黒の深さ
ひと月前に紹介して、すぐに店頭から姿を消してしまったFRANK LEDERのワイドパンツ。
覚えていらっしゃいますか?きっと、カッコいいパンツでしたね。週一でMANHOLE出勤の僕は現物をみることができませんでした…。
こんにちは、鶴田です。
ひと目見てみたかったな、と思っていたら同じパンツの生地違いが店頭に並んでいました。前回のミックスブラウンとは打って変わって黒・無地。こちらは麻100%なので、前回のコットンパンツとは全く異なる軽い質感。ゆらゆら、揺れる。
黒・無地です。
黒・無地です。
黒・無地です。
杢グレーのパーカと比べても黒・無地、トープ色のタンクトップと比べても黒・無地、白いソックスと比べても黒・無地です。
誰が何と言おうと、黒・無地です。
CLASSの黒・無地シルクシャツと比べても、黒・無地です。しかし、シルクシャツの深い黒に比べると、こちらの麻パンツは浅い黒。
深い黒・浅い黒。
深い・浅い。深い・浅い。深い・浅い。
深い知識・浅い知識。深い海・浅い海。深い夜・浅い夜。深い歴史・浅い歴史。深い付き合い・浅い付き合い。深い傷・浅い傷…。
世の中には様々な種類の「深浅」が存在しているけれど、たとえば「罪が深い」と表現するとき、その対義語が「罪が浅い」となることはない。仮に「罪が重い」というのであれば、そこには「罪が軽い」という表現が用意されているし、前者(罪が深い)は「道徳的」な事象に対して、後者(罪が重い)は「法律的」な事象に対して使う言葉だから一概には言えないような気もするけれど。要するに、「深い黒」に対応する言葉には「漆黒」とか「真っ黒」というものあるけれど、このパンツの「黒」を表現するときには、どうしても「浅い黒」という言葉がしっくりとくる。「浅黒い」は茶褐色の肌に対して使う表現だし、このパンツは「白っちゃけた黒」ほど色褪せてもいない。
だから、このパンツはやっぱり「浅い黒」なのだ。
浅い黒、です。
浅い黒、です。
浅い、黒です。
「深い黒」と「浅い黒」について思いを巡らすとき、僕はいつも山本耀司のことを考える。頭のてっぺんからつま先まで、全身に黒い洋服を纏った人がいるとして、その黒はきっと一種類の黒ではないだろう。黒の無限について考え続けてきたデザイナーは星の数ほどいるのかもしれないが、山本耀司は誰よりも黒について考えて続けてきたデザイナーのひとりだし、実際に黒の種類は数えきれないほど存在するはずだ。
20年以上前の話、ロンドンのファッション/カルチャー誌である「i-D Magazine」の中に、FRANK LEDERがスタイリングを手がけたファッションページがあった。モデルが着用したアイテムのクレジット欄で、僕は「Yohji Yamamoto」の表記を多く見つけた記憶がある。きっとFRANK LEDERは山本耀司からも少なからず影響を受けてきたのだろう。彼もまた黒に対して意識的なデザイナーのひとりである。ウールジャージーの黒ともジャーマンレザーの黒とも異なる、浅い黒のリネンパンツ。
「罪が重い」と「罪が軽い」は裁判所が決めるとして、このパンツは「漆黒」でも「白っちゃけた黒」でも「黒っぽい青」でもなく、「浅い黒」だ。そして、この黒がどれくらい浅いのかを決めるのは裁判所でも僕らでもなく、あなた自身だ。
きっとあなたにとっても「良い黒」だと思うけれど、それがどれくらい「良い」のかということは是非店頭にてご覧頂きたいと思います。
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