実在する袖
こんにちは、鶴田です。
CLASSの洋服がいつも僕らをワクワクさせてくれるのは、それぞれのアイテムから日常に対する必要性や意味を感じないからなんだけど、じゃあ本当に意味がないのかと言われると何かしら「意味がある」ような気にもなる。意味なんかないね、という言葉の裏側にある意味。答えが出ない、という答え。そんな不思議な感覚。

CLASSの洋服を見ていると、たまに「こんなに可愛いorカッコいいor面白いor楽しいアイテムなのに、なぜ今までこの世に存在しなかったのだろう」と思う瞬間がある。 過去と未来が同居する、つまり懐かしさと新しさの表現。 理解を超えたそれらのアイテムは他の洋服と組み合わせたときに、全体の見え方を丸ごと違うものに変えてくれたりもする。
これはきっと、堀切さん自身の中にアーカイブへの敬意と未来への探求心が同時に存在するからだろう。僕らが既に見てきた過去とまだ見たことのない未来が絶妙にブレンドしたCLASSのアイテムは、時間軸だけではなく、日常と非日常、意味と無意味の境界線上にポツンと落っこちているような佇まいで僕らをじっと見つめてくる。

” CLASS “
– CCCS10UNI A –
BLACK / RED
¥53,900-(tax included)
– CCCS10UNI B –
PURPLE
¥20,900-(tax included)
今シーズンCLASSから届いたのは、シャツ袖。というか、これを「袖」と呼んでいいのかどうかも怪しいくらい謎のアイテム。素材はご丁寧に二種類も用意してある。見た目は謎だけど、使い方はいたって簡単。当たり前過ぎるくらい「腕に装着する」だけ。

まずは、繊細な印象のパープルから。

ジップアップブルゾンの袖の上から袖を装着した例。

パープルはナイロン100%で、透ける素材。ブルゾンのギンガムチェックが妖しくシースルー。あと、本来は出ないはずの位置にボリュームが出ている。

コーディネートの色彩を更にパワフルにしてくれたりもする。

ゴワゴワで強い印象のブラックとレッド。

ブラックはシルク×金属繊維素材なので、パープルほどの透け感はない。

袖が取り外しできるジップ付きジャケットに組み合わせて、無くなった袖を補完してみた。

毛抜き合わせの柔らかいウール素材の下から、金属繊維の野蛮な質感が顔を出している。色彩がない分だけ、素材感が強調されている。

ブラックと同素材の赤。一転して、鮮やかな赤。

ジャケット袖の上から、あるいはジャケット袖をまくり上げてシャツ袖の上から、更に袖を重ねてみた。
と、色んなパターンで袖に袖を重ねてみたけれど、やっぱり意味なんてない。「素材感が○○」とか「シースルーで○○」とか「袖が二枚に重なって○○」とか、理由を付けてみたけれど、もはやほとんど理由になってない。

ただ、これほど意味のないものを真剣に作っているデザイナーがいること。これだけは動かしがたい事実。真実とか真意とかは、きっと人の数だけ存在するのだろうけれど、CLASSからこの超現実的な袖が届いたことは、やっぱり僕らが住むこの世界の現実。
どれほどシュールなアイテムだろうと、人間の肉体とセットになった瞬間からその洋服はリアルに変わる。意味や必要性や効果などといった、脳内を渦巻く概念的な思考よりもずっと、袖の上から装着した袖の方が現実味を帯びることだってあるんだと思う。あまり先回りして考えるよりも、自分の実在を信じることができればいい。ファッションの素晴らしいところは、いつも肉体とともにある点にあると思っている。
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鶴田 啓
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