金と銀
明らかに迫力のある素材、二種。
刺し盛(お刺身の盛り合わせ)でいえば、中トロと鯛。洋食でいえば、ビーフシチューとグラタン。ニットでいえば、ベビーキャメルとナチュラルアルパカ。
こんにちは、鶴田です。
いや、刺し盛でいえば、アワビとヒラメかな…。
1930年代のカデットカーディガンをベースにしたニット。ハンドフレームによる力強いリブ編みとは対照的に、ちょこんと付けられた小さな片側ポケットがとてもチャーミング。
黒無地のニットだけれど、襟や肩周りの編地が大きく波打ちながら立体感を生み出している、迫力。
染色した黒ではなくブラックアルパカの原毛色なので、どことなく茶色味を帯びた黒(というか、黒っぽい茶色?)がニットに一層深い表情を与えている。
フランネルパンツやツイードタイに合わせてアルパカカーディガンを羽織った河上。
コンパクトなボディ、テール部分がツンと上に跳ねるくらい短い着丈。
ウールのタンクトップに合わせたリラックスモードの河上。インナーのドレープに対してアルパカのダイナミックな存在感が際立っている。そして、窓際で自然光が当たると「茶色っぽい黒」がよく分かる。
同型のカーディガン、こちらはベビーキャメル素材。繊維が短く紡績難易度が高いキャメルの原毛を手間のかかる梳毛仕上げにしたもの。アルパカに比べると、少しもっちりとした感じがするボリューム。それでもモッサリとした感じに見え過ぎないのは、梳毛のキャメルならでは。
首元にあるボタンをループで止めると、さらにVゾーンが狭くなり襟が高くなる。タートルネックと同じくらいまで襟が高くなるので、防寒性も完璧になる。まるでアウターのようなカーディガン。
スーツの上から、カデットカーディガン。ドラマチックなストライプスーツが、おおらかなキャメルのボリュームに包まれて変化する。
ジャケットを脱ぎ、ニットポロの上から直接カデットカーディガン。よりスポーティーでリラックスした印象、しかしジャケットを着ているような重厚感。
服地に使われる動物性の素材といえば勿論、ウール(=毛)。しかし、一口に「毛」といっても、それは羊から刈り取った「羊毛」と羊以外の動物から刈り取った「獣毛」とに大別される。クリンプと呼ばれる縮れた繊維が集まってできている羊毛に対して、獣毛にはクリンプがほとんどない。繊維がまっすぐであるゆえに、獣毛には独特のスムースな手触りがある。 獣毛素材の王様と言えば、もちろんカシミア。高級を突き詰めるとビキューナなどもそのひとつに挙げられる。
獣毛素材代表の「カシミア」に比べ、同じ獣毛素材の中でも少しエキゾチックな印象になる「キャメル」と「アルパカ」。勿論、どちらも高級・希少素材であることに変わりはないのだが、「なめらか、かるい、やわらか」なカシミアとも一味違う、より野性味が溢れるワイルドな質感。何よりも、着ると両肩にずしりと乗っかってくるような重量感。このニットの魅力のひとつは、この重さにあると思う。
「ラグジュアリー」=「軽い」という平面的な価値観に対して、真っ向から挑戦する「SILVER」&「GOLD」。
「王将」的存在のカシミアにはならないけれど、その独特の動き方で人を虜にする「銀」と「金」。アルパカとキャメルに独自のツイストを加えて、単純な高級路線とはまた別の次元まで引き上げたNICENESSのクリエイションには「ラグジュアリー」という平面的な言葉よりも「服心」という立体的な愛情を感じる。
ずっしりと重たいカデットカーディガン。このニットには「重たくて温かい」という、まるでヴィンテージウェアのような、ごくオーセンティックな洋服の魅力がみっちりと詰まっている。懐かしくて新しい、なんて言葉は今さら使いたくないけれど。
様々なニットを体験してきた人にこそ、選んでほしいと思う。きっと、びっくりするはず。この質感。
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鶴田 啓
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