107-0062
central aoyama #003
4-1-3 minami aoyama minato-ku,tokyo

W : manhole-store.com
M : info@manhole-store.com
T : +81 34283 8892

blog

喧噪



仕事帰り、仕事の合間、あるいは仕事の前に(それはマズいだろ)、僕はふらっと居酒屋へ飲みに行きます。向かう場所はある程度限定的で、それは僕の行動半径の起点となる池袋駅近辺の小汚いお店です。そして、大概はひとりです。ひとりで居酒屋のカウンターに座るのが、僕は大好きです。

こんにちは、鶴田です。

” renoma “
– Champs-Élysées – [bias-cut B.D shirt]
Color:WHITE Size:46/48/50
¥59,400-(tax included)


そういった小汚い居酒屋のうちの二軒では僕が暖簾をくぐって着席すると、自動的にチューハイが運ばれてきます。それらのお店には今までに何百回も行きつけているだけあって、これはなかなかの成果です。食べるものだって大抵はいつも同じメニュー。つまり、余計なことに頭を使わなくていい、リラックスできる時間というわけ。ひとりだと飲み相手にも気を使わないし、黙っていられるし、楽。スマホすら触らずにボーっとジョッキを傾けては、ときおりおつまみに箸を伸ばします。あとは、見るともなく見ながら、聞くともなく聞きながら、店内の会話や動きに向けてゆるーいアンテナを一本だけ立てている状態。

あちこちから、色んな人の色んな会話が耳に飛び込んでくるのを、ラジオのチャンネルをザッピングするように聞いたり聞かなかったり、チューニングを合わせたり合わせなかったりしていく。映画を一本丸ごと鑑賞するわけではないから、別に途中で聞くのを止めてもいい内容の会話、会話、会話…。そして、それらの集積が作り上げるお店全体の雰囲気、ムード。いい感じ。



「このボタンダウンシャツ、襟ちっちゃいねぇ!あと全体のバランスがとってもコンパクト。まるで、わざと小さいサイズを着てるみたい」「マルナンコツ、お待たせしましたー」「おー、来た来た。これが美味いんだよ」「へぇー初めて食べるわ、マルナンコツ。それにしても、これってどこの部位?」「え?」「いや、軟骨の中でも、どこの部位の軟骨?」「そこ、気になる?そんなの気にしたことなかったわ、おれ」「剣ボロ釦が3つも連続で付いているしね」



「あと、全体がなんとなくふわっとしている気がする。って、よくよく見たら両脇にシームがないじゃん。背中心の縫い合わせと肩甲骨下から入ったダーツだけで処理してるんだ」「でも、ほら、肉食べるときは一応気にするじゃん?ぼんじり、ってどこ?え?しっぽ!道理でちょっとぷにぷにしてるー、みたいな」「あと、生地そのものもふわっと軽いね。かなり細い糸で織ってあるんだろうな」「そう?俺は気にしないけどな。焼肉なんて大体、カルビとロースとタンくらいしかないじゃん」「まじ?ほかにもあるでしょ、はらみとか…『イチボ』『ギアラ』なんて名前、どこの肉かも知らずに迷わず食える?」「選ばないよ、そんなの」「いやマルナンコツだって同じだろ、希少部位」



「タン塩×3、コブクロ×2、あと黒チューハイ」「あ、よく見て、ここ。台襟の付け根にも変なタックが入ってる。凝ってる、というか一枚のボタンダウンシャツに、よくここまで執拗にディテールを詰め込めるよね」「でも、ぱっと見で『ここまで執拗にディテールを詰め込んである』という風に見えないところが、凄いよね」「休肝日とか、あるの?毎日飲んでるんじゃない?」「あるある、一応俺だって気を使ってるから。仕事が休みの日は飲まないよ」「というと?週に?」「二日」「へぇ、意外とちゃんとしてるじゃん」「コンパクトなボタンダウンシャツって、今までにもあったけれど、これはなんとなく違うね」「どうしてこんなに凝ったことしたんだろうね」「わかんないし、別に知らなくてもいいでしょ、マルナンコツという食べ物だと思って食いなよ。美味いから」「黒チューハイ、おかわり」「何名様?二階へどうぞー!」



別に途中で聞くのを止めてもいい内容の会話、会話、会話…。そして、それらの集積が作り上げる洋服全体の雰囲気、ムード。いい感じ。



人がファッションブランドを立ち上げると、自動的に白シャツを作ることになります。特にボタンダウンシャツは今までに何万回も作られているだけあって、これはなかなかの頻度です。アレンジできる部分だって大抵はいつも同じディテール。つまり、余計なことに頭を使わなくていい、生地と縫製にさえ気を配ればそれなりのシャツが出来上がるというわけ。特にボタンダウンシャツだと相手にも気を使わないし、清潔感を保っていられるし、楽。スマホすら触らずにボーっと洋服屋を覗いては、ときおり白いボタンダウンシャツに手を伸ばしてみます。あとは、見るともなく見ながら、聞くともなく聞きながら、凝ったディテールや生地の蘊蓄、ボタンダウンシャツのルーツに向けてゆるーいアンテナを一本だけ立てている状態。

そんな「白いボタンダウンシャツの濫立、およびそれを取り巻く膠着状態」を静かに緩やかに一撃で粉砕するRENOMAの白いボタンダウンシャツ“ Champs-Élysées ”。その一撃は一発のパンチからなるものではなく、複数の手刀やエルボー、膝蹴りを含む目に見えない攻撃の連打・連打・連打である。しかし、その動きすべてをいちいち目で追う必要がないほど、独特の佇まい。見るともなく見ながら、聞くともなく聞きながら。それでも、感覚的に楽しむことができる。

そんなシャツです。是非どうぞ。



MANHOLE NEW ONLINE STORE

MANHOLE official instagram

鶴田 啓

〒107-0062
東京都港区南青山4-1-3 セントラル青山003号室

M : info@manhole-store.com
T : 03 4283 8892