夕焼けとジップ
中台と山崎君はアメリカから届いた荷物を検品中、ニューヨークで買い付けてきた古着を店頭に並べる準備に勤しんでいます。皆様と同様、僕も楽しみにしています。
お久しぶりの、鶴田です。
ということで、今日はSADEから届いた盛夏アイテムをご紹介。暑い暑いと言っていても始まらないので、ご機嫌な半袖シャツを見ながら気分だけでも爽やかに。ゆうとに着てもらいました。
襟無しで、Tシャツのような四角いボディ。布帛を縫い合わせて作られてはいるけれど、シャツのカッチリ感はほとんど感じられない気軽なプルオーバー。ただ、カットソーのようなドレープは出ないので、着ると意外にシャキッとした印象。光沢があるドビー織の生地が、どことなくドレッシーなムード。
直線的なネックラインからそのまま水平に伸びる肩線、首元には四角いスライダーのジップ。あらゆるディテールがスクエアに徹している。
風通しの良いこのシャツを着て、ゆうともご満悦の様子。
新人の、ぜんのこうし君にも着てもらった。
涼しいスクエアシャツの中に、涼しいレース素材を重ねて。
スクエアだらけの中にあって、ドロップしたショルダーラインだけが控えめな曲線を描いている。
曲線と立体感を重視するテーラードジャケットの中にスクエアシャツを仕込んでみると、首元や裾に直線の重なりが生まれるので、とっても新鮮。
同型の生地違いも二人に着てもらった。
水平線のような横縞模様に、オレンジ×イエローの配色。夕焼けを乱反射する波のようにも見える、ポリエステル×シルクの面白い生地。僕は勝手に、映画「エンドレスサマー」(1966)を思い出した。SADEのデザイナー・影山さんはサーファーなので、あながち的外れでもなかったりして。
ゆうとの夏もまだまだエンドレス、終わりそうもにないね。
ぜんのこうし君には横縞と縦縞を組み合わせて着てもらった。カリフォルニアとニューヨークが一緒にやってきたかのようで、個人的にもなかなかお気に入りの組み合わせ。
組み合わせついでに、ジップネック×シャツ襟にもチャレンジ。以前に紹介したノースリーブシャツをレイヤードしてみた。共生地だから合うのは当たり前ってわけでもなく、突如、首元に出現するミニVゾーンが楽しい。
ぷかぷかと浮いた裾周りも涼しげ。
ちょっと透け感のある薄い生地。ホリゾンタルストライプが斜めに傾く、ヨーク部分のバイアス取り。部分的によくよく見ていくと、色んなことを計算しながらしっかりとデザインしてあるのが分かるけれど、全体としてはなぜだかすっきりさっぱりとした印象に思える。違和感の隣にまた別の違和感をそっと添えているようなデザイン。
直線的で四角いデザインは、ともすれば無機質で冷たいイメージで語られがちだ。しかし、SADEの面白いところは、「冷たさの中にどこか有機的なイメージを潜ませている」点、つまりそれはデザイナーの人間性が感じられるということ。僕がこのシャツを見て「エンドレスサマー」を想起したように、SADEが作る洋服からは、どこかに影山さんというデザイナーの実在を感じることができるということ。
デザイナー本人がどんな人間であるかを直接的には知らなくても、想像を膨らませることができるということ。同素材を使ったノースリーブシャツと同様に、このスクエアシャツからはSADEというデザイナーズブランドの作家性を確かに感じ取ることができる。
僕は別にノスタルジーに囚われたアンチAI思想の持ち主ではないのだけれど、こういった人間的デザインは僕にとって好ましいファッションのうちのひとつであることは間違いない。
河上はSADEのクリエイションを「良くも悪くもエゴイスティックに、デザイナーが好きなものを作る姿勢」と評していたけれど、僕もそうだと思う。ChatGPTで小説が書ける時代なので、いずれはAIがエゴや作家性を獲得する時代もやってくるのだろうけれど、僕らはまだもう少しだけ、SADEやCLASSやNICENESSやFRANK LEDERたちのエゴと作家性に振り回されていたい。
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鶴田 啓
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