107-0062
central aoyama #003
4-1-3 minami aoyama minato-ku,tokyo

W : manhole-store.com
M : info@manhole-store.com
T : +81 34283 8892

blog

色のないシャツ



MANHOLEのためにドレスシャツを企画してみた。カジュアルシャツとドレスシャツの根本的な違いは、ネクタイを締めることを前提にして作られているかどうかにある。

こんにちは、鶴田です。

カジュアルシャツとは異なり、ドレスシャツの襟型やボディは首や体に沿うような立体的なパターンで作られている。1㎝刻みで細かくネックサイズが分かれているのは、ネクタイを締めた時に無駄なスペースがシャツと首の間に生まれないようにするためだ。ネクタイを締める場合は、当然ジャケットを羽織る前提であるため、ドレスシャツに使われる生地は(基本的に)高番手の糸で滑らかに織られたものが多い。

なんてことを書くと、いかにも堅苦しく真面目な洋服に思えてくるドレスシャツ。

最近ではネクタイを締める前提ではないリラックスフィットでオーバーサイズなカジュアルシャツボディにドレスシャツの生地を乗せたものが多く出回っている。時代は高級素材のラクチン服に向かおうとしている。しかし、ここにシャツの本質はない。



今回MANHOLEで企画したシャツは純然たるドレスシャツである。国内の優良なドレスシャツ工場にお願いして、襟型やフィッティング、ディテールを一から作りあげた。



ロングポイントのレギュラーカラーは襟先が逆Rの向きに跳ねないように、極力内側へ向かうように指定した。



フロントボタンは比翼仕立てで隠れるようになっている。何よりも特徴的なのは両胸に付いたポケット。僕が知る限り、ドレスシャツで両胸ポケット付きのものは存在しない。

そもそもポケットはボタンダウンシャツなどのスポーツシャツに付くことが多い合理的なディテールなので、基本的にドレッシーな匂いがするシャツには二つどころか、ポケットは一つも付かない。



カフスはスクエアで、白蝶貝のダブルボタン。運針の細かさ丁寧さからも、このシャツ工場のレベルの高さをうかがい知ることができる。



日常的にドレスシャツやネクタイを身に着ける僕にとって、このシャツは「様々なディテールを違和感と共にブレンドしたドレスシャツ」である。ディテールの一つ一つは奇抜なものではないが、それらの組み合わせとして全体を見たとき、世界中にこのシャツに似たものはまず存在しないだろう。「英国風」でも「イタリアンスタイル」でも「アメリカントラッド」でも「フレンチシック」でもない。特定の国の色は、このシャツには着いていない。









このシャツは確かにかっちりとした印象のアイテムではある。スーツ離れが加速する現代。若い人の中には「自分の首周りのサイズに合わせてシャツを選ぶ」という経験自体が無いかもしれない。「ジャストフィットの洋服に慣れていない」という声もあるだろう。

しかし、思い出してほしい。例えば初めて本格的なレザーシューズやテーラードジャケットを買った時の緊張感を。僕はMANHOLEで働き始めてから、F.LLI Giacomettiのシューズやrenomaのブレザーを通じて初めてドレスアイテムに触れた人たちの高揚感に満ちた顔を覚えている。



ネックサイズに合わせてシャツを選んだことのない人。



カッチリとした襟型のシャツを着たことのない人。



袖口のボタンをきっちり留める習慣のなかった人。



フライフロントのシャツはフォーマル用のみだと思っていた人。



これまでなんとなく「かっちりしているから」という理由だけでドレスシャツを避けていた人、また「昔はよく着ていたけど、画一的なスタイルに飽き飽きして今ではすっかりドレススタイルから離れてしまった」という人。そういう人たちにこそ着てほしい。

作りは本格的なドレス仕様だけど、オリジナリティを感じるディテールの組み合わせ。ネクタイを締めることもできるけど、絶対ではない。ジャケットを合わせればカッコいいけど、ポケットが二つも付いていればシャツ一枚で歩くのも気持ちいい。古着と一緒に着てもいい。サンダルを履いてもいい。

renomaを楽しめるのならば、 F.LLI Giacomettiを楽しめるのならば、きっとこのシャツも楽しめるはず。緊張と緩和、シリアスとユーモアを自在に操りながら洋服を着ることができれば、その先には楽しみ方がまだまだ無限に広がっていることに気づくだろう。 ちょっとした手間や緊張感。それは「只、洋服を着るだけ」という状態にちょっとした刺激を与えてくれる。 シャツにアイロンをかける瞬間ですら楽しめるようになれば、僕たちに、もはや着れない洋服はない。






そういえば、このシャツには「Leonard」という名前がついている。しかし、名前自体はさして重要ではない。 ドレスアイテムはある意味で肌に最も近い衣服である。激しいデザイン性を必要としない分だけ、フィッティングを重視する。つまり非常に個人的で肉体的で内面的な衣服であるとも言える。つまり、このシャツを着る上で最も重要なのはシャツの名前ではなく自分の名前なのだ。



逆説的に言うならばそれは、自分さえ許せばどのような着方だってできる「無色透明な洋服」であるということ。自分自身の色に自信を持って臨めば、このシャツは無限の色彩を放つことだってできるのだと僕は思っている。


” Leonard “
– Double Pocket Shirt –
Color : WHITE / BEIGE /BLUE
Size : 37 / 38 / 39 / 40 / 41 / 42
¥26,400-(tax included)






MANHOLE ONLINE STORE

MANHOLE official instagram



鶴田 啓

〒107-0062
東京都港区南青山4-1-3 セントラル青山003号室

M : info@manhole-store.com
T : 03 4283 8892