丸と三角と四角
ずっとそこにあったはずなのに、何故か見えなくなっていたもの。
身の回りに当たり前のように溢れているせいで、忘れてしまったもの。
特定のイメージが頭をよぎるせいで、視界から無意識に消しているもの。
あるいは、元々存在しなかったもの。
デザインというのは。
人間が「それ」を知覚するための今日を、認識した先の明日を楽しむための一つのきっかけなのかもしれない。
今日紹介するのはrenomaのレザーネックレス。
丸と三角と四角。
既に身の回りに存在している○△□と違い、このネックレスにはまだ、なんの意味も機能もない。
入荷してから約1ヶ月。
特にお客さんに勧めることなく、トルソーにかけたまま放置しているrenomaのレザーネックレス: Maupiti[○] / Makatea[△] / Tahaa[□]。
ちなみに、今後もこのレザーネックレスを僕らからお客さんへ積極的に勧めることは、きっと無い。
僕は、人から勧められたアクセサリーを身につけた試しがない。
普段の様子を見る限りでは、きっと鶴田さんも人から勧められたアクセサリーを身につけたことが無いはずだ。
中台に至っては、アクセサリーをつけている姿を見たことがない。
そう、僕らはこのレザーネックレスに対して「なんか良いなあ。」と感じたから仕入れただけで、別に特定の誰かに売りたいから仕入れたわけでも、ある特定の意味を感じるから/その意味を伝えたいからお店に並べているわけでもないのである。
と、いうわけで。
この○△□のネックレスは、「なんか良いな。」と思った人が「なんか良いな。」というタイミングで自ら手に取って「なんか良いな。」という瞬間に身につけるのが自然だと思う。
適当につけてみた。
中台は大きすぎるTシャツが産む寂しさを埋めるため。
僕ははだけた胸元を埋めるため。
2人とも普段ネックレスなんてつけないけど「良いじゃん。」と思っている。
あとはもし仮にこのネックレスを身につけて過ごす際、いつかどこかの誰かが僕らの何かに魅力を感じてもらえたらそれでいい。
例えば「特に意味はないんですけど、気に入ってつけてるんです〜。」という軽い言葉や雰囲気の中に宿る重みを感じたことはないだろうか。
僕はその重みこそが、その人自身の魅力なんだと思う。
僕らはMANHOLEのお客さんと共に、洋服や装飾品だけでなくそういった力を身につけていきたい。
既に身の回りに在ったネイビーブレザー。
見慣れたパジャマ。
記憶の中の真珠と貝殻。
過去にどこかで目にしたことのある形のバッグ。
そして、常に存在する○△□。
renomaの今回のコレクションは、そういう当たり前にあるもの/当たり前すぎて忘れ去られた物や、既に特定のイメージを持つ物に対して改めてフォーカスした内容だったように僕は思う。
全て、renomaでなくても良いもの。
だけど、僕らは今のrenomaを使ってその「当たり前」を改めて提案したい。
過去に生きた人間が作り出した物に付けられた意味、それが必ずしも今の僕らにとって正しいものとは限らない。
だからこそ、僕らは自分たちで既にあるものに新しい意味を見出すことが出来るはずだ。
ずっとそこにあったはずなのに、何故か見えなくなっていたもの。
身の回りに当たり前のように溢れているせいで、忘れてしまったもの。
特定のイメージが頭をよぎるせいで、視界から無意識に消しているもの。
あるいは、元々存在しなかったもの。
デザインというのは。
人間が「それ」を知覚するための今日を、認識した先の明日を楽しむための一つのきっかけなのだろう。
少なくとも僕は、この○△□を目にした時から日常に溢れる○△□が妙に目につくようになった。
何か新しい発見、何か新しい発想に辿り着く予感がして、わくわくしている。
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河上 尚哉
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