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もう、おじさんでもいい。







S.E.H KELLYのリネンスキッパーシャツ。
北アイルランドで最も古い工場にて潤紡績されたリネン糸にシルケット加工を施し微光沢を加え、織り上げた後に防縮加工した生地だそうだ。

先日中台が紹介していたFRANK LEDERの赤いコートが「圧倒的な赤」だとするならば、このS.E.H KELLYのスキッパーシャツは「厳かな青」。
南伊や南仏の太陽の下で映える青ではなく、ロンドンの雲の下の青。





そういえば以前、僕はとある洋服屋さんで「北アイルランドのリネン紡績工場は全部潰れた。フラックス農場も残っていない。」と聞いた覚えがある。

であるならば、このS.E.H KELLYのシャツに用いられている北アイルランド産リネン生地はかつて紡績された糸を用いたものなのだろうか。
あるいは北アイルランド最古の工場が実はまだ現存しているのだろうか。

気になって調べてみたところ、どうやらこのページにS.E.H KELLYの用いるリネン工場について詳細が書いてあるようなので読んでみようと思った。

が、2行目に差し掛かった辺りで気付く。
「はっきり言ってどうでもいい。」

そう。別に僕はアイリッシュリネンの生地を仕入れたわけではなく、S.E.H KELLYの作る洋服を仕入れたのだ。




角丸のフラップポケット、大振りの襟。そして、イギリスの意匠を感じるホーン釦。
全てがS.E.H KELLYらしいデザインだ。
スキッパーシャツに用いるには重たい仕様であるように感じるけれど、このヘビーウェイトのリネン生地と沈んだ青には非常にマッチしている。

さて、オープンカラーの一枚仕立てのリネンスキッパーシャツは僕の中でおじさんくさいイメージのある洋服。
自分が自分らしく着るためには工夫が必要な洋服だ。




とりあえず着てみた。
合わせているのはその日穿いていた白いコットンツイルの5ポケット。

白いパンツにリネンスキッパーシャツという、僕の中で「よりおじさんくさい組み合わせ」をどうやったら「おじさん臭くない印象」に出来るのだろうかと、色々やってみる。悪くない。

悪くないんだけど、潔さは無い。

そういえば。僕のイメージの中の「おじさん臭いスキッパーシャツ」はこんなに雰囲気が重くない。
もしかすると。このS.E.H KELLYのスキッパーシャツは、「おじさんくさい組み合わせ」に真っ向からぶつかっていける洋服なのかもしれない。





小細工をせず、潔く着てみて気付く。

「もう、おじさんでもいい。」

そう。例え誰かから見ておじさんくさかろうが、僕はS.E.H KELLYの作るこのリネンスキッパーシャツを「かっこいいな。」と素直に感じたから仕入れたのだ。



” S.E.H KELLY “
– POPOVER – [NORTHERN IRELAND LINEN FABRIC]
¥63,800-(tax included)




S.E.H KELLYはイギリス人らしい、頑固なブランドだと思う。
未だに生地/縫製/付属の全てに至るまでイギリス製であることからそれは伝わるはずだ。
僕は彼らの頑固さ、代理店の頑固さも全部含めて気に入っている。
そんな彼らが作る、おじさんくさかろうがおじさんくさくなかろうがどうでもいい、(正統な)アイリッシュリネンだろうがアイリッシュリネンじゃなかろうがどうでもいいと感じられるリネンスキッパーシャツ。

僕はもうおじさんでいいけれど。
少なくとも、自分が「かっこいいな。」と思うものに対しては。
細かいことを気にしない、かっこいいおじさんになりたいものである。




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