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他人のブレザー




ブレザー(英:Blazer)。

スポーツ部の制服、或いは乗馬用の軍服を起源とするメンズ服の定番として、幾度となくリバイバルを繰り返している、もっともベーシックなジャケットのひとつ。日本では1980年代ごろに学校の制服として広く取り入れられたらしく、いまや「メンズ服」と限定的に語るのも憚られるほど世間一般にまで浸透していると思う。いずれにしても、ブレザーの起源は英国にある。

僕が所有するブレザーの中で最も本格的なのものが、10年前に英国のビスポークテーラーであつらえたもの。頑丈さ、重厚さ、正当性、いかなる角度から見ても(この場合は軍服由来の)超本格派である。その分、堅苦しい、重たい。もちろん、そこが持ち味でもあるのだが。



“僕が英国の仕立屋で誂えたブレザーに比べると、 renomaのブレザー「VERNEUIL」 はむしろ軽快な印象だ。モーリス・レノマが活躍した1960年代という時代は、メンズ服が既成概念を飛び越えて解放された時代。自由なデザインも自由なコーディネートも自由なTPOも、この時代に花開いた。だからこそ、このブレザーを前にして、僕らは1960年代の着方に縛られてはいけない。60’sも関係ない。パリも関係ない。セルジュ・ゲンズブールも関係ない。”

これは昨春のブログで僕が書いた一節である。

8か月後のいま読み直しても、やはり同じことを思う。


” renoma ” – VERNEUIL –
COLOR : NAVY
SIZE : 44/46/48/50
¥132,000-(tax included)


renomaのブレザー「VERNEUIL」が再び入荷した。

このブレザーについては前回の入荷時(2022年2月末)にも散々とあれこれ書いてきたので、今更クドクドと説明することはないのだが。念のため、ディテールを振り返っておこう。



スリム&ロングなシルエット、長めの着丈と高いシェイプ位置、肩線まで届こうかという大ぶりなワイドピークドラペル、フラットなシルバーメタルボタン、背骨の位置まで深く切られたセンターベント、モヘア混でザラッとした微光沢の英国生地。

ほんの数行でまとめることができるこれらのディテール。

冒頭で僕が着ていた英国製の一着と比べると、あらゆる点で違いがあることは写真レベルで見ても何となく伝わると思う。(生地のウェイトや各所の寸法など)数値的な違いはここに列挙しても意味が無いので割愛するが、「何となくの雰囲気で伝わるほどに」、英国製のブレザーとrenomaの「VERNEUIL」とでは纏っているムードが違う。そして、このブレザーが持つオリジナリティを探ると、そこにはモーリス・レノマというデザイナーの存在がある。



ブレザーを取り換えただけでも、全体のイメージが劇的に変わる。英国製のものにはないスラっとしたフォルム。remomaブランド黎明期(1960’s~)の時代感が濃密に反映されているかのようだ。モーリス・レノマというレジェンダリーデザイナーに敬意を表するかたちで、堀切氏が丁寧にデザインしたのだろう。勿論、僕らは「VERNEUIL」を当時のムードのままに着こなす必要などない(堀切さんもきっとそう思っている)が、伝説的なブランドの世界観を再解釈・再構築するデザイナーにとっては、やはり創始者の名前を避けて通ることができない。



renomaの展示会の度、堀切さんが僕らに見せてくれる膨大な資料。歴史の断片を繋ぎ合わせるように、当時のストーリーに想いを馳せるところから始まるリブランディングという作業。このサジ加減にこそ、それを任される人間のセンスや編集力が表れる。自身の名前を冠したCLASSと同時進行で、他人の名前を冠したrenomaのコレクションをデザインすることは思っている以上にセンシティブな作業だろう。



例えば、河上。MANHOLE企画のニットポロの上から「VERNEUIL」を羽織っただけで、そこには何とも言えない洒脱なムードが流れる。適当に、無頓着に、いわゆるノンシャランなドレスアップ感覚はrenomaの洋服の真骨頂だろう。モーリス・レノマが何十年も前に作り上げたこの空気感をエッセンシャルに抽出し、現代の洋服として再び構築する。堀切さんが手掛けるrenomaが、単なる焼き直しに陥ることなく本質を伝えているのは、その抽出のS精度が異常に高いからだと思う。



一方で、僕らが手掛けるLeonardやGaryのアイテム群。これは、ドレスシャツやテーラードジャケットを僕らの今の気分に合わせて企画しているため、自分たちの中にある穴を深々と覗き込む行為だとも言える。



堀切さんにとってのrenomaと、僕らにとってのGary。それぞれが本格的なテーラードアイテムでありながら、それぞれが生み出されるまでの過程は全く違う。他人の名前と、自分の名前。どちらの名前に対して、より大きく責任を持たなければならないのか。そこに優劣はないし、そんなことはどうでもいい。 だからこそ、MANHOLEにはそれぞれのテーラードアイテムが並んでいる。堀切さんがモーリス・レノマのルーツを掘り下げたジャケット、自分たちの現在を自分たち自身で掘り下げたジャケット。そして、それらを受けて止めてくれるお客さんという、更なる他人の存在。

こういった意思の伝搬こそが、まだまだファッションを面白くしてくれると僕らは信じている。



他人という存在の中にこそ、自分でもまだ気づいていない自分自身が含まれていたりするのだから。堀切さんもそういった感覚でrenomaの服作りを楽しんでいるのではないだろうか。

僕らが作ったGaryのジャケット、堀切さんが作ったrenomaのジャケット、他のデザイナーが作った各ブランドのジャケット。すべてのアイテム。そのどれもが、MANHOLEの店内でまだ見ぬあなたの来訪を待っている。それは自己完結の先にある風景。 他人の感性に身を委ね、自分自身を存分に楽しんでほしい。



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鶴田 啓

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