この生地、とてもかっこいいですね〜
「牧さん、この生地とてもかっこいいですね〜」という僕の言葉から始まった本企画。
この生地でMANHOLE用に何か作ってもらいたい。
作ってもらいたいと言うのは簡単だけど、実際に「何を作ってもらおうかなあ」と考えていたところ。
まず、僕の頭の中に浮かんだイメージはこの色のこの生地をかっこよく身にまとう女性でした。
そのイメージを形にするならば大判のストール、大きいサイズ感のプルオーバーカットソーでも良かったんですが、そういったざっくりアイテムはあまりにもMANHOLEのお客さんに馴染むのが容易に想像ができるせいか、面白くなさそう。
というわけで改めて「かっこよく、身にまとう、女性」という地点に戻ってみて、決まりました。
そうだ、ジャケットを作ってもらおう。女の人がかっこよく着てそうなジャケットコート。
今日の丸っこいぼんやりした印象のイージージャケットもお腹いっぱい。それはULTERIORじゃなくてもMANHOLEじゃなくても作ることができる。
なので、最低でも着地点がそこにならないよう肩がコンケーブした60年代のフランス製ネイビーブレザーと肩パッド入りの80年代のドメスティックブランド製ツイードコートを牧さんに預け、紆余曲折色々経て完成したのが今回のWool silk tweed coat。
2つ釦のダブルブレスト、アウターらしい立ち襟にするためにゴージラインは低く、ワイドラペルになりました。こういった部分はベースにしたツイードのハーフコートのディテール。
肩傾斜の小さいショルダーライン、長い着丈、緩やかなシェイプ、端を叩いた3つのパッチポケットはベースにしたコンケーブショルダーのネイビーブレザーのディテール。
襟を立てるとアウター、更に生地もスポーティなので腰のポケットはフラップをつけることにしました。
全体的にくさいディテールの連続、ベントをつけるとあまりにも古臭くなりすぎてしまう気がしたのでノーベントです。
サンプル作成後1,2ヶ月紆余曲折した結果、サンプルがこの形に決まった際に鶴田さんが付属を決めてくれました。
「最近全く見かけない、七宝釦はどうだろう?合いそうだけど」
すぐに牧さんに連絡し、牧さんが釦屋さんに問い合わせしたところ「七宝釦、30〜40年くらい流行ってないから当時の在庫があるにはあるし、コストをかければ作ることができる」とのことでした。
が、釦を一から作ってしまうと釦の存在感が目立ってしまいそうなので我慢。
釦は主役じゃない。付属は素っ気なく見えるくらいが好みです。
と、いうわけで鶴田さんに当時の在庫から七宝調の釦をピックアップしてもらいました。
これでジャケットはある程度完成、最後にポケットの大きさと高さを整えて完成。
完成して一言、なんか女の人がかっこよく着てそうですね。
「河上くん、結構生地があるからジャケットをたくさん作るか、他の洋服も作るかを考えておいてください」
そう牧さんから連絡を受けてから、うんうん唸っていたところ鶴田さんが一言。
「ショーツがいいんじゃない?みんなフルレングスのウールイージーパンツはもう持ってそうだし河上もいらなそうだけど、冬に穿くショーツはあまり持ってないんじゃないかな」
確かに今年の冬はショーツやスカートのレイヤードを各ブランドのインラインのもので紹介する予定だったので、良いかもしれない。全部コケたら冬のショーツに対して僕らがトラウマを抱えるだけ、それはそれで清々しいから試しにやってみよう。
と、いうわけで春夏用に作ったショーツをベースにして秋冬版に改良したのが本モデル:Wool silk tweed shorts。
レイヤード前提だし、フロントは釦とジップで開けるようにした方が穿きやすいだろうな、というわけでその点を変更。
素人考えで「仕様変更のみで春夏企画そのままのパターンでいけるんじゃないかな」とか思っていたのですが結果的にそうはならずパタンナーさんが改めてパターンを引いてくれました。
いつも穿いているパンツの上から。
冬だと寒いデニム、冬だと寒いジャージなど、冬だと寒い系パンツの上から重ねてみてはいかがでしょうか。
発案が今年の2月。
最終的に話がこのセットアップにまとまったのが今年の10月。
納品されたのが11月下旬。
僕の仕事が遅いせいで結構時間がかかってしまったけど、時間とアイデアをかけた分だけかっこよくなりました。
「かっこよく、身にまとう、女性」なんていうぼんやりとしたイメージから具体的に形にするまで根気強く付き合ってくれたULTERIORの牧さん、鶴田さん、ありがとうございます。
サイズ感、こんな感じです。わかりづらいな。着てみると結構違います。
ショーツはフリーサイズ。
最後まで商品名をジャケットにするかコートにするか悩んだけど、最近たくさんジャケットを紹介しているので、これは自分たちの中でコートということにしました。
見た目以上に中はゆったり、ジャケットの上から無理なく羽織れるのでちゃんと「コート」と呼べる代物です。
20代前半、かつて物によってはXSサイズでも大きかったFRANK LEDERのツイードジャケットをアウター代わりに着ていた僕にとってツイーディなジャケットはアウター感覚。
中に温かいものを着て首元をマフラーで暖めれば東京の冬くらいであればなんとかなるのではないでしょうか。
ジャケットでもいいし、コートでもいいです。サイズ次第、お好きにどうぞ。
ジャケットはもうみたまんま格好が良いのですが、穿くと面白いのが組下のショーツ。
組上のジャケットを「シリアスになりすぎない、コスプレにならないバランス」にする為に企画しただけあって、良い仕事をしてくれます。
秋冬シーズンに発売されたショーツは隣で中台が楽しそうにレイヤードしています。
柔らかなニット地のスウェットパンツの上に穿いたデニムショーツのコーディネートを見たせいでしょうか、いろんなパンツの上からショーツを穿いているお客さんも増えてきました。
ドキドキしながら仕入れたスカートも拍子抜けするくらいすんなりとお客さんは受け入れてくれました。おかげさまで真冬のショーツに余計なトラウマを抱えずに、素直に好きになれそうです。
既に飽きているパンツ、気に入って穿いているパンツ、どれに合わせても自分を新しい気持ちにしてくれるのではないでしょうか。
(仮に)この世に新しい形の洋服が生まれることがないならば、僕らは今日より明日、少しずつ頭を柔らかくして既にあるものを工夫しながら楽しんでいきたい。
興味があるはずのに何故か取り入れてこなかったもの、何故か興味すら湧かなかったもの、思い返すとたくさんありませんか。
僕らは、そういうものがたくさんあります。知らないもの、忘れているものだってたくさんある。
それが自分たちの中から消えない限り、洋服はいつだって僕らの楽しい遊び道具でいてくれる気がするのです。
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