107-0062
central aoyama #003
4-1-3 minami aoyama minato-ku,tokyo

W : manhole-store.com
M : info@manhole-store.com
T : +81 34283 8892

blog

はだか



「裸だ!裸だ!王様は、裸だ!」

これはアンデルセン童話の中でも、もっともよく知られる寓話のひとつ「裸の王様」のラストシーンです。皆さんもご存じですね?

こんにちは、鶴田です。



ある国に、新しい服が大好きな、おしゃれな皇帝がいた。ある日、城下町に二人組の男が、仕立て屋という触れ込みでやってきた。彼らは「自分の地位にふさわしくない者や、手におえない馬鹿者」の目には見えない、不思議な布地をつくることができるという。噂を聞いた皇帝は2人をお城に召し出して、大喜びで大金を払い、彼らに新しい衣装を注文した。
(『裸の王様』Wikipediaより)

「馬鹿者には見えない」とされる布地を「私には見えない」と言い出せない家臣の阿(おもね)りと皇帝本人の見栄とが連鎖した結果、皇帝は裸で民衆の前をパレードすることになる。大人の事情を鑑みず、目に見えた光景をそのまま叫んだ子供の発言によって、群衆たちは冒頭のセリフを次々に拡散しながら、真実は露呈。皇帝は炎上する。

それは「見栄やプライドが仇となり『見えないものを見える』と言ってしまった大人たちの愚かさや、ありのままを正直に意見する子供の純粋さ・正しさ」を教訓とする寓話、となっている。



「お母さん!あの人、男なのにスカート穿いてるよ!」「いいのよ、世の中にはそういう人もいるわよ」「そんなの、いないよ!僕のクラスには一人もいないよ、変なの!」

例えば、この場合「子供の純粋さ・正しさ」とは何を意味するのか。それは「『普通』という概念が大人たちによってのみ定義されており、その特定の環境下(つまり教育)で純粋培養された『普通』が子供の口を通して『男のくせにスカートを穿くなんて変だ』という形で発現する」ということ。つまり「子供が正しい」わけではなく、「子供は大人たちが作り上げた環境の写し鏡である」に過ぎない。

そういった意味で、インドやインドネシアなど伝統的な衣装としてスカートが存在する地では上記のような親子のやり取りは(日本に比べると)圧倒的に少ないだろう。



2023年秋冬、CLASSからリリースされたマキシ丈スカート。展示会に並んでいたインライン2種とは別に、堀切さんに選定を任せた6種類の生地を乗せたMANHOLE別注、合計8型。

ここ数シーズン続いていた「メンズスカート」の流れに対して、MANHOLEが(つまみ食いではなく)本気で取り組んだ企画。



そもそも布で体を包むだけの状態から始まったであろう人類の衣服に関して、「股」が誕生したのは、ずっと後の話。むしろ、衣服に初めて「股」を持ち込んだのはどのような人だったのだろうと考えてしまう。

「お母さん!あの人が着てる服、右脚と左脚が別々に分かれているよ!」



などと、そんな歴史(そもそも全ての衣服は布で体を包むだけのものであった)の話を持ち出してみたところで、現代に生きる「スカートを穿くことに抵抗がある男性の気持ち」を軽くすることなんてできないことは、僕も知っている。

問題は、「見えている」か「見えていないか」なのだと思う。

素晴らしい素材を使って贅沢に織られた、しかし(自分には)見えない生地。

今までに着たことがない形、しかし(自分にも)カッコいいと思える服。



1990年代後半から2000年代初頭にかけて、日本を代表する特有の文化にまで上り詰めた「ギャル」。彼女たちは(たとえそれが他人には見えない形であったとしても)堂々と自分たちにだけ分かる形で、独自の文化を形成した。

ミニスカートにルーズソックス、厚底ブーツ、ガングロメイク。

その最果てにあったのは「埴輪(はにわ)ルック」。つまり女子高生の特権であるミニ丈スカートの制服を何一つ失わないままで、ミニ丈スカートの下に学校指定のジャージをレイヤードした。他人(部外者)から見ると、その佇まいは謎(すなわち、はにわ)でしかなかったが、結果的に彼女たちはギャルのままで機能性(防寒性)を手にしたことになる。そこには「大人たちによって設定された大人の正しさに縛られない純粋さ・正直さ」があるような気がする。



歴史(そもそも全ての衣服は布で体を包むだけのものであった)の話を持ち出してみたところで、現代に生きる「スカートを穿くことに抵抗がある男性の気持ち」を軽くすることなんてできないことは、僕も知っている。

しかし、いま僕らの目の前にあるこのルック。CLASSのマキシ丈スカートを自信たっぷりに着こなした若者たちの姿が、もしも「見える」のだとしたら。

もはや僕らは裸ではない。



「王様は何も着ていらっしゃらない」と心の底で思いながらも忖度を重ねて沈黙を貫いた大人たち。その沈黙を破り「王様は裸だ!」と叫んだ子供。その途端、手のひらを返したかのように「そうだ、そうだ、王様は裸だ!」と追従する大人たち。

僕には「スカートを穿くことに抵抗がある男性の気持ち」を軽くすることなんてできない。説得するつもりもない。ただ、もし自分の目に「見える」ものがあるのだとしたら、迷わずそれを選んでほしいと願う。それだけだ。





※CLASSのマキシ丈スカート「CCDA11UNI」8型(別注6型含む)は2023年9月30日(土)発売予定です。同日、正午よりオンラインストアにも掲載いたします。

MANHOLE ONLINE STORE

MANHOLE official instagram

鶴田 啓

〒107-0062
東京都港区南青山4-1-3 セントラル青山003号室

M : info@manhole-store.com
T : 03 4283 8892