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ぽいデニム



堀切さんが手がけるronomaの提案は、いつもフレッシュだ。時代を切り開いた創始者がいて、60年もの長い歴史があって、アイコニックなアイテムが存在するブランド・renoma。つまりそこには確固たるrenomaテイストがあるということ。

そのテイストを尊重しながら、かといって過剰に阿(おもね)るわけでもなく、ここのところ毎シーズン新しいコレクションを発表し続けているというのに、相変わらず堀切さんが手がけるronomaの提案は、いつもフレッシュだ。単なるリプロダクトの枠には決して収まらない。

こんにちは、鶴田です。

“ renoma”
– SAINT DENIS –
¥29,700-(tax included)



今シーズン、renomaから届いた2トーンカラーのデニムを見たときも、「あぁ、これまでに全く見たことのないデザインってわけじゃないのに、なぜこんなにも今の僕らの目に新鮮に映るのだろう」と素直に思えた。

複数色のデニム生地で切り替えられたパンツなんて、アノニマスなリメイク古着でもデザイナーズブランドのアーカイブでも幾度となく目にしているはずなのに。そもそも、1960年代にレノマ兄弟が経営していたブティック「ホワイトハウス」ではドレスアイテムにジーンズを合わせる(当時としては相当型破りな)提案がされていた、という逸話自体が広く知られていたりもする分だけ「renoma=ジーンズ」という予備知識はこちらにもあったはずなのに。renomaの2トーンデニム「SAINT DENIS」は圧倒的にフレッシュな顔をしている。



たしかに「renomaっぽい」と思える点は幾つもある。英国のピーコック革命とほぼ同時期にドレスコードや性差を飛び越えてきたこのブランドらしく、2種類のデニム生地はどちらもライトオンスで軽やか。程よいブーツカットで、たしかに1960~70年代のムードがある。フロントのLポケやヒップポケットが省かれているから、どことなくフェミニンな印象で…的なこと。でも、それらををいちいち解説しなくても、なんか、なんとなく、圧倒的に新鮮なんだよなぁ。

そもそも、の話になるけれど「renomaっぽい」とか「1960~70年代のムード」ってなんだろう?それに限らず、例えば「パリっぽい」という言葉の意味ってなんだろう?



僕は前職でBEAMSという大きな企業に属していたんだけど、お客さんや取引先の方をはじめとする色々な人から「BEAMSの人っぽくないですね」と言われたことが何度もある。「珍種」らしい。裏を返せばそれを言ってきた人々の中には「BEAMSっぽい人物像」が確かにあったということになる。「アメリカっぽい」があるから「アメリカっぽくない」がある。「パリっぽい」があるから「パリっぽくない」がある。そして、その「~っぽさ」の根源は、それを語る人たちの体験の中にだけある。

例えば「トマトとモッツァレラチーズとオリーブオイルとバジルを合わせて食べると、イタリアっぽい」わけなんだけど、「カプレーゼ=イタリア」の図式がまったく無い人にしてみれば、初めて食べるその味は「イタリアっぽい」「イタリアっぽくない」どころか、「意外と合うね、なかなか美味しいね」に過ぎない。そして、もしもカプレーゼを初めて食べた場所がイタリアやイタリアンレストランやイタリアンフェア―の会場ではなく、和民だったとしたら、カプレーゼはその後のその人にとって「和民っぽい」味として記憶されるだろう。「この料理はイタリア南部のカプリ発祥で、サラダの一種ですよ」と聞かされるまでは。

つまり「~っぽい」という感覚は、きわめて個人的なものだということ。



結局、「パリっぽい」とか「アメリカっぽい」とか「renomaっぽい」とか「1960年代っぽい」とか、そういうフレーズは、それ(本でも映画でも現地旅行でもなんでもよい)を紐づけてくれるような体験したことがある人にってのみ有効な概念に過ぎないし、似たような体験をしてきた相手とだけ共有できる言語、そして単なる知識ベースの感覚ということになる。



みたいなこと諸々を超えて、このデニムは圧倒的にフレッシュだ。このデニムが「パリっぽい」とか「アメリカっぽい」とか「renomaっぽい」とか「1960年代っぽい」とか、そういった概念に関わらず今の僕らの目にはとても新鮮に映る。それはおそらくこのデニムが「過去のパリ」や「1960年代のアメリカ」にではなく、「今」という瞬間にキッチリと接続しているからだろう。



歴史と細かく照らし合わせることを必要としない味。歴史からテイストを学ぶことは時に役に立つが、時に邪魔になる。まるで初めて食べる味かのように、是非試してみてほしい。ファッションである以上、どこかに感じる「今っぽさ」があればそれでいい。このデニムがアーカイブから着想を得たかどうかなんて、どうでもいい。新鮮な味は、新鮮なうちに。「今っぽいデニム」は、食べたいときが食べごろです。

何味かは分からないけれど、とっても美味しそう。少なくとも箸でつつくだけで大して食べやしない、グルメ気取りの評論家にはきっと分からない味。





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鶴田 啓

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