ぐるりと180度

半年前の展示会で見た洋服のことはほぼほぼ忘れている僕達。
当然何をどれくらい仕入れているのかも覚えていない。
唯一覚えているのは「なんかかっこいいのあったな。」という印象くらい。
その「なんか」がなんで、なんなのかは、実際にお店に届いた際に思い出す。
今日紹介するNICENESSのWILDEに至っては。
届いた時に「こんなのオーダーしたっけ。。。なんて特徴のない物を仕入れてしまったんだろうか。」と感じた。


前から見るとなんの変哲もない、ヨーロッパの野暮ったいプルオーバーシャツ。
よく見ると生地はドライで少しキラキラ光っている為、そういう意味では特徴があるのだろうけど。。。
「生地に特徴があります!」だけでは通用しない。
僕らは「特徴的な生地」に飽きているし、何よりMANHOLEのお客さんはそんなに甘くない。
肩の切り返しは確かに格好がいいけど、そういう部分的なデザインのみに魅力を感じることが出来るほど、僕らは大雑把ではないし、その手の繊細さも自分たちには感じない。
一体、半年前の僕らはこの洋服のどの点に良さを感じて仕入れることにしたんだろうか。


後ろを見て「なんで仕入れたか。」を思い出した。
この洋服は前面を見た時と後ろ面を見た時で印象が変わる洋服。
無骨なフロントスタイルに色気のあるバックスタイル。
その「印象が変わるポイント」は、後ろ面に付属するベルトが生み出している。


そう、この洋服はベルトが主役。
ベルトをどの位置に持ってくるか、どういうふうに使うかで印象がガラリと変わる。
ベルトってすげえ。
ベルト、最高!






と、かっこいいなと思うポイントを見つけることが出来たら、急にその洋服のことが好きになれる僕。
「こんなのオーダーしたっけ。。。なんて特徴のない物を仕入れてしまったんだろうか。」という最初の印象からぐるりと180度。
「こういう洋服が一番着るんだよなあ。」なんてことを感じて欲しくなるんだから、単純である。
M/Lのサイズ差はそこまで感じない、とりあえず大きく着ればいい。
ひと目でNICENESSだとわからない地味デザインも、僕にとっては好印象である。





どういう風に着ても、ちゃんとベルトの存在を感じる点が楽しい。
何かを重ねる際に活躍するのがコットン/シルク/リネンのドライなヘリンボーン生地。
のっぺりとしたウールギャバを合わせても、同じような厚みのジェルトデニムを合わせても、ちゃんと表情が出る。






作りが大きいのでコートの上にだって着ることが出来る。
なんの意味もないけど、ACRONYMの機能性をわざと殺すのは楽しい。
黒いプルオーバー、黒いプロシェル、黒いコーデュロイ、黒い靴。
全部違う黒。
中台は昨日のコートのBlogの中と外を変えただけ。
同じ洋服を着た場合でも、着る順番が変わると全然違う洋服。

” NICENESS ” – WILDE –
Size : M / L
Color : C.Grey / Piggy
¥59,400-(tax included)
40’sフランス軍のホスピタリティとして多く使用されたボージョンスモックをベースに、ブッチャーシャツと掛け合わせたデザインのNICENESS:WILDE。
既存の二つの洋服を掛け合わせて全く新しいプルオーバーを作るNICENESSのアイデアも素晴らしいし、綿/麻/絹の糸をそれぞれ先染めして織り上げたヘリンボーン生地も、見た目や手間をかけただけではない良さを感じる。

が、僕にとってこの洋服に魅力を感じる点はそこではない。
フロントスタイル/バッグスタイルから覚える印象の違い、WILDEがその意外性を楽しむことの出来る洋服であることだ。
半年前は「良いピンクだな。」と思っていたし納品時も「良いピンクだな。」と思ったけれど。
色々着て試してみた今は、黒に近いチャコールグレーの方がよく見える。
なんでもそうだけど、マイナスがプラスに変わる瞬間ほど楽しい時間は無い。
洋服の場合は着るだけでそれを味わえるのだから尚更簡単でいい。
想像通りのもの、既に欲しいもの、人気のあるものを選ぶことは誰にでも出来る。
僕らはNICENESSにそれ以外の何かを感じるからお店に並べているし、MANHOLEのお客さんにはこのブランドのそういった側面を楽しんで欲しいと思っている。
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河上 尚哉
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