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翼をさずける(ハレ&ケ)



4月に入り、ようやく春が本格的にやってきました。そんな感じがします。そろそろ入学式シーズンだし、ちょうど桜も咲きました。今日の外苑前の天気は気持ちの良い、晴れ。お昼はタイ料理屋のランチをテイクアウトして、お店近くの公園でのんびりと、ゆうととふたりで食べました。春の風が吹いていました。

こんにちは、鶴田です。

日本には「ハレとケ」と呼ばれる伝統的な世界観があります。これは民俗学者の柳田國男によって定義されたもので、「ハレ」は祝祭や公的な行事のような特別な日のことを指し、「ケ」は繰り返される日常生活を意味します。先日、娘の卒業式を終えた鶴田家は、もうすぐ娘の入学式。ハレの日、続いてます。



日本ではあまり浸透していない「ハレの日」のドレスアップに「ブラックタイ」というものがある。それはオペラパンプスやボウ&カマ―を含むタキシードのフルセットコーディネートを意味し、つまり夜の準礼装を指す。上流階級の社交場やオペラ鑑賞でもない限り、本場ヨーロッパの人々でも今やめったに着用しないであろうこのドレスコード。いわんや日本人をや。

1980~90年代ごろの日本のメンズ雑誌を見ると、英国式の律儀なブラックタイよりもむしろフランス的な着崩し術に対して日本人は憧れていたように思える。2024年ともなるとなおさらのこと。だって、無いもんね、本気のブラックタイで出かけていく場なんて。しかし、タキシードにしてもオペラパンプスにしても、僕らが生まれるよりもはるか昔から存在するクラシックな洋服であることには変わりがない。本気で装って着ていくハレの場は存在しないのかもしれないけれど、その洋服の姿かたちを諦めてしまうのは勿体ない。

斬新なデザイン、新しい素材。そのパワーインフレはいつの時代もあるけれど、そんなとき、ふと立ち返って無性に着てみたくなる。昔から存在するクラシックな洋服を。そして、時代性に合わせてそれらクラシックアイテムの再提案を(義務感ではなく、あくまで楽しく朗らかに)していくことは、新しいデザインが無い無いと嘆いてばかりいる前に洋服屋がなすべきことのひとつだと思う。

” Leonard ” – Black – [Wing collar shirt]
Col.White Size:S/M/L
¥41,800-(tax included)



なんて、冒頭からちょっと堅苦しい?ですかね。でも、端的に言えば、こういうことなんですよ。

「タキシードのお供、ウイングカラーシャツを楽しく着てみよう」

はい、以上。例えば、炊き立ての白いご飯に海苔の佃煮が合うように、ブラックタイには白いウイングカラーシャツがよく似合う。そして、白シャツが持つ「ハレ感」は半端じゃない。ましてや、襟がウイング状、胸部分はプリーテッドブザム、袖口はダブルカフス。この「ハレ感」は半端じゃない。だからこそ、普通のアイテムにさらっと合わせるだけでも抜群に新鮮に思える。



プリミティブなプリントショーツが、こんなにも新鮮に。



ダブルニーのワークパンツが、こんなにも新鮮に。



ヴィンテージのツナギが、こんなにも新鮮に。

ウイングカラー、ダブルカフス、プリーテッドブザム。ほとんどの人は身に付けたことがない仕様だろう。しかし、これはアヴァンギャルドデザインではなく、むしろ逆。古典的で普遍的なシャツの一種でしかない。ちなみにフロントはイカ胸としては珍しい、横向きプリーツだけど、これも昔のフレンチシャツで存在した仕様らしい。



ドレスシャツとしては珍しいスクエア気味の裾カットは、パンツの中にイン&アウトどちらで着てもかまわない。高い位置のバックヨーク、その下は細かなギャザー仕様でエレガントに仕立てられている。このシャツを作ってくれたのはイタリアのシャツメーカーで、要所要所はハンドステッチを用いて縫製されている。つまり、作り方もクラシック。



ボロいカーディガンにダブルカフスを合わせたブラック&ホワイトも抜群。だって、白いご飯に海苔の佃煮、だよ?考える前に、食べてみればわかる。

ちなみにカフリンクスは付属しないため、自前で適当に探してみてほしい。写真のようなゴムタイプならば、かなり安価で見つかるはず。探すのがめんどくさい、という方はカフスを折り返さずに垂らしっぱなしで着るのも、めんどくさがり屋っぽくていいんじゃないでしょうか?キャラクターに合っていれば、それはそれという感じ。



ハレの服をケのように着る。特別な日に身に付けるアイテムだからこそ、特別なことをしなくてもいい瞬間がある。



なんなら、このシャツを起点としてブラックスーツやオペラパンプスといったフォーマルウェアにも興味が湧いてくるのだとしたら、それはとても幸運なこと。取り立てて理由もないのに一生遠ざけてしまいがちな特定の洋服への先入観を取り払い、ケの日をハレに変えられるかもしれないチャンス。

日常生活が「ケ」に支配されることで生じる精神的な疲れや枯れを、「気枯れる」と表現する。そして、「ハレ」を通してこの状態から脱し、「清らかで健康な状態」へ回復するという考え方も存在するらしい。また、現代では単純に天気が良いことを指して「晴れ」というが、遡って江戸時代には長雨が続いた後に天気が回復し、晴れ間がさしたような節目に当たる日についてのみ「晴れ=ハレ」とする記述も見つかるという。

退屈で冴えない日常を受け身で過ごす前に、先回りしてハレてみるための洋服を、無いものねだりの未来ではなく古典の中に見出すということ。胸のプリーツはドラマチックな日常を、カフリンクスは着飾る事の喜びを、ウイングカラーは退屈を飛び越えるための翼を、僕らにさずけてくれるかもしれない。ハレ&ケ、最高。ポジティブにいきましょう。







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