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軽やかなジャケット


僕はジャケットが好きだ。
いろんな形のものを着てきたし、いろんな形のものを(ずいぶん減らしたとはいえ)今も所有している。
そして今、MANHOLEの店内には滅茶苦茶カッコいいジャケットがある。

こんにちは、鶴田です。


“ CLASS ”
– CCCA08 UNI A –
( Check Norfolk Jacket )
¥176,000- (Tax Included )



ごらんよ、このカッコよさ。どう見てもカッコいい。

今シーズンのCLASSでは幾つかのテーラードジャケットがリリースされているが、このモデルは半年前の展示会でもとりわけ印象に残るモデルだった。かなり厚めに肩パッドを入れた四角いショルダーライン、4つボタンシングルの浅いVゾーン、短めの着丈、いくつかのパーツに切り替えられた胸や背面、そして裾がスクエアにカットされたフロント。ざらりとした素材はウール×ポリエステル。



よく見ると腰回りにはスリットが切られていて、そこから自分が好きなベルトを通すことができるようになっている(写真のベルトはバックルが二つ付いたNICENESSのもの)。



広い肩幅、ベルトで絞られたウエスト。男らしい逆三角形のバックスタイル。

いわゆる「ノーフォークスタイル」のジャケット。古典的なノーフォークジャケットには縦横に共布のベルトが付いたものや、背中にアクションプリーツが入ったものなど、よりこってりとしたディテール満載のタイプもあるが、CLASSのこれはベルトを通す穴や切り替えもさりげなく控えめにあしらわれている。そもそもベルテッドのジャケットは軍服や狩猟服などに見られる、より激しい動きやタフな環境下で着ることを想定された機能デザイン。

堀切さんは、そういった機能由来のディテールに意味を持たせないことで純・ファッション的なデザインに昇華させる。このジャケットは、(僕が想像するに)構築的なパワーショルダーをより強調するためにデザインされたのかもしれないし、そうではないかもしれない。

結果として、いま僕の目の前にあるジャケットそのものが抜群にカッコいいわけだから、もはやどちらでもいいのだけれど。



ベルトを使わずにリラックスしたムードで着る河上。ニットポロやコーデュロイの5ポケットを合わせてノンシャランな感じ。



ベルトで絞ると、一気にムードが変わる。



ベルトで絞り上げたうしろ姿が男っぽい、働く河上。



グレーフランネルのパンツにモヘアソックスを合わせて、いつもより少しだけ可愛い感じの鶴田、とか自分で言うなよ。



でも、やっぱり可愛い感じがする。44歳なのに。まぁ、それはそれか。

ともかく、ノーフォークモチーフのジャケットだからと言って、ルールやヒストリーに楽しみ方を縛られる必要はない。無理矢理に男っぽくある必要もないし、逆にそれをかたくなに拒む理由もないと思う。



ノーフォークジャケットとは、19世紀ごろに英国のノーフォーク公なる人物が着ていたことが名前の由来だとする説がある。ノーフォーク公に限らず、洋服ってルーツが個人名に由来するアイテム/ディテールが多い。ラグラン男爵もドルマン将軍も、まさか自分の名前が袖の付け方の呼び名になるとは思っていなかっただろう。



ちなみに、この生地。細かい千鳥格子の中にリフレクター糸が織り込まれているので、暗闇でライトを浴びると光を反射して光る。そんな機能性はほとんど必要ないはずなのに、なぜこんなことを。

ノーフォーク公も、まさか自分由来のジャケットが夜道で車のライトを反射する洋服になるなんて思ってもみなかったはずだ。



僕のクローゼットにはノーフォークタイプのジャケットが幾つか入っている。しかし、そのジャケットとCLASSのこのジャケットは全くの別物。それはノーフォーク公がこのジャケットと無関係であることと同じように。「カードゲームに興じながら片手で食べられるようにパンにおかずを挟んだサンドイッチ伯爵」と同じくらい、現在の食べ方とは関係ないのだ。

クラシックなアイテムをモチーフにしつつも、そこに新たなオリジナリティを吹き込んだCLASSのデザインを踏まえれば、このジャケットは着る人が自分自身の名のもとに楽しめばいい。

純・ファッション的であるということは、やはり、どこかで歴史の重たさからの軽やかさを必要としている。

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鶴田 啓

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