伊達じゃないディテール
きのうの雨で少しは気温が下がったような気がする、本日の東京。
少しでも過ごしやすい日は積極的にジャケットを着たいと思う、鶴田です。
僕がMANHOLEに加入してからの間だけでも、売り場には色んな形のジャケットが並んできた。CLASSのアンコンタイプ、構築的なrenomaの6つボタンブレザー、NICENESSのオーバーサイズジャケット、その他、古着まで含めれば実に多種多様な個性を放つテーラードジャケットたち。
そして現在、MANHOLEの店頭に並んでいる中で僕が抜群にカッコいいと思うのが、こちら。
上襟と下襟の落差がそれほどない、ソフトなピークドラペル。柔らかくカーブしたラペル、ポケット、そして袖の振り。ボリュームのある袖山。前下がりが付いたけまわしはノーベントでプカプカと泳ぐバックスタイル。短めの着丈。存在感のあるホーンボタン。ポケットの内袋は引っ張り出すとチーフ代わりにもなる?
見えるようで見えづらい、でも実は個性的なディテールの集積。
これは明らかに松下さんのスタイル。
素っ気ないネイビー無地に見えて、ウール×ナイロン×カシミア×ポリウレタンの四者混。この凝った生地もやはり、松下さんのスタイル。
河上のようにテキトーに、ノンシャランに着流しても、ショルダーラインのニュアンスや背面に入るドレープからはそこはかとない色気が漂う。
鶴田は腰穿きのカモフラショーツにハイソックス、ストラップシューズという意味のない組み合わせ。強いて言うならばロンドンファッション的なコーディネートだけど、このジャケットの非・英国的なたたずまいが特定のジャンルに収まることを静かに拒んでいる。
このジャケットの最も大きな特徴は下のボタンを掛ける6B ダブルブレストだという点。このディテールこそが、すべて(柔らかくボリュームのある袖先も緩めのシェイプも短めの着丈も)を飲み込んで全体を完成へと導いている気がする。
ともすればテーラードジャケットについて語るとき「着丈」とか「ゴージ位置」とか「肩線の傾斜」とか部分的な要素だけが独り歩きして、まるでそれ(だけ)がジャケット全体のイメージを決定づけてしまうかのように断じられている局面を見かけるときがある。
勿論、ディテールの集積が全体を作り上げることはある。
しかし、ディテールの集積だけで全体を作り上げることはできない。
僕は(基本的に)着丈が短いジャケットが嫌いだ。しかし、展示会でこの着丈が短いジャケットを見た時には「カッコいい」と素直に思えた。それは松下さんの「卓越した全体感覚」とそれを表現するために必要不可欠な「ディテールの集積」がセットになって僕の中に入ってきたからだと思う。
下掛けのダブルブレストも、ノーベントも、前下がりも「伊達じゃない」。
ディテールに執着しすぎることで全体感がおろそかになってしまった単焦点な洋服を見るたびにそう思う。そして、最も重要な点は「ディテールは写真に写るけど、全体感は写真に写らない」ということ。
生地・パターン・デザインの全てを熟知した上で、ファッション界において独自のスタンスを確立してきた松下さんの底力を再確認させられるようなジャケットだと思う。
是非、お店で試してほしい。抜群にカッコいいジャケットだからこそ。
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鶴田 啓
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