ジャケ買い
若い頃、本屋とかレコード屋とかに行くと特に目的のものがなくても何かしら買って帰りたくて、内容を確かめもせずに洋書やCDをレジカウンターに持っていくという時期がありました。それはサブスクや試し読みがなかった時代。
という導入を読むだけで、僕が誰なのか分かりますね。こんにちは昭和生まれの鶴田です。
未開封の洋書や視聴コーナーにセットしていないCDの場合、頼りになるのはジャケット。勿論、手書きポップなどを読んで想像を膨らませる部分もありましたが、そうでない場合は本の表紙やアルバムのジャケットから内容の良し悪しを判断、想像、つまりジャケ買いというやつです。
BLESSから届いたトートバッグ。商品名のとおり、ゴブラン織りのテキスタイルを大胆にあしらったデザイン。女性向けモード雑誌の表紙がコラージュされ、織り柄で立体的に表現してある。
ふつうはクラシックで重厚なタペストリーに使われるゴブラン織りの手法も、キッチュな色使いでマガジンの表紙になるだけで、いい意味の軽薄さ(?)が炸裂。おかげさまで街角に似合う、都市型デザインに早変わり。
縦40㎝×横33㎝の本体、(身長や腕の長さにもよるけれど)手提げにしてもギリギリ地面に着かない、計算されているんだかされていないんだか分からないストラップの絶妙な長さ。
男性的なクラシックスタイルのトラウザーズ&レザーシューズに、浮かれ華やかなモード誌のヴィジュアルが逆張りのマッチング。いいね。
肩掛けにもできるストラップの絶妙な長さ。やっぱり、計算してるよね?これは。
ピンク色のリップがヴィンテージデニムを軽やかにブラッシュアップ。
ジャケット&ショーツスタイルにぶらりと。マチ無しのぺたんこなバッグがテーラードアイテムの立体感を相殺して、いい感じ。フォトプリントでは軽すぎる、草花柄だと重厚すぎる。BLESSらしいユーモアのバランスが「モード雑誌柄のゴブラン織り」という絶妙なポイントに着地した、このバッグ。
ぱっと見では平面的、近づいてみると立体的。ルックスは可愛いのに、作りは意外と本格的。
思えば、本やレコードをジャケ買いするときも、実際に読んでみて聴いてみて「買ってよかった」と喜べる瞬間はこういったギャップの中にこそあった気がする。
MANHOLEに複数点入荷してきたこのバッグ。広げてみると、生地の取り方で柄の出方に個体差がある。こういうアイテムこそ、じっくり見比べて好みの個体を選ぶよりもジャケ買い的に直感で手に取り持ち帰るに限ると思う。
まるで何かのキャンペーン広告ポスターが道端にばら撒かれているような猥雑さ。しかし実はこのトートバッグ、しっかりフランス製だったりして。それはつまり、ゴブラン織りのルーツにしっかりと迫っているということ。こういうところからもBLESSというブランドの態度を感じ取ることができる。
荷物が少ないときは、真ん中から二つ折りにしてしまえば小脇に抱えられるサイズに。薄っぺらい縦長バッグがフレキシブルに稼働する瞬間。このテキトーささえも、モード雑誌ヴィジュアルの対極にあるギャップのひとつ。
ちょっと洒落た洋服を着込んで出かけるときだけでなく、部屋着のスウェット姿でコンビニへ買い出しに行くときのお供としても、お気軽にどうぞ。「モード」という堅苦しい概念を知的ユーモアでもって実生活に変換する。BLESSの他のアイテムにも通底する哲学が、40㎝×33㎝サイズの中に詰まっている。
それはジャケ買いの先に待ち受けている中身のひとつ。
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鶴田 啓
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