ボートネック(仮)
前回のブログでは深VネックのTシャツを紹介しました。
そして、今日のブログではまたもやTシャツのネックについて書きます。MANHOLEの『首』担当・鶴田です。
横方向に一直線。
首、なのか?これは。
そもそも、どちらが前なのか後ろなのかも分からない。
パクっと開いてみると、タグらしきものが見えて「あぁ、こちらが前(後ろ)なのか」と判別できる。厳密に言うと違うんだろうけれど、他の呼び名が思いつかないのでいったん今日のところは似寄りのディテールと同じ扱いで「ボートネック」ということにしておこう。
のっぺりと平坦なネックラインも、実際に体を入れてみると横方向に開いて「ボートネック」っぽくなる。
バスクシャツや漁師用のガンジー諸島セーターにみられる「ボートネック」と違うのは、一番鋭くネックが開く部分に縦方向のリブを当てて四角く塞いでいるところ。
スクエアなボートネック?と呼んでいいのか、まぁ呼び名なんてこの際なんだっていいんだけど、でも首元の印象が劇的に変わるのことには違いない。
柔らかなコットン鹿の子素材なので肌触りもドライで心地よい。色は4色展開。下から順に「KAHKI」「WHITE」「ORANGE」「GREEN」。
ン、「GREEN」?
僕にはターコイズ系のブルーに見える色だが、SADEのタグには「GREEN」と書いてある。その下の「ORANGE」も人によってはピンクに見えるかもしれないが、そんなレベルを超えてこの「GREEN」はほとんどの人にとって青だと思う。
むかし、「限りなく透明に近いブルー」って小説があったけれど、あれは一応「ブルー」であって「透明」ではない。この色は「ものすごくブルーっぽいけれどSADEとしては『GREEN』」という色。もはや、どっちでもいい。
同じネックラインのロングスリーブバージョンも店頭に並んでいる。
しつこいようだけど、「バスクシャツや漁師用のガンジー諸島セーターにみられる『ボートネック』と違うのは、一番鋭くネックが開く部分に縦方向のリブを当てて四角く塞いでいるところ」。
スクエアネックのようなボートネック。
柔らかなコットン鹿の子素材なので肌触りもドライで心地よい。色は4色展開。下から順に「KAHKI」「WHITE」「ORANGE」「GREEN」
ン、「GREEN」?
僕にはターコイズ系のブルーに見える色だが、SADEのタグには「GREEN」…、いや、もういいか。やめておこう。
なぜ、こんなことになってしまったのだろう。
それは、僕がいまブログを書いているから。伝えたいと思っているから。だから、いったんは呼び名が必要になる。それがネックラインの形状だとしても、色だとしても。固有の名詞や修飾語を探している。
そうそう、さっき少しだけ書いたようにバスクシャツやガンジーセーターのネックラインが「前後ろに区別がないボートネック」状になっているのは、夜中や夜明けの暗い船上でその洋服を着るときに「どちらが前でどちらが後ろなのか」を気にしなくてもいいようにできているからだ。という風に、大昔に先輩から教えてもらった。どちらも前であり、どちらも後ろだということ。サッと手に取って、頭からかぶるだけ。
それが本当かどうかは、分からない。なぜなら僕は暗い海の上でトップスを着脱したりはしないからだ。
このカットソー。海に着ていくのも気持ちいいとは思うが、大半の人は陸上で(そして都会で)着ることになると思う。
そして、いったん袖を通してしまえば、このカットソーが涼しいことに気づくし、肌触りが心地よいことに気づくし、きれいな色が都会で映えることに気づく。
ここでいま僕がブログを書いている状態というのは、実はまだ船に乗り海へ出る前の状態だということになる。だからこそ、ボートネックなのかスクエアネックなのか、ブルーなのかグリーンなのか、ということを問題にしなければならないし、固有名詞や修飾語を駆使して人に伝えなければならなくなる。
しかし、実際に街へ出てこのカットソーを着るときに僕らの口をついて出る言葉は「綺麗な色ですね」「涼しそうな首回りですね」というそれぞれの感覚に根差した感想に過ぎない。誰かに対して「ボートネック」や「グリーン」の定義について話す必要がまったくないのだ。
同じように、暗闇の中で手探りで洋服をつかみ取り「前後ろを気にしないで洋服を着る」という行為の中で一体だれが「ボートネック」という単語など発するだろうか。街でもいい。海でもいい。山でもいい。夏でもいい。冬でもいい。その瞬間に自然と湧き上がってくる感覚は、名前を超えて、機能を超えて、言葉を超えていくだろう。
じゃあ、最初から言葉で説明しようとするなよ。と言われれば確かにそうなんだけど、それは仕方がないのである。船上の漁師が魚の話をするのと同じように、僕らは洋服の話をする。その色が「GREEN」なのか「BLUE」なのかということ自体は話の主題ではないが、この洋服が「どのような色に見えるのか」ということや「このネックラインをどのように着たら涼やかか」については、やはりお客さんと一緒になって話したいと思う。
つまり、ディテールの機能性や呼び名はあくまでも脇役であり、ファッションの主役は「気持ちい」「カッコいい」「楽しい」であるということ。SADEから届いた不思議なカットソー、長袖のCS-10、半袖のCS-11。
厳密に言うと違うんだろうけれど、他の呼び名が思いつかないのでいったん今日のところは似寄りのディテールと同じ扱いで「ボートネック」ということにしておこう。 このネックの形状が機能を発揮するのは船上ではない。それは街の中であり、もっと言うならば、僕らがお客さんに洋服を渡すときに自然発生するコミュニケーションの中にこそ存在する。
だって楽しいもんね、あーだこーだ言いながら買い物するのって。結局のところ。
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