優しい遮光
一時期よりも湿度がやや軽くなったとはいえ、相変わらず夏の日差しが強いですね。日中はサングラスがないと目を開けていられないくらい眩しいです。僕はたまに「瞳の色が茶色いね」と他人から言われるので、もしかすると眩しさに弱いのでしょうか?
残暑お見舞い申し上げます、鶴田です。
SADEから届いた涼やかなシャツ。クラシックなオフ白っぽい色目、前立ても胸ポケットもないプレーンなフロントスタイル、ロングポイントレギュラーカラー、そして長い着丈。
襟のアウトサイドは逆Rのなまめかしい曲線でグラマラスに彩られている。コバステッチがない袋縫いの襟はミニマルな印象だけど、なぜか肉体性を感じさせる。フランク・ゲーリー建築みたい。
長い着丈に深いサイドスリット。裾に向かってなんとなく広がっていくフレアドシルエット。
そして、シースルー。ウール80%・シルク20%でシャリ感のある素材は、まるでシフォン調ボイル生地なんかでよく作られるインテリアのレースカーテンみたい。光の通し方が柔らかい。
勿論、風の通し方も柔らかい。シースルーシャツの上から陶芸柄のタンクトップを重ねた、ゆうと。
カラードパイソンのポーチ、陶芸柄のタンクトップ、横向きに畝が走る親子コールの古着パンツ。光も風も透過するレースカーテンのように控えめに、しかし、メインとなる遮光カーテンの脇をしっかりと固めるように透明な存在感。
タンクトップのUネックとロングポイントカラーの相性。気持ちいい。
ゆうとに負けじと、鶴田も着てみる。
よりシャツっぽく上着のインナーに着ると、ジャケットの裾からロング丈がすらっとはみ出すアンバランス。腰穿きのバギーショーツで、より長く、低く、短く。
深いサイドスリットは、そのままパンツのポケットに手を突っ込める位置まで切れている。
カフタンシャツとはまた違った意味で、高貴で上品でクラシカルなムードのあるロングシャツ。しかし、コーディネート全体は必ずしも高貴でなくていい。
ここで、ふたたびゆうと。
シースルーのロングシャツをさらっと羽織って再登場。余分なレイヤードは無し、タンクトップの上から羽織っただけ。後ろ姿だけでもなんとなくインナーのアイテムが特定できそうな「見えそうで見えない、見えなさそうで見えている」感じ。
高貴で上品でクラシカルなムードのあるロングシャツ。しかし、コーディネート全体は必ずしも高貴でなくていい。 タンクトップ+イージーパンツ、という脱力コーディネートを半分は隠して、半分は見せてくれる。
光は取り込みたいけど、景色は見せなくていい。レースカーテンの役割がそうであるように、このシースルーロングシャツもまた、ゆるやかに外界とつながっているような感覚で着る人の身体を包んでくる。
見るからに軽そう、涼しそう。しかし、ウール×シルクの光沢感は高貴な色を放ち続けたままだ。
シースルーロングシャツの上から古着のシースルーシャツを重ねてみた。カーテンのレイヤーを通して、ゆるやかに、柔らかに、ぼんやりと、うっすらと、苺ミルクをかけられたかき氷のようなピンクが外界に優しく溶け出していく。
パンチング、メッシュ、レース、PVC…ファッションにおけるシースルー素材はいまや百花繚乱。どの素材にも、それぞれの特徴があり、良さがあり、楽しさがある。
しかしカーテンのように柔らかな光と風だけを透過するこのシャツは、それら素材の中で最も高貴で上品でクラシカルなムードを放っている。
昔のアニメ映画の有名キャッチコピーで「おちこんだりもしたけれど、わたしは元気です。」というものがあった。
「カーテンを開いて、静かな木漏れ日のやさしさに包まれたなら」
と歌われるテーマソング。今年の夏の暑さはひときわ厳しい。降り注ぐ強い日差しが通り過ぎるまでの間、だらしない恰好で自堕落に出歩くのもいい。レースカーテンのように高貴なシースルーシャツが、僕らの夏を優しく包み込んでくれる。柔らかな光と風に守られながら、僕らはまだ残りの夏を思う存分に楽しんでいける。
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鶴田 啓
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