オリバーというパンツ
スウェットパンツが好き。
先日、河上もそう言っていましたが、僕もスウェットパンツが好きです。
こんにちは、鶴田です。
NICENESSからリリースされたニット地のスウェットパンツ、OLIVER。
ニット?スウェット?
1970年代のスウェットパンツがベースになっているけれど、肉厚でビンテージライクなガッシリとした生地、コットンニット特有の「落ち感」が柔らかいドレープを生み出す。製造工程で削り落とされる「落綿」を使い、粗びきに紡績されたオリジナルのTOP糸。
僕が初めてスウェットパンツをファッションアイテムとして着た頃、こんなに上等なアイテムは世界中のどこを探してもなかった(と思う)。
中学生時代、実家の前にある公園で3on3をやっていたけれど、その時に僕が穿いていたのがリバースウィーブのスウェットショーツ、杢グレー。チャンピオンは14歳の僕にとって、超一流のブランドだった。その後は、大学一年生の頃住んでいた日吉駅前にある古着屋で買ったラッセルの黄色いカレッジスウェットパンツ、20代前半にはトリコタグの赤いリバースウィーブを穿いていた。この頃に僕はスウェットパンツにジャケットを合わせる、みたいなことを初めて実践した気がする。30代になると、MARNIやCLASSなどのファッションブランドが作るスウェットパンツを日常使いするようになった。僕にとってスウェットパンツはジーンズと同じくらい定番的なアイテムで、この30年の間に最もオーセンティックなものから変形・変態なものまで順を追って体験してきたけれど、それでも正直、このOLIVERにはちょっとビックリしている。
滅茶苦茶いいじゃん、って。
柔らかいニット地の伸び止めとしてポケット口にはテープが貼ってあったり、腰部分のワンポイントNロゴ(トリコロールカラー)は職人の手刺繍で立体的に作られていたり、随所に気が利いたディテールが散りばめてある。
…んだけど。
カジュアルシャツやニットに合わせてラフに着こなしても。
ジャケットやドレスシャツに合わせてクリーンに着こなしても。
少年時代の僕がカッコいいと思っていたオーセンティックなスウェットパンツの良さがきちんと感じられる。一方で、様々なスウェットパンツを穿いてきた大人の僕を感動させる力もしっかりと兼ね備えている。
先日紹介したモデル・JOSEPHもそうだったけど、感性でものを見る若者と経験でものを見抜く大人の両方に支持されて、気づいたらファイヤーマンデニムトラウザーズは店頭から無くなっていた。(と、僕は簡単な言葉で書いてしまっているけれど)このバランス感覚をクリエイションで実現できているブランドは、実はほとんど無いと思う。
ものに寄り過ぎたビジョンで延々とこねくり回した理屈を聞きもしない人にまで説法して回る求道者を気取るわけでも、アヴァンギャルド原理主義者として誰も寄り付かない陸の孤島で独りよがりながら暮らすわけでもなく。14歳の僕と44歳の僕が同時に良いと思うバランス感覚を、NICENESSはこのスウェットパンツ一本で見事に成就させている。
だからこそ、キャラも好みも異なるMANHOLEの三人がいざ自由に着こなしてみた時に嘘くささがまるでない。20代前半の若者が着こなした場合も同様だ。
ニット地のスウェットパンツってなんだよ?
スウェットパンツ型のニットパンツなんじゃないの?
そもそもスウェットってさ…。
的な玄人かぶれの揚げ足取りが虚しく空を切ってしまうくらい、要はこのパンツが最高だということを僕は言いたいだけなんですけどね。
もちろん、古着のスウェットパンツもいい。変態デザインのスウェットパンツもいい。しかし、「他者と比べてどうこう」というよりもOLIVERはOLIVERとしてだけ、そこに存在するような純度で僕らに新しい感覚を与えてくれる。
鶴田 啓
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