風通し
まだ寒くなる前、秋の終わり頃に中台が穿いていたショーツを覚えていますか?
ダウン入りのポカポカショーツ、CLASSのCCDA08UNI A/B。中台は「アウターのようなショーツ」と形容していました。いい表現ですね。まだアウターなんて全然着ることができなかった時期にショーツからアウターを取り入れる感覚で軽快に穿いていました。ブログのタイトルは「新しい選択」。
と、そんな導入からあっという間に2か月が経ちました。


特徴的なサイドジップを見て、思い出した方も?こんにちは、鶴田です。

ちょっとグレイッシュなカラーリングでアーバンに佇む、ぜんのこうし君。

もこもこニットのインナーはリップストップ生地のシャツ。この格子柄の生地にありがちなナイロンやT/C素材ではなく、軽量のウール素材。

あのショーツと同じように、中に薄手のダウンが詰まったこのシャツ。全体がふっくらと丸みを帯びている愛らしいフォルム。

裾から脇の下を通って、袖口まで続くジップ。

勿論、いつどこでどのようにどれくらいジップを開くのかは着る人の自由。

日中が暖かすぎるようであれば、サイドジップを思い切り開くことで見た目のデザインをベンチレーション(通気)機能に変換することもできる。CLASSの堀切さんは、これまでにも「既存の洋服が備えている古典的な機能ディテールから機能性をはぎ取り、見た目のデザインとして扱うことで新たなフォルムやカットに繋げてきた」のだと思うが、このシャツの場合は「見た目のデザインが再び機能性に立ち戻った」かのように思える。
「ふたつの部分を繋げて簡単に開け閉めすることができる」というジップ本来の機能を「普通は付いていないはずの脇腹に取り付ける」ことで「違和感やシルエットの変化を楽しむことができる」という変換、それを更に超えて「(通気のために)簡単に開け閉めすることができる」という本来の用途・機能に再び戻っていくかのような、いわば循環。

脇のジップをほとんど開け放ってしまえば袖幅や身幅という数値も概念も消え去ってしまう。

厚手ニット&厚手ジャケットの上からでも、着用可能。まるでポンチョを羽織っているみたいだ。

両サイドもフロントも開け放してしまえば、ほとんどバラバラになる寸前まで四方八方に広がるシャツ。
そういえば、MANHOLEの向かい側にぽっかりと大きな空き地ができていた。この場所に元々なにがあったのか、まったく思い出せない。真っ新な土地。
ふと思う。堀切さんのデザインの視点は、もしかすると先入観を捨て去るところから始まっているのかもしれない。勿論、堀切さんの頭の中にはありとあらゆる服飾の歴史や事件、文脈、ムーブメントが詰め込まれているのだろうけれど、知れば知るほどそれらの知識を一度外に追い出してみるということは意外に難しい。忘れ去る、とはまったく違う意図的な集中力が必要なのかもしれない。例えば「ジップ」というパーツを見た時に「普通は○○な場所に○○な目的のためについている」と連想してしまう、その過程を丸ごと捨て去るということ。まるで「ジップ」を初めて見る人間かのようにそれを見つめ、そこから想像力を膨らませるということ。


-CCDA14UNI A-
¥196,900- (tax included)

-CCDA14UNI B-
¥159,500- (tax included)

このアイテムの変形バリエーションをここで羅列していくことが無意味に思えるほど、無限の可能性を秘めたシャツ。

MANHOLEの向かい側にぽっかりとできた大きな空き地。東京都港区のど真ん中にある空白、そこには風を遮るものがなく空を隠すものがない。
そういえば、このシャツは開閉できる部分がたっぷりとあるので、天気が良い日はわき腹をジップで裂いて広げてベランダに干してみるのも気持ちよさそうだ。空を掴めそうなほど目いっぱいに広げられたシャツは、気持ちよさそうに風を浴びて、光を吸い込み、まるで干したての羽毛布団のようにふんわりと膨らむことだろう。
2023年に起こった、あんなことやこんなこと。良いことも悪いことも一度すっかり自分の中から追い出して、真っ新な気持ちになることができたら、2024年はきっと子供のように無邪気なこころで新しいことにチャレンジできるかもしれない。いやいや、そんなの口で言うのは簡単だけどね、って?たしかに。でも、「わき腹にジップを付けたダウンシャツを作ってみたい」という無邪気かつバカバカしい冒険を、実際に商品化してみせた先人がいる以上、そうとは限らない。
「ふたつの部分を繋げて簡単に開け閉めすることができる」というジップ本来の機能を「普通は付いていないはずの脇腹に取り付ける」ことで「違和感やシルエットの変化を楽しむことができる」という変換、それを更に超えて「(通気のために)簡単に開け閉めすることができる」という本来の用途・機能に再び戻っていくかのような、いわば循環。
ファッションが本来持っていた機能、それは心の中に風を吹き込んでくれる通気口のような存在。思い込みを心から追い出して、真っ新な気持ちで楽しめば、きっと2024年も楽しめるはず。空を掴めそうなほど目いっぱいに広げられた心は、気持ちよさそうに風を浴びて、光を吸い込み、まるで干したての羽毛布団のようにふんわりと膨らむことだろう。
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