軸足
服地の中で、僕が好きなもののひとつに「ウーステッドのチョークストライプ」があります。なんとなく、ずっと昔から好きな生地のひとつです。
なんか、大人っぽいじゃないですか。「イギリス!」「紳士服!」って感じがして。若いころからいつか着こなしてみたい服地の代表で、大人になった現在はクローゼットの中に「ウーステッドのチョークストライプ服」が何着もかかっています。
こんにちは、鶴田です。
とりわけ、ダークネイビーのチョークストライプ。ほとんど黒っぽくも見える、この濃色にチョーク線で白く引いたようなストライプは、もっとも強く「英国のメンズ服」を意識させる生地である。
m’s braqueのパンツはカッコいい。個人的にそう思うなかでも、フロントに力強いプリーツを2本も入れたハイウエストパンツは特にカッコいい。そして、ネイビーのチョークストライプ。ウールサージのざらっとしたドライタッチが、このスタイルのクラシシズムに拍車をかける。
がっちり体型の山崎君越しに見ても分かる、ズドンと迫力のあるシルエット。
装飾的な意味合いが強い浅めのなんちゃてプリーツではなく、洋服全体のボリュームにしっかりと作用するくらい正しく深さのある内向きプリーツが二本。
飾りじゃないのよ。
スポーツ古着でラフに合わせても、このパンツの迫力は健在。
ともすれば「古臭い」なんてイメージで語られてしまいがちな、この手のパンツ。それは「男性服が男性服らしく機能していた時代」の空気感を纏っているから。もしかすると、僕らのおじいちゃん世代が穿いていたパンツに近いのかもしれない。
今となっては「メンズ」とか「ウイメンズ」とか限定しない方が、ふんわりと軽くていいのかもしれないけれど、だからこそ僕はm’s braqueのこのパンツのことを「男性服」だと言い切ってしまいたい。
鶴田は古着のベストとレザーサンダルに合わせて、おじいちゃんパンツを穿いてみた。
エレガントなドレープを生み出す2プリーツ、腰回りをしっかりと包み込む深めの股上、背骨の位置まで登ってくるハイバックのウエストライン。そして「英国のメンズ服」を意識させる生地 =ダークネイビーのチョークストライプ。
イギリスでピーコック革命が起こるよりもずっと前、男性服が男性服らしくあった時代。日本の仕立て屋がお手本にするのは必ず英国服だった時代。1950年代までに僕らのおじいちゃんたちが過ごした時代はきっとそんな時代だったし、男性服は男性服でしかなかった。
そして、男性服が男性服らしくあってくれたからこそ、いま僕らはチョークストライプのパンツにメッシュTを合わせても花柄シャツを合わせても平気でいられるようになったんだと思う。
大学四年生のとき、僕が就職活動用に選んだスーツはY’sのものだった。実に山本耀司らしいクラシックで男性的なシルエットのスーツだった。生地はダークネイビーのチョークストライプだった。ビットモカシンで有名なイタリアのハイブランド・伊G社の会社説明会にそのスーツを着ていったら人事部長らしき人に「そういうの好きなんだね」と鼻で笑われた。でも、それでいいと思えた。ネイビーのチョークストライプスーツを着ていることで、僕は誇り高い気持ちのままでいられた。
エレガントなドレープを生み出す2プリーツ、腰回りをしっかりと包み込む深めの股上、背骨の位置まで登ってくるハイバックのウエストライン。そして「英国のメンズ服」を意識させる生地 =ダークネイビーのチョークストライプ。
男性服が男性服らしくあってくれたからこそ、いま僕らはチョークストライプのパンツにメッシュTを合わせても花柄シャツを合わせても平気でいられるようになったんだと思う。そしてm’s braqueのこのパンツは、そういうパンツだと思う。すなわち、本当の自由を獲得するための軸足になってくれるようなパンツ。
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鶴田 啓
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