スリーコード
ここ数日のブログで紹介している丸みのあるラペルのアンコンジャケット。実にCLASSらしい余白を感じさせるこのジャケットには、 昨日のブログで中台が紹介していたご機嫌なチェック柄とは別に、かなり地味な素材使いのものがある。普通のバイヤーならば見落としてしまいそうな地味さ。よく言えば素っ気ない、飾らない感じ。悪く言えば、地味、普通。
こんにちは、鶴田です。
コンストラクションやディテールは一昨日に河上が散々紹介していたので、僕が付け加えることは何もない。
アンコン仕立ても可愛いラペルも内側の4ポケットも、すべてがコットン100%のチェック生地モデルと同じデザイン。違うのは生地だけ。 ざらっとしたドライタッチのナチュラルストレッチウール100% 、色はチャコールグレー。パッと見はビジネスマンのスーツ地に使われていてもおかしくない、ノーマルな感じ。
同じウール生地を使ったアイテムでもうひとつ、ウエスタンモチーフのシャツも届いた。モチーフ、とは言っても、ディテールほとんどすべてが完璧にウエスタンシャツなんだけど。
意外にショートポイントな襟型や変則的なダーツ使いが、王道のウエスタンから少しはみ出したイレギュラーな感じ。に、地味なウール地が乗っている。このシャツもまた店内で見落としてしまいそうなノーマルさ。
と、ここで熱心な読者の方なら思い出したかもしれない。少し前に紹介した「地味なウールパンツ」の存在を。そう、この地味なウール地のジャケットとウエスタンシャツは、あのパンツと同じ生地を使っている。
今日は3つの地味アイテムを使って、ちょっとした実験をしてみた。実験の内容は以下の通り。
「3つの地味アイテムの中から2アイテムを選んでコーディネート。靴や小物など、その他のアイテムはできるだけ共通のものを使う」
とてもシンプルで分かりやすいコンセプト。ちなみに、着用サイズはすべて「2」。
パターン①
「地味ジャケットと地味パンツでコーディネート。靴やキャップ、Vゾーンのシャツタイなどは鶴田が着てきた私物」
アンコンジャケットのリラックス感、イイ感じ。ザラっとしたウール素材が初夏に着ても気持ちよさそう。
一転して、タイトなボトムス。ひらひらと泳ぐジャケットの下に、まったく泳がないピッチリしたパンツ。
同じサイズで着用しているとは思えないほど、上半身と下半身のテンションが違っている。共生地のセットアップなのに。
パターン②
「地味ウエスタンシャツと地味パンツでコーディネート。靴、キャップ、シューズなどは全てパターン①と共通」
上下がスリムフィットなバランス。全身でこんなに細いバランスは最近ではあまり見かけない気がする。それくらい細い。細すぎて、なんか新しい。
小物類がコーディネートに華を添えているとはいえ、やはり驚くべきは①と比べた時のシルエットの変化。また、グレー無地の地味生地になることで、シャツの変則ダーツ(インサイドアウトのダーツ処理、さらにダーツのヘムをカットオフで開いて割っている)などのディテールに視点がよりフォーカスされる気がする。
パターン③
「地味ジャケットと地味シャツでコーディネート。ボトムスはワイドなデニムパンツ。靴、小物類は①②と変わらず」
グレーシャツ+グレージャケットの静かなコンビネーションにワイドな13.8ozのチャコールグレーデニムがワイルドに乱入。地味ウールの繊細さが、対照的に際立つ。シルエットは今の時代に比較的見慣れた全身ゆるやかなライン。
アンコンのジャケットを脱ぐと、シャツは抜群にタイトなんだけどね。という違和感。
店頭で見落としてしまいそうな地味グレーのウール生地をまとっておきながら、果たしてその実態は「常識的なシルエット構築法をズタズタに分断する」という、実にCLASSらしい変則コード進行のパンク服。スリーコードだけでもこれだけ多彩に楽しめるんだから、小物やシューズ、着る本人のキャラクターが変われば、もはや書けない曲なんてないことを逆説的に証明してしまっているかのような自由度の高さ。
勿論、このシリーズを三つそろえて買う必要なんてない。
しかし、あれほど「ご機嫌なコットンチェック生地」の同型ジャケットオルタナバージョンとして、こんなにも「普通っぽい、グレー無地」を用意するCLASSのクリエイティブ。それは「色、柄、生地、ディテールの独創だけでファッションが形作られてきたわけではない」というメッセージに思えるのは僕だけだろうか。
この静かなるエッジ。見えづらい刃の方が深く刺さる。
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鶴田 啓
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