カッコよくて楽しいグローブ
MANHOLEで新たに取り扱いを始めるアイテムが、またひとつ。それはレザー製のグローブ。
ネクタイやドレスシャツもそうだったけど、お店として新しいアイテムにチャレンジするときは良い意味でドキドキする。単品としてだけでなく、他のアイテムとの組み合わせを含めると可能性が大きく広がるような気がするから。
こんにちは、鶴田です。
それにしても、革の手袋を着けた人って、あまり見かけない。
防寒性よりも操作性を重視する時代、つまりいつでも携帯電話を触っている現代人にとっては、手袋自体がそれほど便利なものではないのかもしれない。
そう考えると、ネクタイも同様だ。ネクタイを締めていないと出かけられない場所なんて(会社も含めて)ほとんど残っていないし、ジャケット自体を着なくなっているのだからコーディネート的にもあまり必要とされていない。
しかし。
MAHHOLEのお客さんたちは違った。ネクタイもドレスシャツも自分達らしく受け入れて、存分に楽しんでくれている。むしろ、その新しいチャレンジを求めている感じすらある。さらに、MANHOLEに今まで足を運んだことがなかったお客さんたちも、僕たちが売っているジャケットやネクタイに興味を持って覗きに来てくれるようになった。
つまり。
必要とされているのはアイテムではなく、楽しみそのもの。みんな、楽しみを求めている。だとしたら。
必要とされているのはアイテムではなく、楽しみそのもの。みんな、楽しみを求めている。だとしたら。僕らは、まず、冬の寒さから手先を守ってくれる防寒アイテムとしてではなく、カッコよく楽しめるファッションアイテムとしてレザーグローブを取り扱うことにした。
そこで思い当たったのがCAUSSE GANTIER。1892年創業の老舗で、有名メゾンブランドの製品も手掛けるMade in Franceのグローブメーカー。良質な素材を立体裁断・縫製することで美しさと着けやすさを兼ね備えている。
なんていうと、いかにもブランドプロフィールっぽいけれど。簡単に言うと僕が実際にCAUSSE GANTIERのレザーグローブを使っていたことが仕入れの主な理由。もちろん、今も抜群に気に入っている。
自分が実際に使ってみて、質が良くて楽しくてカッコいいものをお客さんに紹介する。それはバイイングの基本でもある。お客さんに買ってもらえるかどうかはいろんな意味でドキドキの二の次にやってくる。
僕がCAUSSE GANTIERのグローブを気に入っているポイントは主にふたつ。
ひとつ、カッコいい。
ふたつ、楽しい。
そう、楽しくてカッコいいのだ。
今回、MANHOLEで仕入れたのは同ブランドの中で最もプレーンなモデル「 Oscar 」。これは、僕が実際に愛用していたものと同じモデル。しなやかでスムースなシープスキン素材、手の甲のステッチも控えめ。過剰なハンドステッチアピールも無く、実にフランスものらしいシュッとした素っ気ない顔立ち。
イギリスやイタリアの高級グローブを前職時代に取り扱ってきたが、僕はそれらがイマイチ好きになれなかった。最高峰の名品とされているペッカリー素材を使った某・英国メーカーのものだって、迫力があるのは分かるけど全然いいと思えずにいた。そんな中で手に入れたCAUSSEの「 Oscar 」は自分が思い描いていたレザーグローブのイメージにピッタリだった。
クオリティはもちろん大事だが、まずはパッと見で洒落ているもの。それが僕のイメージだったので、今回MANHOLEで仕入れたものは一気にコーディネートを楽しくしてくれるカラーレザーのものを中心に選んだ。鮮やかなブルーのIndigo、燃えるレッドのPicasso、グレー味がある繊細なグリーンのDark Olive、深いダークブラウンのChocolate。シリアスなブラックをあえて外し、メンズではなかなかお目にかかれないような色をピックアップした。これも、レザーグローブの楽しさを追求した結果。
本格的な作りであるにも関わらず、それを前面に押し出すことのない端正な表情。絶妙な発色。Dark Oliveだけドットボタンをゴールドで配している繊細さも良い。色の名前に「Picasso=レッド」と付けるあたりもフランス的でウィットに富んでいる。
もうひとつ、重要なポイント。それはライニングが薄手のシルクだということ。カシミアのニット地をライニングに使ったものはシルクのそれに比べて防寒性では優れているが、着用時の見た目にそれなりに厚みが出るのだ。僕はレザーグローブの肝はピチッとタイトな着用感・ルックスだと思っているので、アンライニング、もしくはシルクライニングのものを好む。隆々としたボリュームのペッカリーグローブを好まない理由もそこにある。
楽しそうにしている人の周りには人が集まってくる。それはファッションに限ったことではないが、ファッションに関してはより顕著にそのテンションが伝わるだろう。初めて挑戦するアイテムならば、なおさら楽しんでいる人から買いたい。僕はそう思う。なによりも、このカラフルなレザーグローブそのものが楽しそうな顔をしていると思う。
機能性の高さや社会的な必要性を軽々と飛び越えて、僕らの行動を牽引してくれるアイテムとはそういうものだ。このグローブを着けている間はスマホ操作を止めて、冬の散歩道を存分に楽しんでみたくなる。カッコよく、楽しく、どこまででも歩いて行けそうな気がする。黄色や赤に色づいた紅葉の並木が歩く僕らの姿を出迎えてくれたら、それって最高じゃないか。
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鶴田 啓
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