まぼろし
幻の素材?
衣服や革小物に限らず、料理や家具の分野でも割と頻繁に耳に飛び込んでくるキラーワード。それほど遠くない未来、例えばコードヴァンなんかも同じような謳い文句で語られるのだろうな。
こんにちは、鶴田です。
1973年、約200年ぶりに引き上げられたイングランドの沈没船・メッタカタリーナ号の船内からは大量のロシアンカーフが見つかったらしい。幻とされていた、その珍奇な革の発見。引き上げられた200年前の革は、状態の良いものだけを塩抜きして再加工、ごく限られた好事家たちの靴やベルト、鞄などに形を変えて旅立っていったのだろう。ちょっと調べるだけで、ロシアンカーフに関するエピソードはいくらでも出てくる。詳しく知りたい方は調べてみてください。
と。そんな浪漫あふれる逸話や、この革の出処や製法は一旦さておいて(実際に、僕も河上もこの素材について堀切さんに何一つ尋ねなかった)。
問題は、CLASSが希少なロシアンカーフを使って作ったのが「肩当て」だってこと。
いつもの感じの格好に、ロシアンカーフの肩当てをオン。
ラムスキンのグローブ、スエードの英国靴、ロシアンカーフの肩当て。もう、これだけで楽しい。僕がたまに行く立ち食い寿司屋で頼む「まぐろ三貫(赤身、中トロ、大トロ)」を思い出してしまう、ブラウンレザーの競演。
他の革小物と色を合わせても合わせなくても「質感が絶対的に違う」というだけで、別次元のコーディネートになる。しかも、肩当てだし。
中台は「クラブでモテそうかなと思って買った」ボアブルゾンの上にロシアンカーフ。これまた、楽しそう。絶対に訊かれるって。「え?それ、肩当て?革?やばー」とか。
肩当てなのに、スナップボタンで脱着可能な「肩」。えっと、肩当てから肩を外したら「当て」になるんでしたっけ?いや、「脱臼」になるのかな。
ともかく、「肩」を外すと「肩幅」が無くなるので、厚手の上着の上からでも「当て」を重ねて付けることができるようになる。
あ、わかった、これ「胸当て」だ。
背面もカッコいいね。
きのう河上が紹介していた別注4色のフェイクレザーと合わせて、肩当て五種。
こうでなきゃいけない、という決まりは当たり前のように存在しない。そりゃそうだ。どんなマニュアル本にも載っていない「肩当ての上手な着こなし方」。
肩すらも取り外せる肩当て、とか。
自由な拘束感、とか。
ロシアンカーフは希少だけど肩当ての方がよっぽど少ない、とか。
ちぐはぐなバランス。ナンセンス。
趣味で聴く音楽に機能性がほとんど無いように、この肩当てにも機能性はほとんど無い。
しかし、役に立たないものにしかできないことがある。
沈没船から引き揚げられたロシアンカーフの話を聞いて、200年という月日が奏でるロマンチックな音色に想いを馳せるような動物は人間しかいない。
そして、いまこのブログを読んで「ロシアンカーフは知らないけれど、肩当て、ちょっと楽しそうかも」と思っているあなたも、もれなく「大いなる無駄」に惹かれ始めているのだろう。防寒性も防御力も社会的なステイタスも、なにひとつ上げてくれないこの不思議な衣服の魅力に。
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鶴田 啓
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