脱・散歩の達人
一度寒くなったと思ったら、また戻った。今日の外苑前は、再び11月のような陽気です。
三歩進んで、二歩下がる。今年の冬は、水前寺清子「365日のマーチ」のように少しずつゆっくりとしかやってこないようです。「マーチ」とは「行進」のこと。「幸せは歩いてこない、だから歩いていくんだね」という行進曲ですね。水前寺清子と同郷、熊本出身の鶴田です。
一日一歩、三日で三歩。三歩進んで二歩下がる。それもまた、人生ですね。って、それじゃ、まるで美空ひばりですね。一日一歩、三日で散歩。ん?さんぽ?
「最近、中台が散歩にハマっているらしい」と、少し前のブログでそれを知って、危機感を覚えております。そのうちに本ブログで「たつ散歩」の不定期連載を始めてしまうんじゃないか?鶴田のお株を奪われてしまうんじゃないか?「あの人、むかし散歩ブログ書いてた人だよね。ナツい」と、過去の人扱いされてしまうんじゃないか?そんな、戦々恐々とした気分です。が、気を取り直して始めます。
こんにちは、つる散歩のお時間がやってまいりました。
MANHOLE・散歩部門のニューカマー、中台。先日の「散歩スモック」ブログにて、最近散歩にハマっていることをカミングアウトしていた、彼。「ナニ!中台も…散歩?」その衝撃からか、僕は翌日のブログで思わず「吉田悠人」の殻に閉じこもってしまった。これまで、外苑前の街並みをや名建築を紹介するブログで「散歩の達人」の名をほしいままにしてきた鶴田。しかし、年下の挑戦者登場によって、これまで唯一・絶対だと思われていたその玉座が揺るぎ始める。果たして、このまま鶴田は世代交代の波に飲み込まれてしまうのか?とか。
うだうだ言ってないで、さっさとその辺ほっつき歩いて来いよ。という幻聴までが聞こえてくる。
腐っても、鯛。挑戦者・中台の散歩っぷりをじっくりと観察するところから始めて、格の違い、王者の貫禄を見せつける。こっそりと後ろから尾行(つけ)ていくぜ。
まずはお手並み拝見。秋の紅葉とベンベの間を颯爽と抜けていく、中台。
散歩には考え事がつきもの。
一度止まって、再び歩き出す。ストップ&ゴーの心得もあるようだ。
雑踏の中に紛れていく後ろ姿も及第点。さすがの若獅子。堂々たる風格…。
一方で「MANHOLE散歩部門」の部長・鶴田。木漏れ日の中に立ち尽くしている。
ポケットに手を突っ込んでみる。
ポケットから手を出してみる。
エスカレーターに乗ってみる。
まだ、乗っている。
ば、ばかな…さっきから全然歩いてなくない?立ってるだけ?散歩、してなくない?鶴田、止まってるじゃん。Yeah!
「このまま青山通り沿いを北へ歩いていくと、外苑前のいちょう並木が見えてきますね。例年よりも少し遅いとはいえ、いよいよ見頃でしょうか。毎年冬に見られるこの見事な紅葉ですが、近隣再開発の影響により付近一帯の樹木の伐採や枯死が懸念されていますね。故・坂本龍一氏が小池都知事に宛てた手紙も話題になりましたね。並木の最奥に見えるのは大正15年に創建された聖徳記念会館です」
という写真とコメントまで用意していたのに。つる散歩、没落の危機。
ちなみに散歩中のふたりが着ているのはFRANK LEDERのシャツっぽいジャケット。ブークレ糸で織られたモコモコの質感が軽くて可愛い。適度な高さのスタンドカラーもあっさりしていて潔い。
質感だけでなく、糸色までがモコモコの配色。グレー味の中にグリーンっぽさやベージュっぽさやブルーっぽさが隠れている。ボタンもマーブル調で、野趣あふれる存在感。
フランクの故郷・ドイツからほど近いチロル地方にも同じようなブークレ調のニットジャケットが伝統的に存在し、それらはたまに「Walker Jacket」つまり「散歩用の服」と呼ばれていたりする。FRANK LEDERのこのジャケットが散歩用かどうかは知らないけれど、実際に着て、街を歩いてみると凄く快適だった。中台のように一枚でジャケットらしく羽織るのもよし。風が冷たい日はレザーやナイロンなど風を通さない素材で蓋をしてあげれば、内側はきっとホカホカだろう。
ふたたび、歩き出す中台。もういいかな、彼になら譲ってしまっても。部長の座。散歩の達人の伝統を彼ならしっかりと受け継いでくれるだろう。「たつ散歩」、楽しみにしているよ。
と、ここでようやく歩き出した鶴田。つる散歩、開始。目的地はどちらの方向だろうか?目的地?散歩に目的地なんてものはない。散歩の目的は歩くことそのもの。あてもなく歩くからこそ散歩なのだ。
そういえば、河上も散歩が好きだ。ゆうともよく歩くらしい。きっと山崎くんも禅野くんも同じだろう。だとしたら、MANHOLEは只の散歩同好会なのか?いや、そうではない。そうではないが、そもそもMANHOLEというお店そのものに目的地がないのだ。「5年で3店舗展開」とか「パリ出店」とか「売上シェア国内ナンバーワン」とか、そういった野望じみた目的地は河上の中に存在しない。道なりを歩きながら、道草を食いながら、野に咲いた花を眺めながら、空を仰ぎ見ながら、ただ進んでいるかのようなお店だ。
だからこそ、MANHOLEというお店にはFRANK LEDERの洋服がよく似合う。ブークレ糸でざっくりと織られたこのジャケット生地は、歩くと適度に風を通すし、止まると体を温めてくれる。どちらの方向に向かって歩いているにせよ「いま、自分が歩いている」ことを実感させてくれる優しい服だ。幸せがどの方向からどんな形をしてやってくるのかなんて、だれにも分からない。だから歩いていくんだね。僕もまた(散歩部門部長なんて肩書にこだわらず)、MANHOLEとともにもう少し歩き続けてみたい気持ちだ。
て、いや、このブログの目的地はFRANK LEDERの紹介だろうよ。散歩してないで書けや。
はい、続きは店頭にてご説明しますので、気になる方は散歩がてらMANHOLEまで是非お越しくださいませ。
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