物語のように
最近SNSをぼーっと見ていると、パリファッションウィークの様子が視界に飛び込んでくる。そういえば、4年前に行った冬のパリ。寒さにやられて風邪を引き、ホテルの部屋でひとりガタガタと震えていたことを思い出したりして。
こんにちは、鶴田です。
ヨーロッパの冬は寒い。
(僕の渡航歴の中で言えば)ロンドンやヘルシンキも当たり前のように寒いんだけど、やはり冬のパリは寒かった。特にクリニャンクールの蚤の市など、パリの繁華街からちょっと北上したあたりは容赦なく寒く、僕はその日に風邪を引いた。底冷えするというのか、いまも思い出すのは日本とは違うあの寒さ。
そして、個人的には冬のパリよりも更に寒く感じた都市、ベルリン。





FRANK LEDERから届いた毛羽毛羽のヘリンボーンツイードジャケット。ざらりとしたドライタッチのウール生地はチェコのシュレジェン地方の(既に閉鎖された)織物工房で手織りされたものらしい。プラハの仕立て屋が保管していたこの希少なヴィンテージファブリックを見つけたフランクが今回のコレクションに使用している。
誕生から数十年の時を経て、シュレジェン~プラハ~ベルリンと旅してきたこの生地の由来を聞くだけで、それはいかにもヨーロッパ的な浪漫を感じさせてくれる。
襟を立ててチンストラップを留めればマフラー要らずになる首周りのディテールや、風が吹き込んでこないように袖口を絞るための二つ並べられたボタン。ヨーロッパの厳しい冬を想像させる乗馬由来の男服は実にフランクらしいクリエイションだと思う。




僕も河上もいつも通りな感じで着てみた。
(※最近シャツ+タイにハマっている河上)



旅芸人の一座にいそうな感じの鶴田。
オーストリアあたりでダイヤモンド売買でもやってそうな感じの河上。
いずれにしても、日本を飛び出して、遠いどこかへイメージを飛ばしてくれるこのジャケットにはFRANK LEDERの物語が詰まっている。なんてことをいうと、実在感のない架空の人物が出来上がるような気がするけれど、そうではない。



僕と河上は、ずいぶんと昔からフランクが紡ぎ出す(どこか御伽噺めいた)物語に触れてきた人間だ。あるいは、ふたりともロマンチストなのかもしれない。しかし、僕らは、MANHOLEのお客さんは、FRANK LEDERを着るすべての人々は、実生活の中を生きている。

最近シャツ+タイにハマっているいる河上。
彼自身の現在の趣向が素直に反映された今日の河上は、7年前の河上ではない。その変化こそが実生活の証でもある。彼が何かを考え、感じながら生きているという証。

“ FRANK LEDER ”
VINTAGE CZECH WOOL 2B JACKET
COLOR : Herringbone Brown
¥151,800- ( Tax Included )
ハードシェルもヒートテックも存在しなかったその時代、ヨーロッパの雨風や厳しい寒さから体を守るためにチェコのシュレジェン地方で織られた毛羽毛羽のツイード。遠く離れたその地点から、様々な物語の洗礼を受けて僕らの手元に届いたこのジャケット。その物語を実生活に手渡すためにMANHOLEという洋服屋が存在する。目の前にいるお客さんに洋服を渡す瞬間、物語は現実のものとなる。それこそが現段階での僕らの実生活でもある。
そして、例えば20年後。むかし外苑前にMANHOLEというお店があったことを、人が語り始める。新たな物語の誕生である。それは、実生活の積み重ね、人が実際に生きた痕跡。

15年以上前、僕は初めて訪れたベルリンで突然の雹(ひょう)に降られた。バラバラとコートの上で跳ね返る氷の粒。その時に着ていた黒いコートはFRANK LEDER 2004秋冬コレクションのものだった。ヨーロッパの寒さは厳しい。その厳しさを体験した僕が2022年の青山でFRANK LEDERの洋服を売っている。
僕の実生活としての「冬の寒さ」や「ベルリン」や「FRANK LEDER」の中だけにある物語。
あなたの実生活としての「冬の寒さ」や「東京・青山」や「FRANK LEDER」の中だけにある物語。
どれだけ空想を飛ばし、物語に没入しようとも、着地点は必ず同じ場所。いま自分が生きる場所。物語の中で僕らが生きるのではない。僕らが生きる中に物語があるだけだ。
鶴田 啓
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