暗くなるまでこの恋を
先日、うちの娘が小学校を卒業しました。入学からの6年間は早いもので、まさに光陰矢の如し。赤いランドセルを買ってあげたのがついこの前のように思えますが、アレをしょって出かける姿をもう見ることが無いんだと思うと、ちょっと寂しいですね。
こんにちは、鶴田です。
ちなみに、卒業式の服装については娘から「あんまり派手な格好してこないでね」と直談判があったこともあり、初めは「グレーのスーツでいいよね?」と答えていた僕も、結局当日の朝になって「ネイビーのスーツに白いシャツ、黒い靴」という身なりにシフトチェンジして出かけました。
フランス人は黒の扱いが上手い。唐突だけど、僕はそう思う。
これはもう完全な偏見、先入観、思い込みの類にあたると自分でも知っているし、今時「○○人は××だ」なんて概念は流行らないことぐらい分かっているつもりなんだけど。でも、結局のところ、そういった「イメージ」の力がポジティブに働けば、ファッションをはじめとする日常生活はグッと楽しくなる。例えば、公園でベーグルを食べながらコーヒーを飲むだけで「まるでセントラルパークで休日を過ごすニューヨーカーみたいだな」とか、カフェテラスでクロワッサンを食べながらカフェオレを飲むだけで「サンジェルマンで寛ぐパリっ子みたいだな」とか、それを楽し気に感じられるということ自体は、いくら他人に「単細胞だ」とか「ここ、日本だぜ」とか言われようとも自分自身の人生を自分で勝手に謳歌することができるという意味では、幸せだ。
なので、今日のところは「フランス人は黒の扱いが上手い」という前提で話を進めてみたい、いや、進めさせてください、どうぞよろしくお願いします。
「黒の扱いが上手い」ってことを具体的に言うと、いわゆるドレスコード「ブラックタイ」、つまり夜に着るフォーマルウェア、「タキシード(ディナージャケット)」「ボウ&カマ―」「オペラパンプス」などを適当に着崩してしまう感覚に優れていたということ。モーリス・レノマの時代、1960年代を皮切りに発現されたその能力は、ひょっとすると海を渡ってアメリカ、例えばラルフ・ローレンのフォーマル崩しテクニックにも影響を与えたかもしれない。つまり、フランス人はヨーロッパでは元々は喪服を、その後は転じてイブニングのフォーマルウェアをイメージするものであった色=黒を自由に扱ってきた、と半ば強引に言ってしまおう。
一方で、ネイビー。昔話でよく言われるのは「電球がまだない、燭台の黄色っぽい灯りで夜を過ごしていた時代に黒よりも深い色に見えた」という理由で、ドレッシーな色とされてきたネイビーは、黒と並んでフォーマルの要素が強い色だ。ミッドナイトブルーという言葉があるくらい、黒の代わりにダークネイビーを使ったタキシードが存在する理由もこのあたりにある。要するに、ネイビーは黒に引けを取らないくらいドレッシーな印象を人に与える色。入学式や結婚式に出かけるのであれば、グレーのスーツよりもネイビースーツに身を包んだ方が俄然カッチリとして見える、ということ。
「フランス人は黒の扱いが上手い」ということが関係しているかどうかは分からないけれど、ネイビーのレザーシューズと言えばフランス靴をイメージするという視点は、J.M WESTONの具体例を挙げるまでもなく、ある意味で正しい。黒の扱い方を知っているからこそ、カラーレザーのグローブや靴をよく作る。
ということで、「フランス人は黒の扱いが上手い」を受けて今日紹介するのはネイビーのレザーシューズ。F.lli Giacomettiのダブルモンクストラップ、FG502。
先日紹介したペインテッドパイソンのダブルモンクと同型だけど、見た目の印象は正反対。端正で、控えめで、エレガント。
だからこそ、蛇とはまったく違う意味で「どんなアイテムと一緒にコーディネートしてもカッコいい」ことは分かり切っているんだけど、せっかくなのでネイビー×黒に、フォーカスして眺めてみたい。ネイビーの靴に黒い洋服。なかなか素敵じゃないか。
黒がネイビーを、ネイビーが黒を互いに引き立て合っている、というのか。深い黒に合わせるとFG502のネイビーが一層深い青に見える。黒いアイテムは、もはやジャージでもキャップでもタンクトップでもベルトでもサングラスでも、何でもいい。勿論、黒いジャケットやパンツでもいい。
黒の扱いが上手いフランス人は、ネイビーの扱いも上手い?とは言え、僕らは別にフランス人じゃないし、F.lli Giacomettiはフランス靴ではない。では何なのか?それは控えめな遊び方。ネイビーは黒というフツーの色のポテンシャルを最大限にまで引き上げてくれるらしい。そして、ネイビーのレザーシューズには(ついつい見落としてしまいがちな)「フツー×フツー」の可能性を引き出してくれる魔法がかけてあるらしい。
例えばブラックスーツに白シャツ、そしてネイビー色の靴を履くだけですべてが破壊的にカッコよくなるような感覚を、僕らはそろそろ思い出していい頃なのかもしれない。MANHOLEには、同じレベルの選択肢としてペインテッドパイソンとネイビーカーフが並んでいるだけだから。
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