夏のフランク
ドイツ人デザイナーのフランク・リーダー。彼が紡ぎあげる物語に登場する人々は皆、ハード系のパンをかじる木こり、牢獄の中で鎖に繋がれた囚人、酒場の酔いに乗じてカードゲーム詐欺をはたらくチーター…そんなんばかりだと思っている人いませんか?
はい、僕です。僕でした、鶴田です。
確かに、シーズンによっては草花を愛する男や吟遊詩人が登場したりして、若干の爽やかさを感じることはあったけれど、それでも全体的には哲学的で重々しい「ドイツ」のイメージ。そういえば、ドイツってどう考えても「山」のイメージが強い。北上すれば海や湖はあるんだろうけれど、避暑地といえば南仏やイタリアにイメージを引っ張られてしまう夏のヨーロッパ。

「夏」「水辺」「避暑地」みたいなイメージとは程遠く、「カント」「ヘーゲル」「ショーペンハウアー」みたいに難解で重々しい哲学者みたいなイメージのフランク・リーダー像を描きながら20年前にこのブランドと出会った僕の中では、なおさらそういった固定概念があった。
のも、今は昔。
夏にはきちんと夏らしいアイテムをリリースしてくれるようになったFRANK LEDERから、爽やかで夏らしいスキッパーとイージーパンツが届いた。


初夏の街路樹を抜けて、歩く街並みにもぴったりの爽快感。


ザラリとしたコットン生地は、織り柄の凹凸感が接地面を少なくしてくれるのか抜群に涼を感じさせてくれる肌触り。上下で着ると結構インパクトがある柄だけど、気になる人はセパレートでコーディネートすればいい。「どのようにコーディネートしたらいいか」なんて説明の必要がないくらい普通に着用できるはずなので、今日の鶴田はあえてセットアップでの登場で通すことにした。一応、上にベストをレイヤードして暑苦しくなりすぎない初夏のコーディネートで。

いつも自分では積極的にはやらない、裾のロールアップ&一枚革のスリッポンに素足をイン。それくらい爽快に着こなしてみたい、FRANK LEDERの夏アイテム。


春夏シーズンでもごわごわの分厚い生地や重厚で力強い形ばかりをリリースしていた初期のFRANK LEDERからは想像もつかないくらい「きちんと夏らしい」アイテムを彼が作るようになったのはいつからだろうか?
それまでドイツやロンドンを拠点にしていたフランク・リーダーは2003年ごろから日本での展開が増え始め、たびたび来日するようになる。朝晩の気温差や湿度差があるヨーロッパに比べ、圧倒的に蒸し暑く、亜熱帯気候に近づき始めたころの日本で夏を過ごすたびに思ったことだろう。
これは、暑い。と。
それはフランクがアジアの都市と出会った瞬間だったのかもしれない。

“ FRANK LEDER ”
– STRIPED SKIPPER WITH SCARF –
¥75,900- (tax included)
– STRIPED COTTON EASY PANTS –
¥65,900- (tax included)
スキッパーには、以前に「布切れ」として紹介した共生地のスカーフが付属している。

ファンタジックな物語の世界から抜け出して、他者を発見する。そのたびに、人は変化する。それはデザイナーであろうとアーティストであろうと、ミュージシャンであろうと例外なく変化する。その変化を通じて、自分の中にある自分を発見する。

涼しさを意識したスキッパーに対してもスカーフが付属すること。開放的なコットン素材に規則的なレジメンタルストライプを選ぶこと。彼の中には今なお、古典的なドイツとそれを取り巻く物語が存在する。ただ、その物語を内側から覗くのか、外側から眺めるのか、その視点が変化したということだろう。
この20年。フランク・リーダーは変化したようでいて、実は何一つ変わっていない。

暑い夏は嫌だけれど、涼しいだけではロマンがない。
そんなひねくれた僕らにとって、フランク・リーダーが作る初夏の服はとてもしっくりとくる。そして、それは遠く離れたドイツに住む彼が僕らを発見してくれたという喜びとともに。
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鶴田 啓
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