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チャーミングマン



まだ暑い頃にしれっと届いて、いつの間にかしれっと店頭から姿を消そうとしているFRANK LEDERのアイテムたち。コートもジャケットも軒並み無くなってしまった。なんだか、ここ最近のコレクションは人気がある。

実際に、展示会で見た時からいい感じだもんなー。調子いいみたい、フランク。

という、ひとり言から始めてみました。こんにちは、鶴田です。



「THICK VINTAGE LODEN」と品名にあるシングル4つボタン、スタンドカラーのショート丈ジャケット。「THICK(=厚い)」なローデンクロスを使った同素材のコートはあっという間になくなり、このジャケットも残すところ店頭分の1着のみ。


“FRANK LEDER”
– THICK VINTAGE LODEN JACKET –
color : LODEN BROWN
¥107,800- ( tax included )



ローデンクロスと言えば、いわゆるローデングリーンのローデンコートが数年前からヴィンテージショップでも取り沙汰されていたけれど、フランクが作るこれは典型的なそれらとは一味違う正体不明のいい感じ。たまに見かける現地のおみやげ物みたいな(ぐわぐわに圧縮されたHOFER的なニットジャケットではなく)ローデンクロス製チロリアンジャケットのようで可愛い。



くりくりと光る大きなボタンのせいか、まるで子供服のような愛嬌もある。原型はミリタリー由来なのかもしれないけれど、どことなく可愛い。スタンドカラーを倒せば、控えめなラペルが出来上がる、そのVゾーンの狭さがいい感じ。身頃も袖も裏地無しのそっけない作り。

ゴワゴワの強そうな生地で可愛い服を作る。実はこれ、初期FRANK LEDERの特徴でもあった。「可愛い」で語弊があるならば「チャーミング」と言い換えてもいい。最近、フランクは再びチャーミングな洋服を作るようになったと思う。



僕が思うに、FRANK LEDERが作るアイテムはドイツの不良少年・不良中年が着るロマンチックな洋服なんだけど、不良の人たちには不思議とチャーミングな魅力がある。世の中の流れとか、時代の趨勢とかそういうものに対してどこか不器用で、うまく対応できない。そのズレ、変な感じ、どこか憎めないナチュラルシュート回転みたいな世界観を、初期のFRANK LEDERはうまく描いていたと思う。それは映画でいうところのアキ・カウリスマキであり、ハル・ハートリーであり、ヴィム・ヴェンダースである。



だから、こんなに強そうなローデンクロスから繊細なレースがチラリと覗いたりしても大丈夫なんだと思う。「合う」とか「合わない」とかじゃなく「あっていい」し「いてほしい」感じ。ちなみに、173㎝の河上でLサイズを着用しているが、サイズ感も大した問題じゃない気がする。



最近では「ヌケ感」みたいな言葉を利用して「二枚目半~三枚目キャラ」をテクニカルに演出する優等生ブランドが増えてきたけれど、FRANK LEDERは違う。たぶんナチュラルにツイストしてる。

ちなみに、ここで僕が言う「不良」とは、英語でいうところの「gang」とか「bad boy(girl)」的なニュアンスではなく、「消化不良」とか「血行不良」とか「天候不良」とかそういった文脈で使われる語感の方に近い。素行が悪いわけではなく、質や状態が良くないさま。

フランクが度々テーマに取り上げてきた木こりも吟遊詩人も詐欺師も囚人も盲人も、何かに反発して、意思を持ってその状態になったわけではない。いつのまにか、気づいたらそうだった。そんな感じだろう。つまり「悪い」わけではなく「良からず(不)」の状態。そしてここで問題なのは、そもそも「良い」の状態を規定したのはいったい誰なのか、ということ。どこの誰にとって、何が「良い」?

狡猾な優等生とナチュラルな不良。

この構図はいまや世界のベーシックであるかのように思えるけれど、とはいえまだまだ捨てたもんじゃない。MANHOLEに集まってくれるお客さんたちの顔を見ていると、そう思える瞬間がある。みんな、他人が決めた「良い」からナチュラルに逸脱している。みんな、楽しそうな顔をしている。



いまのこの時代にフランクが作る洋服が一定の人たちに選ばれる理由はなんとなく分かる気がする。FRANK LEDERが作る洋服は「みんなにとって良いもの」というわけではないけれど「僕らにとって良いもの」という感じがする。その「僕ら」が一体何を指しているのか、なんてことは分からない。けれども、僕や河上はFRANK LEDERの展示会で「みんなに売れそうなアイテム」をピックアップするのではなく(例えば、このジャケットのように)「自分自身とって良いもの」を選ぶようにしている。

もしも、それが世間一般では「良からず(不)」の洋服だったとしても、それは悪いことではない。「不良=悪い、ではない」という感覚は、自分自身が世界の「良」と必ずしも一致しなくても良い、という勇気をくれる。

そして、他人が決めた「良い人間」よりも、むしろ「チャーミングな人間」でありたいと思う。



そういえば。SADEのPT09は全て完売いたしました。
お問い合わせいただいた皆さま、ご対応出来ず申し訳ございませんでした。

言うまでもなく、なんでもかんでも早く売れたら良いというわけではありませんが、この企画に関しては時間をかけて築き上げてきたものであると同時に「MANHOLE」という聞いたことのない店と「SADE」という聞いたことのないブランドが作った「税込で6万円くらいするフレアードトラウザーズ」という、字面だけ見ると全く受け入れられなさそうな物を受け入れてくださった皆様に感謝いたします。


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