not バリカタ
なんだか急に気温が下がってしまったので、出かける前にどの程度のアウターを選べばいいのか、いまいち掴めませんね。鶴田です。先週末はミドルゲージのカーディガンをアウターにして出かけたら、びっくりするくらい寒かったので、道すがらの大通り沿いで立ち食いソバを食べて、その場しのぎの暖を取りました。やっぱりスープは体が温まりますね。ラーメンなんかも、これからの季節いいですね。味噌ラーメンとか。
僕は熊本出身なので、ラーメンの話題になると「やっぱり、とんこつが好きですか?」と聞かれることも多々あるんですが、普通に中華そばみたいな醤油ラーメンが好きです。食べる機会は殆んど無いけど、喜多方ラーメンなんかもいいですね。とんこつラーメンを食べる際も、麺を「バリカタ」にすることはありません。九州の面汚し、鶴田です。

九州、中でも博多ラーメンと言えば「麺はバリカタっしょ!」じゃないけれど、このブランド、FRANK LEDERが作る洋服と言えば生地が「バリカタ」。そんな偏ったイメージがある人も多いだろう。ドイツ人の彼が使う代表的な素材は「ジャーマンレザー」「ローデンクロス」、大昔だと「シェラドミンガ―」なんかも服地としては「バリカタ」、もしくは「ハリガネ」に分類されると思う。「自立するくらい硬い服」というのは、なぜだか昔からモノフェチの人々を中心に一定の支持を得てきた。なんか、得意げなんだよね、売る人も買う人も、みんな。「自立するくらい硬いんだよ、このコート。凄くない?」なんて言って。
それが悪いなんて1ミリも思わないけれど、中にはあるんですよ。硬くないFRANK LEDERも。今日紹介するのが、それ。



軽快な膝上丈、ツンと上向きのワイドラペルが特徴的なこのコート。中肉のホームスパンツイードはチャコールグレーの重厚な色目に反して、ずっとしなやか。丸いラインを描くシルエットを見てもお分かりのとおり、このコート「硬くない」。


背面にはローデンコートのような深いインバーテッドプリーツが。裾にかけて布の分量が多くなるためか、横から見ても丸く自然なシルエット。これはおじさんの背中が丸いわけではなく、コート本体の丸さ、軽さ、柔らかさ。とはいえ、それはあくまでもFRANK LEDERの中での話。つまりジャワカレーの甘口はそんなに甘くない、みたいな。
ちなみに、ハウス食品のカレールウの箱に書いてある「辛味順位表」を参照すると、一番甘いのは「バーモントカレー 甘口」、一番辛いのは「ジャワカレー 辛口」、「バーモントカレー 辛口」は「ジャワカレー 甘口」と同レベルくらいで「ジャワカレー 中辛」よりも、甘い。これは「フランクが作る洋服の中で一番柔らかい生地の方がブルネロ・クチネリの中で一番ゴワゴワした生地よりも、たぶん硬くて重い」感じに近い。ということで、このコートはFRANK LEDERの中では比較的柔らかいコート生地だけど、それはたぶん「ザ・カリー 中辛」くらいの辛さ、いや、硬さなんだと思う。

それにしても、FRANK LEDERのコートにはやっぱり路地裏が似合う。

ヒョウ柄ウルトラスエードのコートに、FRANK LEDERの甘口生地コートを重ねた河上。ヒョウ柄ウルトラスエードが、ハウス食品の「辛味順位表」には載っていないので、何とも言えないけれど…このFRANK LEDERのコートが割と色んな洋服の辛さを受け止めて包み込むくらい、軽く柔らかく強いということは何となくお分かりいただけるかと。

斜に構えたヒールブーツも、ふんわりと開いたコートの裾と一緒に見れば、なんともいい感じ。



ミリタリー的なフロントの合わせも、ローデンコートのような背面プリーツも、裾に向かってわずかに広がる膝上丈も、そのどれもがいつものFRANK LEDERに比べると軽く柔らかい。

「FRANK LEDERの洋服は、重く硬い」という偏ったイメージをお持ちの方は、現物を見てちょっと考え直してみてほしい。そりゃあ、博多でラーメンを食べるときは「バリカタ」を頼んでみたい気分にもなるけれど、並びのうどん屋では「ぐにゃぐにゃ」のうどんを食べることだってできるわけだから。コシのある讃岐うどんもいいけれど、博多の柔らかいうどん、個人的にはけっこう好きなんだよなぁ。「博多=バリカタ」とか「うどん=コシ」とか「FRANK LEDER=自立する服」という先入観は目を曇らせるだけだから、一旦はよそに置いておいて、あとは実際に食べてみないと分からない。
それくらい、この「硬くないFRANK LEDERのコート」は、フランクらしさを失わないままで「軽く柔らかい」。
※ブルネロ・クチネリよりはたぶん重く硬いけれど。

裏地も表地みたいなツイード。袖裏にはレジメンタルストライプ。このコートの畳まれ方(ドレープ)を見ても、なんとなく伝わってくると思う。これは「ジャワカレー 辛口」ではないぞ…という感じが。




ドレープが揺れる、広がる。全然、自立しない。撮影中の床に、崩れ落ちる。辛くない、もとい、硬くないFRANK LEDERのコート。前合わせはダブルブレストなのに、ボタンは一列しかついていないってところも正にそんな(ダブルでもシングルでもない)感じ。
硬きゃいいってもんじゃないし、柔らかけりゃいいってもんでもない。FRANK LEDERの硬さは一種類なわけじゃない。

– 5 BUTTON DOUBLE BREASTED COAT –
¥173,800- (tax included)
「FRANK LEDERの硬くないコート」についてブログを書いていたら、山崎くんが「鶴田さんの邪魔にならないように静かにしますね」と気を使ってくれたので「大丈夫だよ、俺、周りがうるさくても全然書けるタイプだから」と返したら「じゃあ、メチャクチャ話しかけますね!」と言ってきたので「(うるさいと静かの)中間コース、ないの?」と訊いたところ「ないです!」と笑っていた。じゃあ、静かコースでお願いね、と山崎くんにソフトに伝えて、僕はいま甘口の脳みそでブログを書いている。
今日のMANHOLEは河上、山崎くん、鶴田の三人体制。MANHOLEの「おしゃべり順位表」を参照すると、河上が中辛(しゃべることも、黙っていることもできる)、鶴田が甘口(物静か)、山崎くんは辛口(ずっとしゃべっている)という感じ。

辛口のヒョウ柄ウルトラスエードの上に、FRANK LEDERの硬くないコートをさっそうと羽織る、中辛の河上。コートが軽やかに舞っている。

スウェットパンツやフェアアイルセーターなどマイルドなアイテムに、FRANK LEDERの硬くないコートを重ねた、甘口の鶴田。
辛口の山崎くんにも着てもらえばよかったか…。まぁ、いい。FRANK LEDERの硬さが一種類ではないように、MANHOLEの辛味も一種類ではない。勿論、お客さんの種類だって一種類じゃない。このコートが硬いか柔らかいかなんて、相対的なものでしかない。
「辛いのは苦手ー、と思ったらそんなに辛くないね、これ。むしろ深みがあって良いかも」ってこともあるし、ブレンドの種類はいくらでもあるし、一晩寝かせたら違う味になっているかもしれない。決めつける前にまずは一口、是非どうぞ。山崎くんが中辛接客してくれるかも。
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鶴田 啓
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