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秋、少しずつ



だいぶ遅くなりましたが、町を行く人たちの装いが少しずつ秋めいてきました。この前なんて、駅のホームで電車を待っているときに目の前にいた女性が中綿入りのファー付きフーデッドコートにロングブーツを履いていて「さすがにそれはちょっと早いだろ」と思いました。その日の気温は20℃台だったので。

秋、少しづつ始めていきたいですね。こんにちは、鶴田です。



洋服が好きな人は、分厚いアウターで一気にすべてを包み隠してしまうよりも、薄手~中肉のアイテムを少しずつ重ねながら秋~冬へのイントロダクションを楽しんでいる人が多いように思う。とはいえ、このスローな始まり方。今年の秋は特に寒くなるのが遅そう。

重ねられるアイテムの量には限界がある。着込み過ぎると暑いしね。



そこで登場するのがストールやスカーフといった「巻き物」たち。首元に布を重ねるという選択肢。

昨日、河上が紹介していたアスコットタイやスカーフはとっても「MANHOLEらしい」と思う。キザっぽ過ぎないし、大げさじゃないし、なによりあったか過ぎない(河上は無類の暑がり)。シルクの巻き物って、一歩間違うと「ドレスアップし過ぎてる感」が出てしまうけれど、このシリーズはコーディネートまで持ち込む以前にアイテム単品の段階で、そういったキザっぽさをクリアしてくれていると思う。

“MANHOLE”
– MINI ASCOT TIE –
COLOR : Brown Paisley / Green Flower
¥24,200- (tax included)



力強いペイズリー柄にはオレンジの裏地を、印象画のように繊細なタッチのフラワープリントにはミディアムグレーの裏地を。それぞれキャラクターの異なる表地(コットン/シルク)と裏地(シルク)で構成されたミニアスコットタイ、二種。



どれくらいミニなのかというと、全長100㎝、剣先幅13.5㎝。一般的なアスコットタイと比べると4~50㎝ほど短く、一般的なネクタイと比べると4~50㎝ほど短くて4㎝ほど太い。そんなサイズ。元々ネクタイがスカーフからの変異種だったこと、つまりスカーフが段々と細く短くコンパクトなっていった結果として僕らがいま見慣れているネクタイの形に収まっていることを考えると、このアスコットタイもやはり非常に現代的なサイズとして、都市生活を送る僕らにぴったりのスケールだということになる。

“MANHOLE”
– STAR PRINT SILK SCARF –
COLOR : BLACK
¥49,500- (tax included)



一方で、星柄のスカーフ。シルク100%。120㎝弱の正方形という大判サイズ。H社のカレに比べると一辺30㎝くらい大きい。



満点の星空。しかし、配列は細かくランダム。筆記体の赤い「MANHOLE」ロゴがとってもロマンチック。



タフなレザーライダースに引っかけるだけでサマになる。そんな使い方がちょうどいい。アメコミのようにポップな星型フォルムや白黒の配色が、大判シルクスカーフにありがちな「大げさ感」や「老舗メゾン感」の重たいハードルを軽やかに飛び越えて、街角へ駆け出していく。

今回のこの企画は「シルク素材の巻き物を、どうやってカッコつけ過ぎずに楽しむことができるか」というMANHOLEなりの視点で純化されたアイテムだからこそ、どのようなコーディネートに合わせても無駄が無いし、潔い。



結んでもコンパクトに収まる。ジャケットのVゾーンで首元に垂らすだけでも、サマになる。持て余さない。合わせるアイテムはオーバーサイズの古着でも、ショーツでも、スカートでも、レザーでも、何であってもかまわない。



どのようなコーディネートに合わせても無駄が無いし、潔い。

とは書いたものの、しかし翻って考えたときに「そもそも防寒のためでもないのに、首元に布を巻くという行為自体に無駄はないのか?」という疑問に、ふと行き当たる。ある。無駄はある。何か日々の装いを少しでも「楽しく」する、という思考は基本的に無駄である。だからこそ、このストールは潔いのだ。自分自身が「楽しく」装うという無駄な目的のために純化されたシルクの巻き物たち。

秋。

スポーツのそれ。芸術のそれ。食欲のそれ。

秋は「生まれて食べて寝て死ぬ」という最低限の行為からはみ出した無駄を楽しむための季節、それ。夏と冬の間にスカーフなんてものははっきり言って必要ないんだけど、だからこそ、秋、少しづつ始めていきたいですね。あなたの首元に大いなる無駄を、潔いサイズで。






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鶴田 啓

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