。



艶っぽい黒。 F.LLI Giacometti としては今回から新たに取引きを始めたフランスのタンナリーHAAS社の型押しカーフ。 昨年末に河上がジョッパーブーツやサイドゴアブーツを紹介していた、あの革と同じ「UTAH CALF」と呼ばれる素材。



今回のモデルはグルカサンダルの元祖・FG166と木型LUIGINOを使用したローファー・FG257。どちらも同ブランドの中では10年続く定番モデルだけど、甲革に「UTAH CALF」を使うことで、ちょっと見え方が変わる。


” F.LLI Giacometti “
– FG166 – [Gurkha Sandal]
¥89,100-(tax included)



” F.LLI Giacometti “
– FG257 –
¥107,800-(tax included)



しっとりと柔らかく、オイリーな革質。一般的なスコッチグレインに比べて光沢があるので、手縫いモカの立体感やサンダルストラップのエッジがくっきりとした印象に。スムースレザーを鏡面仕上げしたような光沢とは一線を画す、ちょっと不思議な光。



後ろ姿もキリっと引き締まった印象。
本来、型押しレザーはシューズの中でもスポーティーなモデルに使われる場合が多い。例えばそれはフルブローグやUチップ、編み上げブーツ、あとは勿論スリッポンやローファーにも。フォーマルでドレッシーな印象を与えるスムースレザーに比べて、スエード靴と同じカントリーサイド寄りのシチュエーションで愛されてきた揉み革がベースにある。それらには厚手でタフで、多少傷ついてもかまわないような革が使われていて、表面はゴツゴツ&粒々していて、滑らかさには程遠い。勿論、主流はブラウン。


それに対して、「UTAH CALF」。このグロッシーな型押しカーフが与える印象は、カントリーを一切感じさせない艶めかしさ。軽いし、薄手だし、柔らかい。ALDENのアルパインカーフが光沢感の意味でやや近いイメージだが、「UTAH CALF」の方がもっともっとエレガントに見える。



手持ちのツイードジャケットに合わせて履いてみた。ボトムはフラッフィーなスウェットパンツ。



裾幅37㎝のスウェットに隣り合わせても、きちんと存在感を放つ「UTAH CALF」。



シェットランドツイードの足元でも、 きちんと存在感を放つ「UTAH CALF」 。



元々は傷ついてもかまわない、多少は乱雑に扱ってもかまわない型押しレザー。しかし「UTAH CALF」の靴には「適度にクリームを入れてケアしながら、丁寧に履いてみるのもいいかもな」と思わせてくれる気品がある。表革とスエードの中間みたいな立ち位置、だけどスムースレザーが持ち合わせていない独特の色気を放つ靴。


僕が黒い洋服を好まないのは、そこに「黒にしておけば間違いないだろう」という安易な逃げが感じられるから。さらに言えば、その正反対には「安易な逃げを越えてまで着なければならない黒い洋服との出会いが滅多にないから」というハードルがある。しかしこの「UTAH CALF」には、表革とも黒スエードとも違う色気があるし、一般的なスコッチグレインにはない艶めかしさがある。


10年続く定番モデルの中にあって「UTAH CALF」のローファーやグルカサンダルは、黒でなければならない必然性をきっちりと手元に引き寄せているという意味で、僕にとって「黒であることを越えて、それでもカッコいい黒靴」だと思う。


カッコつけ過ぎたくない人ほど、足元に合わせてみてほしい。「あえての黒靴」とか、そういうロジック的なややこしさを絶妙に回避する無頓着ルックにこそ、 一筋縄ではいかない黒い靴が妖しい光を運んでくれるはず。





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鶴田 啓

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