さて、MANHOLEのドレスシャツ。
「特別な生地」を選ぶのに疲れた、というか特別な生地に特別さを感じなくなったので普通の生地で作っています。ここでいう「普通」というのは、気に入ったらまた手に入るような普通さ。ナポリのシャツ屋さんが定番として持っている普通の生地。今回はこれが良いと思って選んだけど、仮にこの生地が無くなったとしてもまた違うものを選べるような普通さ。
もう作れない、言うのも言われるのも疲れちゃいました。都合に振り回される数は少なければ少ないほど良いし、シャツのような肌に近い洋服は「気に入ったらまた手に入る」くらいの方が気軽に着られてよいのではないでしょうか。
というのは、MANHOLE初期に企画したオフホワイトのシャツを色移りしようが袖や襟が擦り切れようが気に入って着続けてくれたMANHOLEのお客さんを見て感じました。新しいのを渡したいけれど、もう作れないし値段もあがっちゃってるしなあ。なんて考えるのも疲れた。都合よく、今のセレクトショップには「どうやら特別らしいもの」だらけだし、僕らが今選ぶものはそんなに特別なものじゃなくてもいいのかもしれない、なんて。
ちなみにこの「普通の生地で作る」というのは日本製だった頃から変わらないMANHOLEのドレスシャツのコンセプト。変わったのは硬いか柔らかいかくらい。
と、いうわけでオフホワイト。
かつてオフホワイトのシャツだったはずなのに色移りしてグレーとかピンクとかになってしまったMANHOLEのお客さま、以前手に入れたオフホワイトのシャツを気に入って着すぎて袖口や襟元が擦り切れているMANHOLEのお客さま。
そういう「かつて〜だったもの」をコーディネートでバランスを取るのは楽しいけれど、そろそろ替え時です。このシャツをどうぞ。
・・・どちらでも無い方が大半ですよね。
晒しの白ではなくオフホワイトです。
真っ白のブロードやポプリンのドレスシャツに袖を通すと確かに気持ちは良いけれど、ジャケットを羽織って鏡を見た時に「こんなに白くなくてもいいかもな」と思ったことはありませんか。
これはそんな「そんなに白くないシャツ」です。
普段MANHOLEに並ぶようなテーラードと合わせてみてください。
同じくレギュラーカラー。サックスブルー。
そういえば、次の春夏シーズンに自分たちで企画している洋服はこういう色が多いかもしれません。
お店に立っている人間が爽やかさに欠ける分、ちょうどいいかも。
そして普通のチェック。
この生地は中台が選んでくれました。
普通のチェックだけど、普通すぎて自発的に手に取ったことがないかもしれない。
「アメリカ物と合わせると、ほら。いいじゃ〜ん」と中台が言っていました。
うん、楽しそう。
「スナップシャツは楽でいいけれど、ウェスタンシャツは古着でいいからなあ。」と、考えていた時。
70年代に活躍したフランスのデザイナーズブランドが作っていたスナップ式のタブカラーシャツを山崎くんが見つけてきました。ナイスタイミング、ナイスアイデア。なんてMANHOLEらしいシャツなんだろう。
というわけでスナップ式のタブカラー。
デザイナーズらしい無機質な雰囲気は残したかったので、このタブカラーのシャツだけフルマシン、襟芯も接着芯。かといってあまりにもツルッとしすぎてもなあ、と感じたのでヨークのギャザーは入れてみたり。作っていて楽しいシャツでした。
ネクタイをわざとらしく立体的に見せてエレガントを気取ることも出来ますが、脱ぐ時や着る時はパチパチ音がするようなエレガントさのない洋服です。是非ネクタイをしないでどうぞ。
装飾的な機能を機能で殺す楽しいシャツ。
仕様確認として送られてきたサンプルズバリのサックスブルー。
そして、プリーテッドブザムのウィングカラーシャツ。
縦プリーツではなく横プリーツ。
最早形骸化された存在ですね。格式は箱の中の綺麗な綺麗な飾り物です。
格式や様式美、かっこいいですよね。憧れます。
でも、今それを気にして出かける場所も機会もないんだよなあ。
無理矢理そんな場所や機会を作るより、なんでもないように着てあげるのがこれからのこういう洋服の新しい形なのではないでしょうか。
というわけで、僕らのような社交界やパーティーシーンといった特別な場面になんの縁もない人間が、普通に街中で見かける「かっこいいもの」として活躍させてあげたいと思います。
昔からあるけどそういえば着たことのない洋服を、いつも通り「ただの楽しい遊び道具」として。
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河上 尚哉
〒107-0062
東京都港区南青山4-1-3 セントラル青山003号室
M : info@manhole-store.com
T : 03 4283 8892
今年もありがとうございました。
12月27日で年内の営業を終えました。
2回も改装しただけあって、大掃除が楽でした。来年も改装しちゃおうっと。
今年もありがとうございました。
来年も僕らの楽しい時間が、MANHOLEに関係する皆さまにとっての楽しい時間でありますように。
年明けの営業は1月4日12時からです。
それでは皆さま、よいお年を。
と、締めるところですが、相変わらず年末はやることがないのでMANHOLE Blogはもう少し続きます。
それではまた。
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まだ寒くなる前、秋の終わり頃に中台が穿いていたショーツを覚えていますか?
ダウン入りのポカポカショーツ、CLASSのCCDA08UNI A/B。中台は「アウターのようなショーツ」と形容していました。いい表現ですね。まだアウターなんて全然着ることができなかった時期にショーツからアウターを取り入れる感覚で軽快に穿いていました。ブログのタイトルは「新しい選択」。
と、そんな導入からあっという間に2か月が経ちました。
特徴的なサイドジップを見て、思い出した方も?こんにちは、鶴田です。
ちょっとグレイッシュなカラーリングでアーバンに佇む、ぜんのこうし君。
もこもこニットのインナーはリップストップ生地のシャツ。この格子柄の生地にありがちなナイロンやT/C素材ではなく、軽量のウール素材。
あのショーツと同じように、中に薄手のダウンが詰まったこのシャツ。全体がふっくらと丸みを帯びている愛らしいフォルム。
裾から脇の下を通って、袖口まで続くジップ。
勿論、いつどこでどのようにどれくらいジップを開くのかは着る人の自由。
日中が暖かすぎるようであれば、サイドジップを思い切り開くことで見た目のデザインをベンチレーション(通気)機能に変換することもできる。CLASSの堀切さんは、これまでにも「既存の洋服が備えている古典的な機能ディテールから機能性をはぎ取り、見た目のデザインとして扱うことで新たなフォルムやカットに繋げてきた」のだと思うが、このシャツの場合は「見た目のデザインが再び機能性に立ち戻った」かのように思える。
「ふたつの部分を繋げて簡単に開け閉めすることができる」というジップ本来の機能を「普通は付いていないはずの脇腹に取り付ける」ことで「違和感やシルエットの変化を楽しむことができる」という変換、それを更に超えて「(通気のために)簡単に開け閉めすることができる」という本来の用途・機能に再び戻っていくかのような、いわば循環。
脇のジップをほとんど開け放ってしまえば袖幅や身幅という数値も概念も消え去ってしまう。
厚手ニット&厚手ジャケットの上からでも、着用可能。まるでポンチョを羽織っているみたいだ。
両サイドもフロントも開け放してしまえば、ほとんどバラバラになる寸前まで四方八方に広がるシャツ。
そういえば、MANHOLEの向かい側にぽっかりと大きな空き地ができていた。この場所に元々なにがあったのか、まったく思い出せない。真っ新な土地。
ふと思う。堀切さんのデザインの視点は、もしかすると先入観を捨て去るところから始まっているのかもしれない。勿論、堀切さんの頭の中にはありとあらゆる服飾の歴史や事件、文脈、ムーブメントが詰め込まれているのだろうけれど、知れば知るほどそれらの知識を一度外に追い出してみるということは意外に難しい。忘れ去る、とはまったく違う意図的な集中力が必要なのかもしれない。例えば「ジップ」というパーツを見た時に「普通は○○な場所に○○な目的のためについている」と連想してしまう、その過程を丸ごと捨て去るということ。まるで「ジップ」を初めて見る人間かのようにそれを見つめ、そこから想像力を膨らませるということ。
このアイテムの変形バリエーションをここで羅列していくことが無意味に思えるほど、無限の可能性を秘めたシャツ。
MANHOLEの向かい側にぽっかりとできた大きな空き地。東京都港区のど真ん中にある空白、そこには風を遮るものがなく空を隠すものがない。
そういえば、このシャツは開閉できる部分がたっぷりとあるので、天気が良い日はわき腹をジップで裂いて広げてベランダに干してみるのも気持ちよさそうだ。空を掴めそうなほど目いっぱいに広げられたシャツは、気持ちよさそうに風を浴びて、光を吸い込み、まるで干したての羽毛布団のようにふんわりと膨らむことだろう。
2023年に起こった、あんなことやこんなこと。良いことも悪いことも一度すっかり自分の中から追い出して、真っ新な気持ちになることができたら、2024年はきっと子供のように無邪気なこころで新しいことにチャレンジできるかもしれない。いやいや、そんなの口で言うのは簡単だけどね、って?たしかに。でも、「わき腹にジップを付けたダウンシャツを作ってみたい」という無邪気かつバカバカしい冒険を、実際に商品化してみせた先人がいる以上、そうとは限らない。
「ふたつの部分を繋げて簡単に開け閉めすることができる」というジップ本来の機能を「普通は付いていないはずの脇腹に取り付ける」ことで「違和感やシルエットの変化を楽しむことができる」という変換、それを更に超えて「(通気のために)簡単に開け閉めすることができる」という本来の用途・機能に再び戻っていくかのような、いわば循環。
ファッションが本来持っていた機能、それは心の中に風を吹き込んでくれる通気口のような存在。思い込みを心から追い出して、真っ新な気持ちで楽しめば、きっと2024年も楽しめるはず。空を掴めそうなほど目いっぱいに広げられた心は、気持ちよさそうに風を浴びて、光を吸い込み、まるで干したての羽毛布団のようにふんわりと膨らむことだろう。
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MANHOLEのドレスシャツ
イタリア:ナポリのシャツ屋さんにMANHOLEのドレスシャツを作ってもらいました。
以前作っていた日本製のシャツにはなんの文句もありませんが、もうちょっと全体的な雰囲気を柔らかくしたいなあ、と考えていたタイミングにちょうど「どうですか?」と声がかかったので、流されるままふんわりやってみることにしました。
レギュラーカラーのドレスシャツ1型3色。36〜42の7サイズ。
アコーディオンプリーツのウィングカラーシャツ1型。S/M/Lの3サイズ。
そしてタブカラーのスナップシャツ1型。S/M/Lの3サイズ。
ウィングカラーシャツは「アコーディオンプリーツ?ウィングカラー?そんなの知らねえよ!」という方と一緒に遊ぶために作りました。知っていてもいいけれど知らなくてもいいですよね。
スナップのタブカラー、アイデアがふざけている割にはかっこいいものが出来上がったな、と思います。自信作です。
レギュラーカラーは以前作ったものと同じ形。工場や使用する付属が変わると別物になりますね。
あ、比翼だったのを前立てに変えました。2箇所ハンドにしています。
以前の日本製のシャツがバキッと硬い印象に対して、今回作ったシャツはふんわり柔らかい印象です。
硬い、柔らかい。
どっちが良いとかどっちが悪いとかではなく、どっちも良いと思えるようになりたいです。
その人にとってシャツが肌着なのであれば「これが良い」というのが決まっていてそれを買い続けるのが楽だし男っぽくて良いですが、僕らにとってシャツの役割は別に肌着に限られないしなんなら暇で考える時間がたくさんあるせいか一つのものを着続けるのは飽きてしまうのでアレコレ試してみています。「これが良い」と決めるのは、あくまでもその時の自分に任せたいのです。
さて、そんなレギュラーカラーシャツ。
以前作った日本製の胸に二つポケットがついたシャツを先方に渡し「縫い方と前立てと芯の硬さ以外は全部まるっとこの形でお願いします!」と伝えたところ、サンプルが「左胸一つポケット」で上がりました。頼むぜナポリ。
「まあ、これはこれでいいかな」と感じたのでその左胸一つポケットのサンプルを渡して「左胸一つポケットで大丈夫です!」と伝えたところ、実際の製品は胸ポケットのない仕様で納品されました。
ナポリ、、、な〜んにも伝わってねえ。
ポケットの数とかどうでもいいんでしょうね。無い方がカッコいいとも思ってそうです。
企画当初は比翼のレギュラーカラーシャツという洋服の持つ緊張感を抜く為に足した2つポケットだったんだけど、結果的にちゃんとドレスシャツになりました。
が、制作過程で間が抜けてます。
意図はせずとも間は抜ける。自然ですね。まあ、こういう着地の仕方もMANHOLEぽくて良いか。
改装中、バタバタの最中に届いたので、まだ値段決めてませんが、年明けまでには決めておきますね。
それではまた。
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今年最後の入荷ですかね。
BLESSのショーツ:ULTRAWIDEPLEATED SHORTS。
何回か仕入れているので説明不要ですね。簡単に書くとめちゃくちゃ大きいバギーショーツです。
この時期に入ってきたから2024年春夏物とかではなく、れっきとした2023年秋冬物です。
まあ、シーズンとかどうでもいいんですよ。今年は地球側からも「もう、シーズンとかどうでもいいから自分が肌で感じたままにやってみよーぜ」って言われちゃいましたしね。
前向きに考えると経験に頼らずに変化が出来る良い時期なのではないでしょうか。
さて、ULTRAWIDEPLEATED SHORTS。今回は合皮の型押しです。
この生地、被服用ではないせいか人間側に寄り添う気が全く感じられませんが、勢いと迫力は感じられます。
ショーツというリラックスした洋服の形になっても人間側に寄り添う気が相変わらず感じられませんが、そこがこの洋服の良いところですね。自分が「かっこいい」と感じたものはかっこいいということです。例え、意味がわからなくても。
ちょっと頭で考えただけのちょこざいなテクニックに頼らずに、まずは自分の肌が感じたままにやってみましょう。考える前にやる、考えながらやる。考えたら、やらない。
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