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ととのわない



男は黙って背中で語る?

年齢なりの貫禄がついてきたのかどうなのか。いまだにそんな自信はありません。
鶴田です。



背中だけじゃなく、横向き姿でも語る洋服が入荷しました。


“ O’DEM ”
– antonio EX –
COLOR : GRAY
¥66,000 – (tax included )



O’DEMから届いた 「antonio EX」はコンパクトなボディにデカ襟が付いたシャツ。スラックスやスーツに使われるようなザラっとしたウール素材。70’sスタイルらしいバランスとウエスタンシャツモチーフらしいアーチ状のヨーク使い。脚付きのフラットシェルボタン。



型、背中、脇腹、カフスに至るまで随所にダイヤ型のパッチワークが施されている。薄いウール地だが、さすがにパッチワークの継ぎ目には厚みが出るのか、ボコボコとしたパッカリングがフラットになりがちなウールシャツに不自然な立体感を与えている。そう、このシャツの特徴は「不自然さ」。これがデニム素材のパッチワークシャツであれば、ある意味すんなりと受け入れられるけれど…。

要するに、デザインと素材使いが合っていないのだ。


“ O’DEM ”
– raven EX –
COLOR : GRAY
¥77,000 – (tax included )



同じシリーズのパンツ「raven EX」。こちらはサイドラインの位置にダイヤ型のパッチワークが仕込んである。結果として、サイドポケットは省かれている。



ノープリーツ仕様、ミニマルなフロントスタイル。また、腰回りは極力カーブを削り取ったパターンになっているので、サイドの膨らみは少なくピッタリとタイトなフィッティング。全体的には緩やかなフレアシルエット。

上下セットアップでゆうとに着てもらった。



いつになくミニマルで大人っぽく見えるゆうと。

しかし、繊細な素材使いとワイルドな切り替えデザインがミスマッチのギャップを生み出しているのか、どことなく一筋縄ではいかない感じがする。

大人っぽい、ではなく「そもそも大人」な鶴田も着てみることに。



スーツ地のような素材使いを生かして、ジャケットみたいに羽織ってみた。



ぴったりとフィットしたヒップライン。それとは対照的に、気忙しく波打つサイドのパッチワーク。

繰り返しになるが、要するにデザインと素材使いが合っていないのだ。



30年前に比べ、日本のファッション業界は抜群に賢くなった。ともすれば綺麗にコンパクトに「整った」洋服が多く、それはそれで「洗練」という言葉に集約することもできるのだが。

例えばCLASSの様に、キャリアや生産背景を確固たるものに積み重ねた上で更に僕らの意表を突いてくるブランドもある。堀切さんから提示される違和感には、時に老獪さすら見え隠れしている。30年以上もの間、常に時代や顧客の裏をかき続けてきた圧倒的な経験値ゆえの、意識的な脱・洗練。

しかし、O’DEMやRANDYやSADEから感じられる「整わなさ」は、それとも違う。もっと無邪気で、もっとローファイで、もっとナチュラルだ。世の中のファッションがスーパーフラットになればなるほど、こういったブランドがぷるんと生み出すアイテムは僕らの感覚が一方向に流れて過ぎていくのをいい感じに引き留めてくれる。

あれっ?世の中にはこんな洋服もあるんだ。って感じに。



もしかすると、このシャツとパンツは普通にデニムで作ればもっと自然で、もっと整ったものに仕上げることが出来たのかもしれない。しかし、こうなった。

たぶん、こんな洋服を作る人は底抜けにファッションが好きなのだろう。退屈と戦い続けるために、わざわざこの「整わなさ」を選んだのだから。

そして、こんな洋服があるからこそ、僕らもまた予定調和を抜け出して再びファッションの世界に飛び込むことができるのだ。





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鶴田 啓

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