続・派手なパンツ
昨日の河上に続いて、今日も派手なパンツを紹介しようと思います。
こんにちは、鶴田です。
いや、でも、ていうか、河上が紹介したベージュのパンツは言われてみれば確かに派手かもしれないけれど、パッと見はそんなに派手ではなかったぞ。お前、ほんとに今日こそは見るからに派手なパンツを紹介してくれるんだろうな、と訝しく思う「全国派手パンツ愛好会」の皆様、お待たせいたしました。
今日は、ちゃんと派手です。絶対。
ほら。
2プリーツウールパンツの裾にゴム?というかエラスティックのテープが付いている。昔のトレーニング用ジャージにも付いている、アレ。しかもネオンカラーのオレンジ?ピンク?これはもう、しっかり派手でしょ?裾のカットには前後6㎝の段差まである。
ブルーがかったライトグレーのフランネルは、以前に河上が紹介していたジャケットと共生地。そう、これはrenomaのアイテム。つまり、堀切さんのアイデア。
今シーズンのrenomaは90年代前半までのパリ的なキッチュデザイン、カラーリングがキーになっていると思う。ライトグレーにネオンカラーなんて正にそんなところ。上品とか下品とかを超えて、もう、パッと見で「可愛い」って感じ。
キッチュなゴム付きパンツに英国の渋ニットやゴツ靴を合わせた河上。
裾にあしらわれたゴムはスリングバックやミュール、サボなどかかと無しの靴に合わせれば、足で踏みつぶすだけ。靴やニットの男くさい質感の中で、ネオンカラーが可愛く刺さる。
薄パープルのモヘア、ふわふわで可愛いロングニットとコーディネートすればそのまんま、ストレートに可愛い。ブルーがかったライトグレー、大活躍。カラーソックスとゴムテープのコンビネーションは色彩感覚の見せ所。いろいろと楽しめそうだ。
ヒールカップのあるシューズに合わせる場合、めんどくさければゴムテープはそのまま靴の外に放り出しておけばいい。裾の段差、ゴムテープ、配色。すべてが、きっちりと派手なパンツしてる。
ローファーなど、履き口が広いシューズであればゴムを踏みつぶしたままで足を滑り込ませるだけ。
スウェットシャツ+ローファーの怠け者スタイルに、ゴム付きパンツ。白っぽいモノトーンスタイルにもネオンカラーが刺さりまくり。一見すると、このパンツの最もアイキャッチなポイントは裾のゴム、ゴムの発色、裾のカット。
しかし。
僕がこのパンツの中で最も「派手」だと思うポイント。それはシルエット。
2プリーツのテーパードシルエットに加えて、前後差のせいでクロップドになっている短丈パンツ。街を見渡してみたときに意外といないのが、このバランス。サイズ48で裾幅19㎝、ソックス丸見えの短丈。一昔前のスーツ系セレクトショップ店員みたいなバランス。
イタリア系のトラウザーズ専業ブランドでも、最近ではめっきり少なくなったこの形。代わりに台頭してきたのはテーパードがキツくないストレート(一部、フレアなど)、ワイドはすっかり当たり前、とにかくここしばらくの間パンツの裾幅は広がり始めてきた。
上下セットアップで着てみると分かる。ボクシーな3つボタンジャケットにテーパードパンツ。90年代前半のムードが漂うシルエット。
個人的にも、先シーズンくらいからこのフォルムが新鮮に思えてきたので、古着で買った某ブランドのスーツをよく着ていたところだった。クラシコイタリアの隆盛よりも少し前、90年代を代表するイタリア人デザイナーが作り上げた当時のバランス、裾幅19㎝。2022年時点に見ると、このパンツのシルエットはとても派手なものに思える。
実際、現在のMANHOLEの店頭に、このパンツに似たシルエットのものは並んでいない。
何が派手で、何が地味なのか。それは感覚的なもののように思われがちだが、実は相対的なもの。「赤は黒よりも派手」と言い切ることがある程度できるように、たしかに「華やかさ」「鮮やかさ」という要素が関係することもある。しかし、実際には「目立つ」「目立たない」という視点で人は見る場合が多い。 ブルーデニム+白Tの集団に混じれば、全身黒づくめは最も派手な人となる。
高名な写真家の作品をプリントしただけの白シャツ。
色をバイカラーに切り替えただけのカットソー。
インパクトが強い柄の生地を使っただけのジャケット。
世の中には「簡単に派手になれるファッション」というものが、残念ながら多数存在する。
仮にネオンカラーのゴムや裾のカットを取り払ってしまったとしても、このパンツにはしっかりと「派手さ」が残ると思う。それは生地のニュアンスであり、最近ではシルエットであり、時代との距離感である。
堀切さんはパッと見のアイキャッチだけではない視点で、タイミングを見ながら、時代との距離感を測りながらアイテムをデザインしているのだと思う。おそらく、グレー無地のパンツを作ってもその距離感は変わらないだろう。
「派手」という言葉の感じ方は人それぞれだろうが、昨日、河上が紹介していた(一見地味な)パンツも含め、僕らはエキセントリックな洋服だけを売りたいわけではない。「簡単には時代に迎合しないよ」という態度を含めて、ファッションをお客さんと楽しみたいと思っている。
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