青い春
僕の名前は、ぜんのこうし。
富山出身の26歳。
大学進学を機に18歳から名古屋で生活をはじめ、卒業後は少しだけ社会人としての経験を積み、MANHOLEで働くために上京してきたのは昨年の夏。灼熱の季節が本格的にやってくる少し前で、あれは7月のことだった。
学生時代と社会人生活を含めて、僕は7年間を名古屋の地で過ごしたことになる。
そして僕にとって、この四月は東京で迎える初めての春ということになる。
お客としてMANHOLEに足を運んでいたころとは、東京・青山の街並みも少しだけ違って見えるような気がする。春の光のせいだろうか?
大学時代の友人や前職時代の共通の知人を介して、東京での交友関係も少しずつ広がってきたと思う。自分なりに東京の生活を楽しめているような気がする。
初めてMANHOLEに出勤したときのことは、昨日のことのように覚えている。とても緊張していたから。河上さんも中台さんも山崎くんも鶴田さんも、自分より年上で、しかも洋服の販売という仕事を長く続けてきた、いわゆる「先輩」だからだ。
この9か月の間に、随分と仕事を教えてもらったし、それぞれのキャラクターもなんとなく分かってきたし、同じお店で同じ時間を過ごすうちに僕のことも少しは知ってもらえたんじゃないかと思っている。
遊びに来てくれるお客さんは、老若男女問わず実にさまざまで、MANHOLEに並ぶアイテムに負けないくらいそれぞれのキャラクターが立った着こなしから僕はいつも刺激をもらっている。挑戦的な姿勢でファッションを楽しむ姿は、スタッフの僕から見ても本当に清々しいものだ。
僕と同世代のお客さんたちも頑張っている。社会人になって仕事を頑張っている人、資格を取るための学業に打ち込む人、みんなそれぞれの道で試行錯誤し、模索し、行動している。
春はそんな季節。
アオハルに浸ってみたくなる季節。
今シーズン、店頭でも人気だったPERIOD FEATURESのステンカラーコート、素材違いの大トリを飾るのはハンドブロックプリントで鮮やかな色彩を纏った一着。ところどころ、節のように見えるストライプ柄の切れ目は、つまり版の切れ目。
このサイズの版で手押しされたプリントが、綺麗な色をいびつな線で繋いでいる。
愛嬌のあるボタン。まるでシャツのように軽やかな着用感。ヨーロッパから押し付けられたクラシックスタイルとは少しだけ違った文脈を感じるちょっと奇妙な佇まいは、インドの土壌が育んだ独自性ゆえだろうか。
僕よりも年下だけど、MANHOLEでは先輩にあたるゆうとはもうすぐ23歳になる。三月に大学を卒業し、彼もまた春風に吹かれているし、僕がMANHOLEに通い始めた頃よりも少しだけ大人の顔つきになったような気がする。
僕も負けずに暮らしていく。自分が選んだこの町、東京で。青い春。節目の季節。四季がなくなったと言われる近年の日本だけど、やっぱり四月は特別な季節。青竹の節が成長のあかしであるように、見上げた空の切れ間から次の季節がやってくるように。
PERIOD FEATURESのコートは、空へ向かってまっすぐ伸びるストライプの合間合間にいびつな区切りが見えるという点で抜群に美しい。この季節にしか抱かない感情を胸に、しかし、青い春はあっという間に通り過ぎていく。大きなコートにたっぷりと、たくさんの風を孕んで町へ飛び出してみたくなる季節。
みたいな。
端から彼らを見ていても、そんな架空の青春ノベルズを思わず書いてみたくなるような季節。そして、コート。
逃げ足の早いコートは、あくまでも感覚的に捕まえたい。あっという間に。
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鶴田 啓
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